【2022年秋アニメ】アキバ冥途戦争【感想】

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DATA

  • タイトル:アキバ冥途戦争
  • 放送クール:2022年秋
  • 話数:12話
  • 制作:P.A.WORKS
  • 監督:増井壮一
  • 脚本:比企能博、小森さじ、日高勝郎、米内山陽子

1999年春
かわいいメイドに憧れて、ひとりの少女が秋葉原にやってくる。
世紀末のアキバは、多量多様なメイドさんでいっぱいいっぱい。
メイドカフェ「とんとことん」、通称「ブタ小屋」は、
今日もブヒブヒ営業中!
一緒に入店した新人メイドは破天荒さんで、
ドッタンバッタン大慌て
推しメイドや調教師、秋葉外生命体も現れて、
赤バットはフルスイング!
これは、全てのご主人さまとお嬢さまに贈る。 渾身のメイドお仕事奮闘記。
「みなさまのお帰りをお待ちしてますブ~~」

公式サイトより抜粋
8 out of 10 stars (8 / 10)

概要

本作は現実と異なる秋葉原のメイドカフェを舞台としたオリジナルアニメです。
CygamesとP.A.WORKSによって制作されていて、P.A.WORKSのお仕事シリーズと見せかけて『萌えと暴力について』のキャッチコピーのもと、メイドたちの抗争を描いています。

秋葉原のメイドになった少女が見たもの

本作は1999年の秋葉原(以下アキバ)を舞台としています。アキバのメイドに憧れて上京してきたという少女「和平 なごみ」は古びた雑居ビル内にある『メイド喫茶 とんとことん』に住み込みで働く事になります。
オンオフの差が大きい店のエース「ゆめち」、ギャルメイクの「しぃぽん」、なごみと同時に入店した35歳新人の「万年 嵐子」の他店長とパンダの「御徒町」らと一緒に働く事になったなごみですが、初日という事もあって度々失敗している様子が映されます。
そんな中紙筒差したリュックを背負った姿というかつてのテンプレ的オタクな出で立ちの男性が入店してきますが、彼はどうやらグループ本部からやって来た取り立て屋らしいという事が分かります。
その取り立て屋に促された店長はなごみをライバル系列店へのお使いに向かわせますが、それに何か察した様子の嵐子が同行します。
やがて到着したライバル系列店の店内ではツインテールを詰めるという訳が分からないながらも物々しい様子の儀式が行われていました。
そんな様子に気圧されながらも手紙をライバル店店長に手渡すもそれは宣戦布告の書面でなごみは詰問されながら平手打ちされる事態となります。
そんな中嵐子が相手店長を射殺し、なごみの手を引いて帰ろうとするも店長を射殺されたメイドたちが追ってくるも嵐子はこれを全員返り討ちにするのでした。

メイドの皮を被った極道アニメ

本作の特徴を端的に言えば見出しの通りになります。
そもそも1話冒頭で1985年に『侍女茶館』店長の「美千代」が黒塗りの高級車から降りた所を鉄砲玉のメイドに射殺されるという場面から始まってます。
さらに1話ラスト付近ではとんとことん店内でゆめちがライブパフォーマンスしている楽曲に合わせて、嵐子が敵対店のメイドを次々と景気良く射殺していく様子が描かれてため、この1話で好みがハッキリ分かれると言えます。インパクトとしても充分ですし、1話でふるいにかけるのはある意味親切とも言えます。
なごみたちが所属するとんとことんはアキバ最大の『ケダモノランド』グループに属してますが、店長の経営手腕が悪いのかおひねりちゃんこと上納金を滞納している事もあり、グループ内では底辺扱いされています。
また上納金に困った挙げ句、違法カジノに地下闘技場と序盤はそういった金銭絡みのトラブルに巻き込まれては相手側を壊滅させたりします。そのためとんとことんを武闘派と見る向きがグループ内でも出てきており、実際に3話にはロシアの元軍人ながら嵐子に敗れた「ゾーヤ」が加入していますし、5話では嵐子となごみを抜いた3人で店舗1つを壊滅させています。

