【劇場アニメ】都市伝説物語 ひきこ【感想】

2008年 40分

4 out of 10 stars (4 / 10)

新進気鋭の映像クリエーター・奇志戒聖が制作した3DCGアニメーションホラー作品。小学三年生の聡のクラスに転校してきたさと子は、クラスメイトからいじめの対象とされてしまう。ところが数日が経つと、いじめをしていた男の子や担任の教師の身に恐ろしい出来事が起こっていく。本作は奇志戒聖が原作・脚本・監督・CG制作のすべてを一人で担い、3Dのリアルな映像は実写以上の恐怖を与えてくれる作品となっている。都市伝説の原点と言われるエピソードを描かれているので、ホラーファンには必見の内容だ。

本作は都市伝説「ひきこさん」をモチーフにした全編フル3DCGアニメ作品です。
CGと言っても10年以上前の作品なので綺麗と言える程ではありませんが、主人公が棲む集合住宅団地の、薄汚れて寂れた雰囲気を巧く醸し出してる様に思われますし、「ひきこさん」の動きなどはCGならではとも思われます。

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ひきこさんとは

雨の日、白いぼろぼろの着物を着て、人形のようなものを引きずっている女と出会う。よく見ると、女の目はつり上がり、口は耳元まで裂けている。そして女が引きずっていたものは人形ではなく、小学生ほどの子供そのものだった。女は自分の姿を見た子供を捕らえて肉塊になるまで引きずり回し、決まった場所に連れて行き放置する。彼女は自分が受けた酷いいじめに対する恨みから、子供を捕まえては肉塊と化すまで引きずり回しているのだ、というもの。

wikipediaより

本作の「ひきこさん」もおおよそは都市伝説に従った設定になっていると思われますが、「ひきこさん」について詳しい描写がなされているシーンはほとんどありません。

回想

本作は主人公である聡が小学3年生の頃を回想するシーンから始まり、作中の大半は小学3年生時代の話となっています。
主人公の回想は小学3年生だったある日、人らしき物を引き摺って河原を歩く「ひきこさん」を目撃する場面から始まります。
何とか団地の自宅まで逃げ延びるも、自宅玄関ドアでの「ひきこさん」との攻防如何にもホラーといった趣きですが、こういったシーンはこの後終盤までありません。
この後聡の回想は隣室に引っ越してきたさと子という同級生との話が中心となります。
しかしホラーにありがちですが、主人公の回想中に基本マトモな人物は登場しません。
いかにもな悪ガキのイジメっ子、イジメに加担するクラスメート、職員室で同僚教師にいじめられっ子について話を振られて「ああ言う子供も必要」などと言い放つ無責任な担任教師などとロクでも無い人物ばかりで陰鬱な雰囲気のなか終盤まで話は進んで行きます。
ちなみに主人公の両親も登場しない為、主人公が小学生で独り暮らしをしている様に見えてしまいます。

終盤

回想はいじめっ子2人と担任教師が急死したといって終わっていますが、その前に担任教師が「ひきこさん」に襲われる場面が描写されています。
その為いじめっ子の死も「ひきこさん」による物と思われますが、これについては直接襲われる場面が描写されていません。

回想を終えた後、クラス会に参加した主人公はある衝撃的な事実に直面するといった展開が待ち構えています。
こういった大どんでん返し的な展開というのは十分な伏線が張られていれば、驚きつつも納得出き、良い意味で衝撃的な展開と言えます。一方伏線がちゃんと張られていなければ唐突なだけで視聴者を混乱させてしまう、悪い意味で衝撃的な展開と言えます。
本作の終盤に関しては後者であり、唐突な展開という印象でした。
伏線と言える物はほとんど無かったのではと思われます。
強いていえば主人公が回想しながら言っていた自分たちでも誰かを守ってやれると思っていたという趣旨の意味合いが全く変わってきそうという程度でした。

ひきこさん

本作本編の最後は現在の時間軸で、ある人物が「ひきこさん」を目撃する場面で終わっています。
この場面では人外であると思われる「ひきこさん」ですが、それより以前の担任教師を襲った時点では生きた人間であった可能性が示唆されています。
もっとも動きは生きた人間の物では無かった様に思われますが。
本作の「ひきこさん」は10年以上前のCG故かぎこちない動きがいい感じに強調されていて、非常に不気味な存在になっていると言えますが、タイトルになっているにも関わらず、思いの外出番が少ないのが残念と言えます。

まとめ

本作は都市伝説である「ひきこさん」をテーマにしつつも話の中心ではないという一風変わった作品です。
しかし約40分と短い作品で割りとサクッと見られますので、何か見たいがあまり時間が無いという時に検討してみては如何でしょうか。