【2023年冬アニメ】アルスの巨獣【感想】

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DATA

  • タイトル:アルスの巨獣
  • 放送クール:2023年冬
  • 話数:12話
  • 制作:旭プロダクション
  • 監督:オグロアキラ
  • 脚本:海法紀光
5 out of 10 stars (5 / 10)

概要

本作はDMM.comと旭プロダクション企画によって制作されたオリジナルアニメです。
同時期に光文社のwebコミックサービス、COMIC熱帯にてコミカライズ版が連載されています。

研究所から脱走した少女

本作の舞台となるのは様々な種族が暮らし、『巨獣』と呼ばれる生物が跋扈する『アルス』と呼ばれる地です。
なおアルスが世界全体を指すのか、大陸など特定地域を指すのか定かではありません。
そしてアルスと並んでタイトルに表記されている巨獣ですが、通常は巨大な野生生物といった風で狩猟の対象だったりする様ですが、稀に『赤目』と呼ばれる存在に変化して凶暴になり、姿形も変化したりします。
そんなアルスにある『帝国』の研究所から1人の少女が脱走します。実験体22番と呼ばれていた彼女は研究所から海で隔てられたある町に泳ぎ着きます。町ではある女性から衣食の世話になったり、指輪を入手したりしていましたが、やがて帝国の捜索隊に見つかります。
そんな中彼女は何やら暴走し、溢れ出る様な瘴気で兵士を消滅させてしまいます。その時現れたのが「死に損ないのジイロ」と名乗る中年と思われる戦士で、『カンナギ』である少女の力を制御出来る『ナギモリ』と呼ばれる存在だそうです。少女の力を操り町に現れていた赤目の巨獣を撃破したジイロですが、脱走者を抱えてしまった事から町を離れる事になります。
こうして「二十と二番のクウミ」と名乗る様に脱走者の少女と彼女に指輪を授けた猫の被り物をしたカブリ族の行商人「ミャア」の3人で旅が始まるというのが1話の流れになっていますが、この様に独特の設定や用語が多いという印象を受けます。

世界を旅するロードムービー的展開

そうして成り行きで旅を始めたジイロたちは、ジイロが所有しているらしいオーパーツめいた飛行船で色々な種族の集落を移動していきます。
それぞれの集落での流れはおおよそ決まっていて、まず集落の入口でミャアが集落側のカブリ族に交渉して入村、集落内でイベントをこなして最後に現れる赤目の巨獣を撃破して一件落着といった風になっています。
ちなみに飛行船は当初、ホバー飛行といった程度の高さしか浮きませんが、終盤になると普通に飛べる様になります。
また話の流れで医療系の能力を持つ女性「七草のロマーナ」やジイロの弟子を自称する少年「早とちりのメラン」が仲間になります。
そういった風に盛り上がり所があまり感じられない旅が描かれる一方で、研究所からの追手と見られる実験体と戦士のペアがジイロ一行を追跡する様子やアルスの情勢を案じている帝国の女性将軍「ツルギ」の視点などが描かれますが、それらが交わるのは終盤となります。
本作のネックと言えるのは面白くなり始めるのが終盤と言え、それまでがあまりにも冗長過ぎると言えます。個人的にはメランが仲間キャラである必要性を感じなかったため、メラン関連のエピソードを省略しても良かったくらいだと感じています。

作画、雰囲気など

作画などは可もなく不可もなくといった印象で、目に見えて不安定だったりする様な場面は見受けられませんでしたが、目を瞠るほどの作画の場面というのも見受けられませんでした。
またキャラデザについては今風とは違った様に感じられ、悪く言えば古臭いという印象もあります。ただネット上の意見としてはジブリ風というものもあり、これは腑に落ちる物がありました。
そんな中、色々巻き込まれる帝国のある兵士と隊長はなかなかいいキャラしていると感じました。

世界観

世界観などについて設定は作り込まれているという印象を受けます。
ジイロ一行が訪れる集落の種族について様々に風習が登場し、独特な世界観という雰囲気を醸し出していますし、巨獣も現実の動物をベースにしつつオリジナリティあるデザインだったりします。
その他特徴的な点として、本作のキャラクターはモブに至るまで二つ名を持っている様です。特に印象的なのは1話でクウミの世話をした花屋の中年女性が「男勝りのクウミ」と名乗り、クウミがそこから名前を取ったという流れがあるにせよ、印象的であることには違いありません。
またメランの早とちりという二つ名については最早悪口では無いかという気がしますが、その意味についても作中で述べられています。
そういった風に世界観は作り込まれている印象を受けるのですが、残念ながらそれらが面白さに結びついておらず、むしろ設定を出していこうとして旅のパートが冗長になってしまったのではないかという感すらあります。

アルスの危機

終盤、ジイロとクウミは一行を追跡してきた実験体と戦士のペアを直接対決し、それをきっかけにして、ようやく話が大きく動きます。その後イザコザを経て研究所の中心的人物「メザミ」との対決となり、それを終えた所で一行の前に現れたツルギからアルスとクウミに危機が迫っている事を告げられます。
やがて一行がクウミを救おうとする中、アルスの危機が訪れます。
そんな最終回に至って、何故か次々と新事実や伏線らしき物が放り込まれ、視聴者を困惑させます。
果たしてクウミとジイロはアルスの危機を救えるでしょうかと言いたい所ですが、本当にこれからという場面で終わってしまうのが本作最大の問題点と言えます。

まとめ

本作は面白くなってきたかも知れないという所でぶつ切りで終わってしまったという印象を受けます。
果たして2期や劇場版といった構想があるのか定かではありませんが、1クールのアニメ作品しては明らかに完結していません。また原作ありならともかくオリジナルアニメで打ち切りENDというのは斬新ではありますが、面白いとは言い難いのではないでしょうか。もし最初から1クールで構想されていたのだとしたら明らかにペース配分のミスですが、終盤が駆け足気味なのを考えると案外間違って無いのではという気もします。
もし続編ありなら見るかも知れませんし、見直すかも知れませんが、現状では1クールアニメとしては評価し難いというしかありません。