【漫画】外天楼【感想】

8 out of 10 stars (8 / 10)

外天楼と呼ばれる建物にまつわるヘンな人々。エロ本を探す少年がいて、宇宙刑事がいて、ロボットがいて、殺人事件が起こって……? 謎を秘めた姉弟を追い、刑事・桜庭冴子は自分勝手な捜査を開始する。“迷”推理が解き明かすのは、外天楼に隠された驚愕の真実……!? 奇妙にねじれて、愉快に切ない――石黒正数が描く不思議系ミステリ!!

Amazonより抜粋
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DATA

  • タイトル:外天楼
  • 作者:石黒 正数
  • 刊行年:2011年
  • 巻数:全1巻
  • 出版社:講談社
  • レーベル:講談社コミックス

エロ本入手から始まる話

本作は通称「外天楼」と呼ばれている集合住宅を舞台にした連作短編のコミックとなっています。
この外天楼は増築を重ねて巨大迷路の様な構造になってしまっているらしく、「目的の部屋が目の前にあるのに道が分からない」「本来の出入口が増築部分で塞がってしまい飲食店を通り抜けないと出入出来ない」などといったとんでもない場所です。こんな九龍城みたいな建物、現実だと行政に工事差し止められていそうです。
そんな奇妙な建物が舞台ですが、最初に描かれる話は、3人の男子中学生が手を尽くして手に入れたエロ本に関する謎を解く話となっています。
ごみ捨て場で束ねられていた本を入手した少年たちは、所々欠落している箇所がある事に気付きます。少年たちはその情報を元に捨てた人物の嗜好などを推測して行きます。

この話だけ見ると、日常ミステリ物かと思ってしまいそうです。

変わって行く世界観

2話では10年経って成人になった元少年の内2人が宇宙刑事に関する話をします。
敵アジト前で交戦した宇宙刑事ですが敵戦闘員に紛れ込んでいた民間人が死亡している事に気付きます。
その後宇宙刑事と敵幹部が警察に通報して事情を聞かれるという何ともシュールな展開になります。そしてこの事件の真相は?といった所です。

次の3話ではロボットに関する話が描かれますが、ある住人から外天楼の話である事が分かります。ただ時系列が分かり難くなるかも知れません。
この時点で人型ロボットも登場していますが、5話では人工生命体も登場するなど、1話時点で想像していたより、SF要素が強い世界観であると気付かされます。

迷刑事

外天楼などで度々起こる事件に対し挑むのは、警視庁捜査一課の新米刑事である「桜場冴子」です。
中盤である4話から登場する彼女はミステリファンらしく、数々の迷推理で現場や関係者、相棒の山上までもかき回して行きます。

4話で提示する密室の謎や5話でのダイイングメッセージで嬉々とした様子で迷推理を繰り広げますが、真相は如何にといった所でしょうか。

終盤

終盤に入ると、1話に登場した姉弟が話の中心となり、展開もシリアスになっていきます。
1話での人間関係やロボットや人工生命体といった要素が絡む事が動機となっていくつかの殺人事件が起こっています。
そして犯人が桜場と対峙する最中、回想という形で描かれる真相は、本作への印象を変えさせるほど衝撃的で、そこから破局的な結末を迎える事になります。

まとめ

序盤と終盤で大分印象が変わる作品と言えます。
本作はミステリ小説誌である「メフィスト」で連載していたそうです。それを考えると1話や2話といった意外なシチュエーションから推理に持って行く展開や、これまでの話を収斂していく終盤はなるほどと思わせます。
しかし気になった点が無い訳でも無く、姉弟の家族関係に関して終盤まで特に伏線が無いため唐突に感じた点でしょうか。
あと個人的な感想ですが主要キャラのほとんどが救われない感じなのも何だかなあという気持ちでした。
そういった事もあって、あの時エロ本集めていなければこの悲劇は無かったのかとも思ってしまう所です。