【2021年アニメ】86-エイティシックス-【感想】

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DATA

  • タイトル:86-エイティシックス-
  • 放送クール:2021年春、秋
  • 話数:23話+総集編2話
  • 制作:A-1 Pictures
  • 監督:石井俊匡
  • 脚本:大野敏哉、砂山蔵澄、永井千晶
8 out of 10 stars (8 / 10)

ギアーデ帝国が開発した
完全自律無人戦闘機械〈レギオン》の侵攻に対応すべく
その隣国であるサンマグノリア共和国が開発した無人戦闘機械<ジャガーノート>。
だが、無人機とは名ばかりであり、そこには“人”として認められていない者たち
エイティシックス が搭乗し、道具のように扱われていたのである。
エイティシックスで編成された部隊〈スピアヘッド〉の隊長である少年・シンは
ただ死を待つような絶望的な戦場の中で、ある目的のために戦いを続けていた。
そこに新たな指揮管制官〈ハンドラー〉として、 共和国軍人のエリート・レーナが着任する。 彼女はエイティシックスたちの犠牲の元に成り立つ共和国の体制を嫌悪しており、
“人型の豚”として蔑まれていた彼らに人間として接しようとしていた。

公式サイトより抜粋

概要

本作は安里アサト氏の同名タイトルライトノベルを原作とするミリタリーアニメです。
原作ラノベは2016年の第23回電撃小説大賞で大賞を受賞し、KADOKAWAより電撃文庫にて刊行されており、アニメ完結時点でも刊行中です。
アニメは2021年春に1クール目、秋に2クール目と分割2クールで放送されましたが、2クール目は放送延期が何度かあり22、23話は2022年3月に放送され、ひとまず終了となりました。

人と扱われてない少年少女たち

本作は今は亡き『ギアーデ帝国』の無人兵器『レギオン』の侵攻を受けている『サンマグノリア共和国』から始まります。共和国は無人兵器である『ジャガーノート』を戦線に投入し、レギオンの侵攻を犠牲者なしで防いでいるとしています。
しかし実態は共和国の多数派民族では無い少数派民族たちを共和国85区の住人で無い『86(エイティーシックス)』と呼んで人権を剥奪し、市民権を餌にジャガーノートに乗せては人では無いので無人兵器であるとのたまっている様です。しかもこの事は共和国の一般国民から指示を受けているらしいという凄まじい話でもあります。
そうして86の成人たちはほぼ死に絶え、残された未成年の少年少女たちも当然の様にジャガーノートに乗せられ前線に送られているという状況となっています。
上記の様な非常に重苦しい雰囲気な世界観で物語は始まります。
ちなみにレギオン、ジャガーノートともに基本的にはいわゆる多脚戦車となっていて、国によって名称は異なりますが本作の世界における主力兵器は多脚戦車となっている様です。
本作のヒロイン、「ヴラディレーナ・ミリーゼ(レーナ)」少佐は共和国軍人ですが、差別政策には異を唱えていて、86に対しては同情的です。それには同じ軍人だった父親が差別反対だった事と、その父親を失った際、86に助けられたという事がある為の様です。この件に関しては父親が幼い娘を伴って前線に赴いている事から、レーナの父親は前線を知らず危機意識が足りなかったと言われても仕方無いと思われます。

精鋭部隊の指揮官となるヒロイン

そんなレーナ含めた共和国軍人はジャガーノート部隊の指揮官である『ハンドラー』を務めています。指揮官といっても86への仕打ちを考えると前線で指揮できるはずも無く、安全な後方から通信で指揮するという物になっています。
そして物語開始間もなく、レーナは最精鋭部隊『スピアヘッド』のハンドラーに任命されます。各方面の部隊で戦い抜いた精鋭を集めた部隊ですが、歴代のハンドラーが自殺や発狂したりで何やらいわくつきという感もあります。
そしてそのスピアヘッドの部隊長が本作の主人公である「シンエイ・ノウゼン(シン)」でした。
そうしてスピアヘッドのハンドラーに着任したレーナは隊員にフレンドリーに接し、頻繁に交信します。
しかし隊員の中には後方にいて態度だけフレンドリーなレーナに対し偽善的という風に見えている者も少なくありません。
その為序盤は激しくも常に劣勢な戦闘、数で圧倒的に勝るレギオンにすり潰されていく隊員たち、隊員たちとレーナのギスギスした関係なかなか辛い展開が続く事になります。

シンという主人公

本作の主人公であるシンは表情の変化や口数が少ないと、ラノベなどで良くいるクール系のキャラクターというのが最初の印象です。
戦闘においては圧倒的な機動力で接近してからの白兵攻撃で敵を斬り伏せるという戦法を得意としていて、精鋭揃いのスピアヘッド戦隊でもその実力は明らかに突出しています。
しかし彼はかつてレーナを助けた人物である亡き兄との関係や亡者の声が聞こえるという闇を抱えていて、彼の回想などとなると非常に重苦しいものとなります。
ただこの亡者の声が聞こえるという異能はレギオンの位置や数を把握するのに役立っているという側面もある様ですが、並の人間では精神的に持たないのではと思われます。実際過去のハンドラー達は五感、その中でも聴覚を共有する仕組みである共和国軍の通信システムで戦闘中のシンと接続した結果、彼と同じ様に亡者の声を聞かされて精神をやられてしまっている模様です。
また致命傷を負った仲間を介錯する様な事もしていて、86の仲間からは死神とも呼ばれていますが、その呼び方には好意的な響きが感じられます。
そんなシンですが、部隊長と指揮官という立場をもって頻繁にコミュニケーションとって来るレーナとの交流を通して、どの様に変わっていくかという点も見所の一つと言えるかも知れません。

