目次
DATA
- タイトル:僕だけがいない街
- 放送クール:2016年冬
- 話数:12話
- 制作:A-1 Pictures
- 監督:伊藤智彦
- 脚本:岸本卓、安永豐
藤沼悟。29歳。
公式サイトより抜粋
彼は自身が引き起こす特殊な現象「リバイバル」の結果、交通事故に遭ってしまう。
幸い軽傷で済んだものの、心配して来た母親の佐知子と同居することに。
二人で行ったスーパーの帰り道、リバイバルが再び悟に訪れる。
今度は何事もなく、無事帰宅する悟だったが、ふいに佐知子から「スーパー前で誘拐事件が未遂に終わった」という不穏な言葉を耳にする。
そしてバイト先から帰ってきた彼は、信じられない光景を目にするのだった。

概要
本作は2016年冬アニメとして放送されました。
2012年6月から2016年3月に掛けてKADOKAWAの月刊ヤングエースに連載されていた三部けい氏の同名マンガを原作としています。
原作は2015年から2016年に掛けてノベライズ、2016年に実写映画、2017年にNetflixにてドラマ化されるなどマルチメディア展開されています。
勝手に時間が戻る主人公
本作の主人公「藤沼 悟」はピザ屋でバイトして生計を立てている、売れてない漫画家の青年です。持ち込んだ先の編集者に踏み込みが足りないとダメ出しされたり、同じピザ屋で働く女子高生「片桐 愛梨」に声掛けられたりといった調子で過ごしていました。
しかし彼には自らが『リバイバル』と呼んでいる能力があり、周辺で人命の危機などがあると勝手に数分前に時間が巻き戻ってしまうという物です。悟はこの勝手に巻き戻る能力を迷惑に感じつつもその都度対応していた様子です。その能力の性質上、一種のタイムリープでありながら自分の利益になる事がほとんど無かった物と思われます。
そしてある時彼は配達中にリバイバルが発生した結果、ドライバーが意識を失っていたトラックが児童を轢くという事態は回避しますが、衝突に巻き込まれてしまいます。
それから病院に運び込まれた悟は走馬灯らしき物を見るも、2日ほど経って意識が戻ります。ちょうど見舞いに来ていた愛梨から話を聞きつつも、悟は踏み込んだ質問をしてくる愛梨の距離感に戸惑いを覚えている様子です。
母親の襲来と不穏な気配
その後、悟の怪我そのものは大した事無かったのか、程なく退院し帰宅しますが家には母親である「藤沼 佐知子」が上がりこんでいて、しばらくいると告げます。ただ息子が心配でやって来たのだろうとが思われます。
その夜、TVで誘拐事件に関するニュースを放送していた事を受けてか、佐知子は悟が小学5年生だった頃に起きた連続児童誘拐殺人事件について話を振り、悟の独白でクラスメイトが2人犠牲となり、悟と親しかった青年が逮捕されてた事とが語られ、犠牲になったクラスメイトの1人が「雛月 加代」という女子であった事を後に思い出します。
その後佐知子と買い出しに出掛けた悟がリバイバルしたのをきっかけに、佐知子は目の前で女子児童誘拐未遂が起こっていた事を知り、犯人の顔に見覚えがある様子を見せます。ただその直後に愛梨と会い、悟宅にて3人で食事となります。平和なシーンですが、不穏な雰囲気が漂いつつあります。
翌日、佐知子はかつての連続児童誘拐殺人事件が冤罪で真犯人は昨日誘拐未遂した人物では無いかと考えて独自に調べようとした矢先に何者かに殺害されてしまいます。
その直後に帰宅した悟は混乱している所に現れた大家が惨状を見たことで完全に容疑者扱いとなります。犯人の罠か警察の動きが異様に早く、悟は警官から逃げようとした時リバイバルします。
しかしリバイバル先が悟は即座に把握出来ません。それもそのはずで、リバイバルしたのは小学5年の時代だったのです。
これは佐知子殺害を回避するには連続児童誘拐殺人事件を防ぐ必要がある事を示しています。
という非常に濃密に感じられる1話で本作は始まります。
果たして悟は連続児童誘拐殺人事件を防ぐ事が出来るでしょうか。
過去の事件を防げるか
子供の頃からやり直したいと思う方は少なくないと思われます。ただそれは現在の記憶や知識を持っている事が前提となります。理由は言うまでもなく、ただ同じ条件でやり直しても大差ない結果になると思われるためで、記憶や知識を持って過去に遡ればそれは一種のチートと言えます。
そんなチートの様な状態で少年期に戻った悟ですが、犯罪を未然に防ぐとなると話は違ってきます。
ただ被害者である加代がクラスで孤立していた事を漠然と覚えていた悟は、とにかく加代をひとりにしない様にするという方針を取ります。加代と積極的にコミュニケーションを取って事件が起こる頃にはひとりでは無く、犯人に付け入る隙が無い状態にするという事です。
これは悟が加代を最期に見たのが夜の公園でひとり佇んでいる姿だったためにそういった印象が強かったのかも知れません。
そして加代と親睦を深めようとした悟ですが、その過程で加代が家庭内で虐待を受けている事を知ります。
そして加代がクラスメイトに関わらず、自ら孤立していた事も知ります。
そんな加代と次第に親睦を深め、さらに極力加代が家にいる時間を少なくするようにするなどした悟は加代を助けられたと確信しますが落とし穴があり失敗する事になります。
犯人との対決へ
失敗した悟は元の時代に戻され、追われる身となります。
そんな悟を助けようとする愛梨ですが、彼女にも犯人の悪辣な魔手が忍び寄っていました。
そのため悟は愛梨を救出した後、ひとり潜伏していましたが、彼女はなおも踏み込んできます。その流れのやり取りで前回加代を延命させた事がこの時代に反映されている事を知りますが、2人は犯人と警察によって追い詰められつつありました。
そして絶体絶命の場面で再度リバイバルが起こり悟は再度少年期に戻ります。これを最後のチャンスと捉えているのか、悟は加代の身辺に関する根本的な問題に挑みます。前回はその問題があったため、悟の目が届かない場所で犯人の付け入る隙があったという訳です。
それが分かった以上、悟は雛月家の問題に踏み込んで行きます。そしてそのために頭脳明晰で冷静な印象を受ける「小林 賢也」や加代の後に犠牲者となる「杉田 広美」といった友人たちの協力を得て行きます。
そうして加代を始めとする連続児童誘拐殺人事件の犠牲者を出さないように動く悟の前に、とうとう犯人が姿を現し、物語は大詰めへと向かっていきます。
作画、演出など
作画は目に見えて美麗というほどではありませんが、地味ながらも堅実と思えるものになっています。
少年期は2月から3月に掛けての北海道が舞台ですが、雪山の場面などは美しい星空やいかにも北国といった雰囲気が描かれています。それ以外も雪国といった雰囲気が表現されている様に感じられました。
また本作で悟の独白は青年期の声でなされています。これは青年期までの記憶を持つ人格でストーリーを進行しているため、ですがラスト付近は独白を変えたり一切入れないといった演出の工夫も意外性に繋がっている様に感じられました。
まとめ
本作は一種のタイムリープというSF要素を持ったサスペンス作品となっています。
ただ単純に犯人当てと見ると、犯行可能な登場人物が限られているため、何となくでも推測可能となっています。
そのため如何にして事件を防ぐかという点に主眼が置かれています。
そして悟が事件を防ぐために踏み込んで行き、成長していく様子も見所でしょう。そうして成長した悟が迎えるラストシーンなどキレイに締めくくった作品と感じました。