【2021年秋アニメ】逆転世界ノ電池少女【感想】

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DATA

  • タイトル:逆転世界ノ電池少女
  • 放送クール:2021年秋
  • 話数:12話
  • 制作:Lerche
  • 監督:安藤正臣
  • 脚本:九頭竜、中西やすひろ、風埜隼人
7 out of 10 stars (7 / 10)

西暦2019年、改元を目前とした日本。
その上空に突如現出した異次元の裂け目。
そこには天地逆転した異世界「真国日本」があった。
かつての軍国主義を維持したまま、永世昭和の世を続ける並行世界は、
現行兵器を無効にするガス兵器「幻霧」と
巨大人型兵器「伽藍」を駆使し、私たちの日本を軍事的侵略。
瞬時に政府を掌握し、事実上の征服を果たす。
我らに「令和」という時代は訪れなかった……。
―――それから十年後。真国の属国として生まれ変わった幻国・日本。
厳しい検閲の中、かつて隆盛を誇ったマンガ、アニメ、アイドル等の
サブカル文化は完全に死に絶えた……かに見えた。
しかし、Otaku is not dead!
サブカル文化を守るため真国に真っ向から抗う集団が存在した。
その名も秘密結社「アラハバキ」。
そして主力兵器「ガランドール」と、その動力源となり戦う少女たち。
人は彼女たちを称してこう呼んだ…
電池少女と…。

公式サイトより抜粋

概要

本作はサブカルチャーやいわゆる萌などといったオタク文化が抑圧されている日本を舞台にしたロボット物のオリジナルアニメです。

2つの日本

本作の舞台となっているのは『令和が訪れなかった日本』となっています。10年前の平成が終わる直前の頃にパラレルワールドに存在する、大戦を勝ち残り軍国主義と昭和が継続している日本に侵攻され、その属国になってしまった模様です。この2つの日本を区別する為、作中では昭和日本を『真国』、平成日本を『幻国』と呼称している様ですが、一方は真の国でもう一方は幻の国としている辺り、いかにも勝者によって一方的に名付けられたであろう事は容易に想像出来ます。ただ同じ日本人という為かそれほど変わりない生活を送れている様ですが、真国より『真誅軍』と呼ばれる部隊が配備され、主に綱紀粛正の任に当たっている様な描写がされています。それによりマンガ、アニメをはじめとするサブカルチャーに対しては弾圧がなされ、それが本作のテーマとなっています。
一応侵攻される前の平成日本には同盟国が存在したと思われますが、救援はしたものの敗れたのか、それとも救援する間もなく平成日本が降伏したのか、あるいは日本同士の戦だからと静観した挙句日本から追い出されたのかなどと色々想像の余地はあります。そういった事に関して作中での描写はありませんが、設定に拠れば2番目の可能性が最も高そうです。
いずれにせよ本作の設定は色々想像出来る魅力的なものに感じられます。

軟派な主人公

本作の主人公「久導 細道」は歌舞伎町でホストとして働いており、店では1番人気だった様です。
しかし真誅軍の主力兵器である人型ロボット『伽藍』が現れ、浄化と称して特区となっていた歌舞伎町を破壊した為に職を失う羽目になります。そんな最中現れたのが秋葉原を拠点としている抵抗勢力アラハバキの人型ロボット『ガランドール』でした。しかしガランドールは真誅軍の伽藍に挑むもあえなく返り討ちにあいます。そんな混乱の中、細道は助かりたい一心で無人だったガランドールのコクピットに乗りこみます。一市民でしか無かった主人公が偶然ロボットのコクピットに乗り込んでそのままパイロットになるというのはロボットアニメでは王道と言って良いでしょう。
そして細道はガランドール『シャーク1』の電池少女「赤城 リン」と協力し真誅軍の伽藍を退けます。
しかし歌舞伎町は壊滅し店も無くなった為、細道は身元引受人の宗方と共に「バルザック山田」が率いるアラハバキに身を寄せる事になると言うのが1話ですが、おおよその流れは王道っぽいのに主人公がホストで宗方に借金返済を迫られていたり、ラストでがランドールを指してこれを売ればなどと発言したりと、主人公である細道に対し好感を持ち難いというのが初期の印象といった所でした。

戦闘と電池少女

アラハバキが保有しているガランドールは搭乗する電池少女のときめきという名の精神力的な物を動力としていて、電池少女自身もサブパイロット的な役割を持っている様です。
例えばリンが搭乗する時は、リンが愛して止まない海帝ザバーンというヒーロー物の影響で鮫がモチーフのシャーク1に変身します。
ロボット物で変身という表現はそぐわないのではという向きがあるかも知れませんが、ガランドールは電池少女によって全く違う形になり内装まで変わってしまう為、変身という他無いと思われます。
そんなガランドールの要である電池少女は戦闘による消耗が激しく、あまり連戦は出来ないという点があります。
片や真誅軍は『東雲 アカツキ』大佐と『真神 ハヤテ』ら3人の配下パイロットが入れ代わり立ち代わり単機で秋葉原に侵攻してきます。その度に細道&電池少女のガランドール対真誅軍の伽藍による1対1の闘いとなる辺り、本作がいわゆるスーパーロボット物を意識していたのでは無いかと思われます。
また電池少女も当初はリン1人である為に無理が出てきた事から、リンに続く電池少女として、真誅軍により違法な存在となったアイドルとして活動している地下アイドル「蒼葉 夕紀」と凄腕ハッカーにしてゲーマーの少女「黒木 ミサ」を細道が手を尽くして仲間に引き入れます。リンとの対話などを経て勧誘の過程で口八丁だけが頼りだった細道にも成長が見て取れ、コンビニでバイトしていた夕紀を真誅軍から庇ったりしています。
そうして終盤に差し掛かる頃には細道の奮闘により電池少女は3人となります。それによりガランドールは夕紀による『ラビット2』とミサによる『キャット3』という形態に変身出来るようになります。

最終決戦

本作の敵方である真誅軍の側もしばしば描かれますが、終盤には指揮官であるアカツキは本国の上層部に比べて穏健派である事が見て取れる様になっています。
そんなアカツキは抵抗勢力であるアラハバキについて知ろうとした矢先、ある人物の愚行により幻滅する事となり強硬策に出ます。
それは押収されたサブカルグッズの保管庫になっていて東京ビッグサイトを秋葉原に落とすという物でした。
しかもそれを迎え撃とうとするアラハバキも混乱が起こっていました。
しかしそれを乗り越えての最終決戦やガランドールは伊達じゃないとか言いそうなビッグサイト落下阻止などは熱い展開と言えます。

まとめ

本作は現代に近いながらも抑圧されている日本を舞台にしたロボットアニメとなっています。人々は変わらず暮らしている様に見えますが、浅草橋のクレーターなど10年前の戦いによる傷痕なども残っています。
そういった背景を感じさせない熱い展開と戦いの末、秋葉原の防衛に成功しますが、あくまで拠点を守り抜いたに過ぎません。最終話でのアカツキの台詞から真国にも危機が訪れつつある事が伺え、アラハバキが今後どの様な戦いを行うのかといった事を気にさせてくれるラストと言えます。
しかし終盤に散々屑キャラっぷりを見せ付けた宗方が、ラスト付近で実は良い奴という流れになるのは引っかかる物がありました。