【漫画】All You Need Is Kill【感想】

7 out of 10 stars (7 / 10)

人類は今、かつてない戦争をしている。敵は「ギタイ」と呼ばれる化物。ジャパンの南方、コトイウシ島で繰り返される戦闘。初年兵であるキリヤ・ケイジと戦場の牝犬と呼ばれるリタ・ヴラタスキは、まだ見ぬ明日を求める戦いに身を投じていく――。

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DATA

  • タイトル:All You Need Is Kill
  • 作者:竹内良輔/小畑健
  • 刊行年:2014年
  • 巻数:全2巻
  • 出版社:集英社
  • レーベル:ジャンプコミック

近未来を舞台にしたSF

本作は桜坂洋氏による同名のライトノベルを「ヒカルの碁」や「DEATH NOTE」で知られる小畑健氏がコミカライズした物です。 2014年にはハリウッド映画化している事でも知られています。

本作の世界観ですが、近未来で人類と「ギタイ」と呼ばれる謎の敵による戦闘が行われているというものです。 原作ではギタイに関して詳しく書かれている様ですが、漫画版では媒体の違いからかストーリー上不要な設定は省かれて謎の敵として描かれています。 ギタイの日本本州上陸が迫り、人類側の統合防疫軍はそれを阻むべく房総半島の「フラワーライン前線基地」に部隊を展開し迎え撃つ体制を整えていました。 主人公『キリヤ・ケイジ』はそこに配属された新兵です。 防疫軍の兵士はパワードスーツを着て戦いますが、常に劣勢を強いられている様子が描かれ、主人公も初出撃で戦死したはずでした。

ループ物

しかし主人公は出撃前日朝の起床に戻ってしまいます。 最初は夢かと思っていましたが、基地で同じ経過を辿ったり、やはり戦死したり、基地から脱走した所をギタイに待ち伏せされて殺されたりした主人公は自分がループしている事を知ります。 そしてループを利用して経験を積む事でギタイに対抗しようとし、絶望的な戦闘でトライアンドエラーを繰り返します。 そうやって戦闘を繰り返した主人公は新兵にも関わらず、ベテランのような目付きになっていきます。 たかだか一日半程度のループを繰り返すという苦行の中で必死に生き残ろうとする決意が見て取れます。

ヒロイン

本作のヒロイン的キャラとして「戦場の牝犬」と呼ばれている女性兵士『リタ・ヴラタスキ』がいます。 彼女は小柄な少女ですが、精鋭部隊でも圧倒的な戦闘能力を持っていて人類でも英雄視されています。

その過去については後半にクローズアップされていますが、元々田舎に住む普通の少女でしたが、故郷が数体のギタイによって壊滅させられ両親を失った事が描かれています。

彼女もループを経験していて、その時の経験が彼女を英雄的な兵士にさせた物と思われます。 例えば彼女は他の兵士が用いているパイルドライバーと呼ばれる近接武器では無く巨大な戦斧を扱いますが、杭に弾数制限があるパイルドライバーは倒せる数に限度がある為、弾数の無い斧に変えた様です。斧なら刃こぼれしても重量などで叩き斬れると言う事もあったでしょう。

主人公も後に同じ結論に至ってる辺り、それがギタイとの戦闘でベストな選択なのでしょう。 ただ一般的な兵士では扱いきれない様ですが。

ループvsループ

本作世界でのループは本来ギタイが使う能力である事が終盤に明かされます。 人類が常に劣勢なのもギタイが質量ともに勝っているのみならず、人類側が戦術的優勢に進めると戻って対策を立てる事で、それを覆していた様です。 しかもこれを組織的に行える為、まさにチートとでもいうしかありません。 敵側にもループする者がいると知れば、奇襲を仕掛けて優先的に狙ったりする事もします。

そして主人公とヒロインは協力してギタイのループを破り、かつフラワーライン前線基地の防衛を成功に導こうとしますが、最後の衝撃的な展開は何とも言えない気持ちになってしまいます。

まとめ

本作はループ物ですが、人類が敵対する存在と戦うSF物としても楽しめます。 ループでもしないと生き残るのが困難な絶望的な戦闘も必見と言えます。 またループするのが主人公のみでは無いと言うのも他のループとは一線を画していると言えます。 原作が刊行されたのは2004年の事で、ループ物が今ほど一般的では無かった時期に、こういった優れた変化球的な作品を生み出したのは驚愕というしかありません。