2017年 ecoddr

「魔法」が人々に恩恵をもたらしてからしばらくのこと。 魔法学校は、砂漠の鉄騎兵を率いる西国に戦争を仕掛けた。
公式サイトより
「魔法」の戦争利用が始まったのである。
ある日、魔法学校を訪れていたリジェは、生徒であるシイナと出会う。
シイナのひとく慌てふためいた様子に、リジェは訝しんだ。 そこには……
得体のしれない化け物、「魔者」の姿があった。
目次
概要
本作はファンタジー世界の魔法学校を舞台にして、そこで起こった事件に巻き込まれたキャラたちを描いたステージクリアタイプのRPGです。全16章からなり所要時間は10時間程度となっています。
Portableと付いている様に、元々はWindows用フリーゲームでWindows版はニコニコ自作ゲームフェス2016「窓の杜」賞、フリーゲーム大賞2016入賞といった実績がある様です。
魔法学校を舞台にしたRPG
物語は魔法学校にある時計塔から始まります。
田舎の教師で学校の卒業生である「リジェ」は時計塔で何やら待っている様子の時、学校の生徒である「シイナ」と出会います。
彼女は突如現れた魔者と呼ばれるモンスターに追われていた模様です。最初の魔者を撃退したリジェは教師らしくシイナに魔法の手ほどきすると、これまで使えなかったという魔法が使えるようになります。よくこれで魔法学校の生徒が務まっていたものだと思いますが、実際落第スレスレの成績だった模様です。
学校内に魔者が現れるという異常事態に、他の生徒たちと合流しようとするリジェたちの前に生徒会長の「ミシェル」が現れます。
彼女は校内にいた生徒たちの安全を確保するため逃げ遅れがいないか見回っていたようです。
そして他の生徒たちとの合流を果たしたリジェたち。合流した生徒たちに混じって、校内で桜を見ていたという旅人の「ルネ」がいました。
やがて異常を聞いて駆けつけたリジェの学友で国境警備部隊を率いている「エリシャ」や同じくリジェの学友で戦闘中の前線から戻ってきた「ソラ」も合流する事で仲間キャラが出揃います。
彼女たちはこの後陰謀に巻き込まれながらも、事件や魔法学校の裏側に迫っていく事になります。

システム
本作は紙芝居風のアドベンチャーパートと戦闘からなっています。
フィールドなどの移動どころか、武器などの装備やアイテムという概念すら無く、ストーリー進行と戦闘のみに注力したシステムになっています。
各章で一定回数戦闘を行い、進行が100%になるとボス戦となります。ボス戦前は全回復しますが、ザコ戦の合間は回復手段がありませんので戦闘中の立ち回りが重要となります。
独特な戦闘システム
本作の戦闘ですが、登場キャラ全員が魔法使いという設定の為か物理攻撃という概念がありません。いくらレベルを上げても物理で殴れない仕様となっています。
戦闘の基本システムはいわゆるアクティブタイムバトル制となっていて、行動順を示すゲージが表示されていますが、行動順が表示されるのは味方か「アナライズ」した敵となります。
戦闘中のコマンドとしてはMPを消費して魔法を使う「スペルマジック」、一定ターンで溜まるゲージを消費して強力な技を放つ「スペシャル」、任意のPTメンバー1人をMP回復させる「リンケージ」、敵を解析する「アナライズ」があります。前者2つは普通ですが、後者2つは本作特有で重要な物になっています。

リンケージとアナライズ
リンケージはアイテムが存在しない、スペシャル技を除けばMPを消費しないと攻撃出来ないという本作の仕様上非常に重要です。誰でも使えるためHPより管理が楽とも思えますが、MPを削ってくる敵も存在するため気は抜けません。ゲーム終盤になると各キャラ毎に追加効果が付与出来る様になります。
もう一つのアナライズは敵を解析してHP、弱点属性、行動順が分かるようになります。
ボス戦では必須と言えますが、「ガード」を考えるとザコ敵に対しても必須と言えます。
ガード
ガードはコマンドとして存在せず、敵の攻撃に合わせて画面を長押しするという物になります。ただガード中は味方の行動が止まってしまう為、アナライズして敵の行動順を調べ、それに合わせる必要があると言うわけです。なかなかガードを合わせられ無くても自動ガードというシステムも用意されています。個人的にも中盤に差し掛かるまでは手動ガードで何とかなっていましたが、結局自動ガードに切り替えました。
戦闘前の準備が物を言う
仲間が集まってくると、戦闘前に入念な準備が必要になります。仲間キャラは6人ですが戦闘に参加するのは3人、さらに1人が扱える魔法は4つまでという制約がある為、どのような編成で行くのかが腕の見せ所となります。
各キャラメインで扱う属性が異なり、戦闘パートでどの属性が有効かという指標も出ていますので、それを元に参加メンバーを決めて、魔法のバランスなどを考えて魔法を入れ替えたりする形になるかと思われます。
一度敗れた相手でも編成などを見直せば勝てるかも知れません。

独特な世界観
システム面だけでは無く、世界観も独特な物を感じます。
舞台が魔法学校である事は先述しましたが、この学校が軍隊を持っていて、他国と戦争中である事が冒頭から語られます。つまり一学校が国家レベルの力を持ってしまっているという状況が語られている訳です。
何故学校がこの様な権力を持っているのかという他にも、魔者出現の謎やその正体について、国境外のロストワールドと呼ばれるエリアについて等々といった謎が作中に出てきますが、それらは一通り明らかにされます。
ただ魔者の正体について考えると、本作の世界観はプレイ前に感じたよりもダークな印象を受けます。


