【漫画】亜峠呼世晴短編集【感想】

7.5 out of 10 stars (7.5 / 10)
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DATA

  • タイトル:亜峠呼世晴短編集
  • 作者:亜峠呼世晴
  • 刊行年:2019年
  • 巻数:全1巻
  • 出版社:集英社
  • レーベル:ジャンプコミックス

週刊少年ジャンプの俊英・吾峠呼世晴の軌跡―― アニメ化も果たした連載デビュー作『鬼滅の刃』の前身となる『過狩り狩り』、本書のカバーを飾る異色作『文殊史郎兄弟』、掲載当時も話題を呼んだ『肋骨さん』『蠅庭のジグザグ』の読み切り四作品を収録。鬼才・吾峠呼世晴の神髄、ここにあり!!

Amazonより抜粋

概要

2016年から2020年に掛けて週刊少年ジャンプで連載されて惜しまれつつも完結し、2019年春夏にTVアニメ第1期、2020年秋には劇場アニメが公開されて日本歴代興行収入1位を記録するなど大ヒットした『鬼滅の刃』。
本短編集はその大ヒット作を生み出した亜峠呼世晴氏が2013年に第70回JUMPトレジャー新人漫画賞佳作を受賞し、『鬼滅の刃』の原型となった『過狩り狩り』。それに加え連載開始前の2014年から2015年に掛けて週刊少年ジャンプで読み切り掲載した3作を掲載しています。

世界観

本短編集ですが、冒頭の『過狩り狩り』が明治から大正時代で、多分『鬼滅の刃』と同じ大正と思われます。やはり『鬼滅』と同じく鬼などといった人喰いの類が息を潜めているやや暗い雰囲気が特徴です。
他の短編は現代を舞台にしている作品です。
しかし邪気やら呪いやらオカルティックかつネガティブな力が幅を利かせたり、それに対抗する力を持つ者がいる模様です。
また『文殊史郎兄弟』と『肋骨さん』で同じ施設名が登場するなど、世界観を共有している可能性もあると思われます。

各話感想

過狩り狩り

『鬼滅の刃』の原型として知られる本短編は盲目隻腕の剣士が主人公です。
しかし主人公より目を惹くのが、『鬼滅』にも登場した珠世、愈史郎と初登場時の鬼舞辻無惨と同じ様な出で立ちをした鬼たちです。特に珠世と愈史郎は『鬼滅』で使用した血鬼術と同じ様な能力を使うことから、この2人に関しては新人賞応募時点でキャラクターが確立されていたのかと思うと興味深いものがあります。
3人の鬼たちは自らの縄張り周辺で派手な無差別殺人を繰り返して荒らし回る者を撃退する為に共闘します。
その一方、鬼狩りである主人公も無差別殺人を鬼の仕業と見て向かっていました。
術を用いる鬼たちが共闘しての戦いと、その後に繰り広げられる主人公が黙々と刀を振るっての戦いと2通りの戦闘場面を楽しむ事が出来ます。
また主人公が盲目隻腕になってまでも鬼を狩ろうとするのには根深い理由がありそうですが、短編であるためそういった点は掘り下げられていません。
そして最後、タイトルの意味が分かりなるほどと思いました。

文殊史郎兄弟

ある少女から父の仇討を依頼された兄弟の戦いを描いた短編です。
それぞれの能力を用いて護衛をなぎ倒していく展開は分かり易く痛快という印象を受けます。
しかし兄弟が能力を身に付ける経緯や化物一族などと呼ばれている事から暗部がありそうな気もします。
ただ本短編で驚いたのは兄弟の苗字でした。『鬼滅』でも変わった苗字が多かったですが、兄弟のものはそれらと比べても変わっているという印象を受けました。

肋骨さん

主人公は邪気を浄化する浄化師をしています。目がいくらか不自由ながら、他人の感情や気持ち的な物を文字として見ることが出来る様です。
ある日彼は強い邪気が路上に転々としているのを見かけて辿って行きます。
そしてある一軒家の前に邪気のみならず、恐怖や助けを求める感情などが散乱している事から、何かしら事件が起こっていると判断して乗り込みます。
ややホラーやサスペンス方面っぽい出だしですが、『過狩り狩り』と同じ位、激しくバトルしてます。

蠅庭のジグザグ

自殺が多発している町を訪れた主人公は、知人の友人も自殺していた事をきっかけに元凶に辿り着きます。
その後は敵役の呪殺屋と解呪屋である主人公の対決というには一方的過ぎる光景が繰り広げられます。
この呪殺屋、相手の意志と無関係に死に追いやれるのは強いですが、接近する必要がありそうなのがネックですね。もし要人暗殺とか依頼されたらどうしていたんでしょうか。また呪力が強く無い描写も垣間見え、主人公ちは全く勝負にならなかったのは仕方無いと言えます。
それと主人公の苗字が普通なのが逆に印象的でした。

まとめ

本短編集は『鬼滅の刃』の原型である『過狩り狩り』が世界観、雰囲気ともに頭ひとつ抜けている様に感じました。登場人物などからも『鬼滅』ファンは読まないと損では無いかと思える程です。
他短編の雰囲気は『肋骨さん』が『過狩り狩り』に次いでシリアスに寄っていて、他2作はコミカルさも感じられるという印象でした。
また全短編を通して主人公は程度の差あれど暗いバックボーンを持っている様に思えます。それらは回想という形で垣間見えますが、『蠅庭のジグザグ』だけは回想などという形で描写されていないものの、あとがきで記されています。あとがきには他短編も含めて、裏設定があるとも記されていますので、そういった事に思いを馳せながら読んで見るのも良いかも知れません。