抗争と覚悟

本作はメイド界隈の知識無しに足を踏み入れ、視聴者に目線が近い狂言回しな役回りのなごみと、服役していてメイド界隈でもある程度名前が知られている嵐子が実質的主人公といった風に進行します。
そんな中、なごみはいつもお腹場所でチラシ配りをしていたライバル系列店に所属するメイド「ねるら」と親しくなって行きます。
穏やかな雰囲気で人当たりの良さそうな彼女ですが、メイドに暴力は付き物と言ったりする辺りメイド界隈に毒されている感があります。
しかし実際に暴力に走る描写も無く、なごみに対してアドバイスをした事もあった事からか、なごみが属するとんとことんのケダモノランドグループとねるらが属する『メイドリアン』グループの間に抗争の噂が出てくると、ねるらと戦いたくないなごみは姉妹の契りを交わします。その儀式も視聴者が想像していた斜め上を行く謎儀式でしたが。
しかしその直後、出所間もなくクーデター的にメイドリアングループの実権を握っていた武闘派幹部「愛美・スーパーノヴァ・山岸」が1話で系列店を潰された報復としてとんとことんを手始めの標的に定めます。豚を討つべしという指令がグループ内で出回った事でなごみを守るために行動したねるらは結果的に愛美の手にかけられてしまいます。
それにショックを受けたなごみは一時とんとことんを離脱しますが、嵐子やねるらのファンとの対話を経て不殺を以ってメイドを続ける覚悟を決めます。
そうして主人公らしく覚醒したなごみの活躍もあってとんとことんはメイドリアンからの襲撃を凌ぎ切り、抗争も思わぬ形で終止符が打たれます。
しかしケダモノランドグループ会長「凪」もとんとことんに思う所があった様で様々な要因から内部抗争に至る事になります。
その中でなごみは大きな犠牲を払う事になります。因果応報が渦巻くこの世界でなごみは不殺を貫けるかどうかが終盤最大の見どころと言えます。

世界観、雰囲気など

本作はメイド服を身にまとった女性キャラがドスの聞いた声で怒号を上げたり、ドスやチャカを振りかざすという世界観が特徴です。
彼女たちは場合によっては客であるご主人に危害を加える事もあったり、幹部が身代わり出頭させる際に薬盛っていたりする様な描写があったりと物騒な存在です。その成り立ちはアキバのメイドは最初からそういうものだったという荒唐無稽さすら感じるのが本作の世界観に合っている様に感じられます。
そんな彼女たちのメイド服ですが、ケダモノランドグループは豚羊狐犬獅子など動物をモチーフにしているのと、メイドリアングループが地球外生命体をモチーフにしたりとこだわりが感じられます。
ただやはりとんとことんのものは所々に豚要素に入りながらも色合いなどがオーソドックスなメイド服といった印象を受け、流石は主人公勢力といった風に感じられます。

先を読ませない展開

色々常識を逸脱している本作ですが、とにかく先の展開を読ませない事を優先しているのかと思うほど、斜め上を行く展開がなっています。
とんとことんから出ていったなごみの行き先だったり、メイドリアンとの抗争が終わって、とんとことんとケダモノランドグループ本部の間にきな臭い雰囲気が出てきたかと思えば野球回を押し込んで来るとは誰も思わないでしょう。
ただ当然の様にラフプレーが飛び交う中、なごみが非暴力を訴え続けるのは成長を感じますし、嵐子と凪の関係性など要所は押さえていると感じました。もっとも試合の結末は狂気すら感じるものではありましたが。
この様に一見斜め上の展開でもストーリーを進める上で押さえるべき所は押さえていると感じました。

まとめ

本作は紛れもない怪作という他ありません。
殺伐としたメイド界隈に足を踏み入れたなごみが、嵐子と一緒に過ごすうち互いに影響を与えていき、アキバメイド界隈の変革を目指す事になります。
なごみはいくつもの悲劇に見舞われますが、ラスト付近で彼女が仕掛けるメイド戦争は視聴者の胸を打ち、ラストは描写不足に感じられなくもありませんが落ち着きべき結末に落ち着いたと言えます。