目次
DATA
- タイトル:彼方のアストラ
- 放送クール:2019年夏
- 話数:全12話
- 制作:Lerche
- 監督:安藤正臣
- 脚本:海法紀光
総評: (7.5 / 10)
宇宙への往来が当たり前になった近未来で、
公式サイトより
9名の少年少女たちが惑星キャンプへと旅立つ。
宇宙旅行に胸を躍らせながら出発した彼らを待ち受ける、
予想外の事態とは……!?
5000光年先から帰還する為の冒険劇
本作は1話冒頭、主人公やヒロインが高校内で属する「B5班」が惑星キャンプに出発するシーンまでが、語り手であるヒロインの視線で描かれます。
そして高校の課外授業で他の惑星でキャンプしたり、街や施設の様子から本作の舞台は文明が高度に発展した世界である事が分かります。
惑星キャンプへの出立前にヒロインが主人公と宇宙港で出会うシーンがあり、そこで主人公は熱血漢、ヒロインはやや天然な性格という事が分かります。
その後顔を合わせるB5班の面々はいかにも癖の強そうなメンバーと印象です。
そんなメンバーですが、目的地に到着するや否や宇宙空間に放り出され、しかも放り出された先が惑星キャンプ地周辺宙域ではなく5000光年離れた宇宙空間であると判明します。ちなみに惑星キャンプ地は9光年です。
遠く離れた宇宙空間で無人の宇宙船を発見したB5班、通信機器は破損している物の航行は可能と言う事で、アトラス号と名付けた宇宙船によるB5班の帰還劇が始まる所で1話終了となっています。
この1話は1時間の枠が取られただけあって、怒涛の展開と言った所です。
これが通常の30分枠だったら出発前に一度切るか、圧縮しないと行けない所でしたのでここまで視聴者を引き込め無かったかも知れません。
SF冒険物として
帰還するにあたり、B5班は水と食料が補給可能な惑星を選び出して、帰還ルートを決めています。
それらの惑星は水や空気があり、食料となる生物は生息していますが、人類が進出していない惑星です。
ドラゴンの様な生物がいる惑星、キノコが生態系の頂点にいる惑、地表のほとんどが水に覆われた惑星など。
様々な環境や生態系を持った惑星で食料を手に入れる為に冒険して行きます。
そんな中で危機を乗り越えて、仲間同士の信頼関係を築いて行くというのは、冒険物の王道といった雰囲気があります。
またB5班の面々は、高い運動能力を持った主人公、瞬間記憶能力を持ったヒロインの他、高い知能と技術を持っている、医療技術を持っている、射撃能力が高い、歌が上手いなどどいった特技を持っていて、それらを生かして危機を乗り越えて行きます。
畳み掛ける終盤
本作は序盤からB5班の抹殺を企んで、宇宙空間に放り出した刺客の存在が仄めかされています。
この刺客は状況からしてB5班内にいる事が明らかなため、仲間同士の信頼関係を深めつつも、刺客に狙われているかも知れないという緊張感も孕んでいます。
刺客の正体を突き止めようにも、取っ掛かりが無い主人公たちの前に、新たな乗組員が現れます。
彼女はある惑星でコールドスリープしていた宇宙飛行士で、本作に於いて鍵を握る人物と言えます。
後から搭乗する事になった彼女は、B5班メンバーに対する先入観が無いため、それ故の何気ない一言がB5班が抹殺される動機を突き止める契機となります。
彼女とB5班には様々な齟齬があり、最終的には作品の世界観をも揺るがす事になります。
終盤には様々な謎が一気に畳み掛けるように解明されていきます。
SFミステリ物として
本作はSFかミステリかという議論もあったように記憶していますが、『SFミステリ』という呼ばれるジャンルが存在しています。
本作などはSF的設定、ストーリーをベースにしつつもストーリー中の謎を解明するのが主体になっている雰囲気があります。
その解明される謎としては
・「誰が」「どのようにして」B5班を宇宙空間に放り出したのか。
・刺客の黒幕とその動機。
・作品内世界について
主な謎としてはこの程度かと思われますが、ヒロインに関する事などもあったりします。
まとめ
本作は全12話ながら1話と12話がそれぞれ1時間枠が取られ、通常より1時間長く放映されています。
しかしそれでもなお、ストーリーに無駄と感じられる部分が無く非常に濃厚なストーリーであったと思えます。
1話冒頭の危機的状況から前途多難な旅立ち、様々な冒険を経て12話で帰還を果たした後はその後の後日談も語られていきます。
最後には主人公たちの新たな旅立ちが語られて終わるのも、物語の余韻を感じる点で良かったと思えます。