レギオンの発達と最後の任務

レーナは隊員とのギスギスした関係を克服していくのと並行してある事実を知っていきます。もともとレギオンはそのままの状態だと一定時間が経過する事で活動停止する設定となっていて、共和国の投げやりな防衛戦略もそれまで耐えるだけで良いという希望的観測によって成り立っていました。
しかし前線にいる86たちはレギオンはある方法で活動停止設定を克服しつつある事を把握していました。レーナはその事をシンの異能に触れた事を切っ掛けに知ります。
こういった事に始まり、視聴者はレギオンが単なる自律兵器を越えて独自に発達させていく様子を目の当たりにして行きます。
この事実を前線から報告がなされていたか定かでありません。ただ軍上層部は86の言うことに耳を貸さない様に思われますし、86の方でも共和国が滅ぼうが知ったことではないと思われても仕方無い事を考えると最初から報告はされなかったのでは無いかと思われます。
その後レギオンの猛攻を受けて隊員はその人数を大きく減らします。レーナはその傍らで前線へ人員と弾薬などの補充を何度となく具申します。前線、視聴者ともに軍上層部がそれを受け入れるという期待はしていませんが、レーナが前線の隊員たちをサポートしようとしているという事は伝わったと思われます。
そういった事もあり、レーナを信頼したシンはレギオンの大規模攻勢が遠くない内に行われると伝えます。この頃には他の隊員もレーナを指揮官として認めている様に見受けられます。
しかしその後シンも含めて僅か5名となったスピアヘッド戦隊に最後の任務である特別偵察任務が下令されます。その内容はレギオン支配領域に侵入し進めるだけ進めという物で、殺す気満々という他無く偵察という言葉の意味についても考えさせられる所であります。報告など出来るはずも無いのに偵察とは如何にと言った所でしょうか。
そしてその途中現れる『羊飼い』と呼ばれる指揮官型レギオン。それはシンに取って因縁の対決でした。

新たな戦場

生死不明な状況で1クール目を終えた後、2クール目は『ギアーデ連邦』に保護された後から始まります。連邦はその名が示す通り、諸悪の根源たる帝国を滅ぼして成立した国家です。
そして当然ながら帝国を滅ぼした事からレギオンと絶賛戦争中という状況です。連邦の暫定大統領「エルンスト・ツィマーマン」がシンたちの保護者となり、その養女である「フレデリカ・ローゼンフォルト」とも交流して行きます。エルンストはシンたちに戦う必要は無いと言い、普通の生活を送るよう勧めます。しかしそうは言ってもレギオンの脅威が減っている訳でも無く、何年もの間前線で過ごしたシンたちは結局前線に戻る事を選び、士官学校を経て前線へ戻ります。
そういった事と並行して共和国がレギオンの大規模攻勢を受けている様子が描写されます。シンたちが消息不明となった後86たちと協力して迎撃準備をしていたレーナが、レギオンの攻撃により首都内まで攻め込まれた状況で指揮している様子が描かれています。
またシンたちには共和国が壊滅した事は知らされますが、レーナの安否についての描写はありません。
そしてシンたちは連邦軍所属として前線に戻ってきますが、連邦軍は共和国軍と比べて士気物資ともに充分あるため、1クール目ほど絶望的な戦いでは無くバックアップを受けて八面六臂の活躍で戦果を挙げていく様子を見ていく事が出来ます。ジャガーノートに代わる搭乗機『レギンレイヴ』はジャガーノートを参考に連邦で製造された物で、性能も上がっています。そんなレギンレイヴにシンたちはそれぞれが特化した兵装を施され専用機といった仕上がりになっています。
しかし列車砲サイズのレールガンというとんでもない武器を搭載した新たな強敵『モルフォ』が現れます。その圧倒的な威力と射程から周辺国が共同作戦を行い、シンたちが直接攻撃へ向かいます。
果たしてシンたちは無事作戦を遂行出来るのでしょうか、そしてレーナの安否はといった雰囲気でラストへ向けて進んで行きます。

まとめ

敵味方合わせて多脚戦車がひしめく戦場を描いた本作。
圧倒的な差別政策がなされている共和国を舞台として全体的に重苦しい雰囲気の1クール目と共和国を脱して連邦を舞台とした2クール目では大分雰囲気が変わる印象ですが、個人的には2クール目の方がより楽しんで視聴出来ました。特に戦闘の作画は良い意味で変態的とすら言え、ラスト2話が延期になってしまったのもある意味仕方無かったのかも知れません。
また人類とレギオンの戦争は継続中で俺たちの戦いはこれからだといったラストではありますが2クール分の締めくくりに相応しいラストは非常に感慨深い物がありました。