百合の気配
本作の登場キャラは皆女性です。学校内での戦いに一段落ついた後、彼女たちは故あって学校から出ていきます。
序盤から中盤に掛けてそういった旅を行った後、終盤には事件の元を絶つために動きます。
当然危険が予測される訳ですが、そういった緊張感からか彼女たちはそれまで絡みが多かった者同士急速に親しくなって行きます。
登場キャラは偶数できちんとカップリングされている上、最終盤に向かうにつれ親しみの度合いが深まっていってるように見えます。
こういった方向性の作品にはあまり触れていなかった事もあってやや戸惑ってしまいましたが、本作のそれはあくまで仲間意識から少し踏み出した程度でそこまで深い物では無いのではというのが私見です。
キャラクター短評
性能面中心の短評です。
各キャラは複数属性の魔法を使用可能ですが、メイン属性には威力が上がるパッシブが付いています。
リジェ
本作の主人公格と思われるキャラです。
メインは水属性で魔法枠は水2白と黒が1。
能力はバランス型で、回復魔法である「ウォーターヒール」が水属性という事もあって攻守両面で頼りになる印象があります。
ストーリーでは教師ということもあって中盤までは頼りになるキャラかと思ってましたが、過去が明らかになりメンタル面で不安定さが露わになったりしました。
それを一応乗り越える辺り主人公らしいと言えるかも知れません。
シイナ
リジェが作中最初にあったキャラ。
メインは黒属性で魔法枠は黒2水と無が1。
メインの黒属性「ダークフォール」はそれなりの威力はあるもののダメージにムラがあります。水属性「ウォーターヒール」をセット可能なうえ暗闇を付与出来る「ダークネス」もあるためこちらも攻守で活躍可能です。
ステータスは攻撃よりながら少し低めな印象です。
ストーリー面では冒頭で魔者から助けたリジェを慕っています。当初は頼りない印象ですが学生ということもあってか成長が様々な意味で成長が感じられるキャラとなっています。
ミシェル
取り残された生徒を探していた生徒会長。
メイン属性は白で魔法枠は白3、雷1ですが最終的には白と雷が2ずつとなります。白3の方がらしいという気はしますが、雷が増えた後はストーリー上で戦闘参加の機会はありません。
白属性ではステータス異常解除の「リフレッシュ」やリジェネが掛かる「リジェネレーション」などサポート魔法が中心です。
ステータス面は防御よりながらやや低めとなっていて、特に攻撃が低いことから白属性「セイントビーム」は弱点で無い限り使う機会は少ないでしょう。実際の戦闘では専らサポート担当ながら必中のパッシブを持っていたりとチグハグな印象を受けます。
ストーリー面では行方不明の妹を探している事が再三語られています。この妹と事件の関係が気になる所ですが、そういった点も明らかになります。
ルネ
学校内で桜を見ていて事件に巻き込まれた旅人。
メイン属性は無属性で魔法枠は無2、火と水が1。
一般的なRPGで無属性魔法は強いイメージがありますが、本作では弱点とする敵が無い事と「バーストストライク」が単体でも全体でも無く分散ダメージという中途半端な印象を受けます。
他には敵の能力全般にデバフをかける「ディクライン」や終盤に習得するダメージ軽減の「ダメージカッター」などサポート魔法が中心となります。
また水属性を覚えられますので、回復面で働く事も可能です。
ステータスは命中高めで攻撃が並なのを除けば少し低めといった印象です。
ストーリー面ではメインキャラ中では唯一魔法学校に通ったことの無いキャラと言えます。常に平静で達観した印象を受けますが食欲は旺盛です。しかし世界観の根幹にも関わっています。
エリシャ
リジェの学友で国境の警備隊長。
メイン属性は火で魔法枠は火3と無1。
最初から「ファイヤーボール」のみならず全体魔法「バーニングエッジ」を習得しています。
覚える魔法が攻撃系が多いですが、ステータス面も攻撃寄りとなっています。
ストーリー面ではドラゴンを扱う点を除けば、終始安定した印象を受けます。
ソラ
リジェの学友で魔法学校の軍に所属していた軍人。
メイン属性は雷で魔法枠は雷3、黒1ですが最終盤で雷2、白と黒が1。
白属性を習得するのは1人で戦うイベント戦闘のため「リジェネレーション」しか選択肢はありません。雷属性は「ライトニングボルト」や全体魔法「サンダーストーム」を最初から習得しています。他に敵を拘束する「エレクトロチェーン」がありますが攻撃魔法撃った方が早い印象もあり影は薄いと言えます。
ステータスは防御が少し低めなのを除けば全体的に高めです。
ストーリー面では学校始まって以来の天才魔法使いというだけあって常に強気な描写がされています。ただリジェが主席卒業生だったとされていますが、魔法使いとしては優秀でも主席にはなれないということでしょうか。
先述の通り基本強気な姿勢ですが、様々な面で不安定な印象を受けます。
まとめ
本作はマップ移動、資金稼ぎ、情報収集など冒険に時間の掛かる要素を徹底排除と謳っていて、実際ストーリー進行と戦闘に特化した造りとなっています。
フィールドやダンジョンの探索などといった要素が無く、王道的なRPGとはやや異なりますが、一本道のストーリー中心であればこういった造りでも楽しめるのかも知れません。
百合の気配があることを除けばストーリー中心のRPGと言え、そういったタイプのゲームを好む方であればプレイして損は無いと言えるかも知れません。

