目次
DATE
- タイトル:ひとりかごめ
- 作者:雨がっぱ少女群
- 刊行年:2019年
- 巻数:全1巻
- 出版社:竹書房
- レーベル:バンブーコミックス

見えない何かを相手に
Amazonより抜粋
今日もひとり、かごめの輪に座る――。
ホラー短編集
本作は漫画家、雨がっぱ少女群氏のホラー短編集となっています。一見した所ではホラーと思わないような絵柄が目を惹き、多くの短編は可愛らしい少女が中心として描かれています。
しかし内容は短いながらもしっかりホラーしていてこの世ならざる存在や怪異による理不尽な仕打ちが描かれ、時にはグロ描写も含んでます。
各話短評
一周目:消費者の呻き
ある女性が偶々訪れたスーパー。人気が閑散としているものの、増量された商品を多く取り揃えた穴場とも言える場所でした。
しかし当然ながらこのスーパーは普通のスーパーではありません。閑散している事から多分一般的な消費者には見えない場所なのかも知れません。
このスーパーを訪れた客の末路は因果応報とも取れますが、過剰とも思えます。ただ怪異の様な存在は手加減という概念が無いのでしょう。
二周目:工場勤務
闇が深そうな工場の話です。
どうやら亡くなった工員が次々と道連れにしていっている様です。良く見ると周囲の工員は顔色が怪しく、実際に生きている工員はかなり少ないのではと思ってしまいます。
現実でこんな工場がまともに稼働出来るのでしょうか。
三周目:ザリガニ
一見平和な光景から突然のグロ。
これはモンスターホラー的な一種なんでしょうか。
四周目:無数の孤独
地味で内気な印象の少女が主人公です。
その性格故にグループ内で空気扱いになっている様で、当人も孤独を感じている様です。
そんな彼女に忍び寄る怪異は、その弱みを突いたと言えます。怪談じみたオチも印象的です。
五周目:百円の眺望
麻雀で勝てずに展望台から双眼鏡で景色を見て気晴らししている男性。こんな風に全てを見通せればと嘯きますが、遠くまで見えても相手の牌までは見えないのではと思ってしまいます。
その後ある拍子で男性に宿る能力。しかしその様子は痛そうという他ありません。
六周目:ペット
ある少女が飼い始めたペット。
それは自身の分身とも言える存在でした。飼い主と同じ寿命で、いう事も聞くなど長所がある一方で致命的な短所があり、結末は予想は出来るものの、なかなかインパクトあります。
七周目:ひとりかごめ
表題作である本エピソードは人間離れした少女を描いています。背後に何者かの気配を感じるという彼女は、予想外の方法で背後の様子を監視しようとします。一体どういう構造の身体をしているのかとも思いますが。
周囲の反応を見るに、この奇行は定期的に行われている様です。本エピソードは恐怖感はそれほどありませんが奇行がループする展開は意外性がある様に感じられました。
八周目:地図
登山していた2人の男性を襲う理不尽な出来事。地図が当てにならないのはともかく、実際の地形まで変わってしまうのでは打つ手が無いのでは。
そして結末は愕然としてしまいます。
九周目:夢うつつ
ある少女が幼馴染の少年を訪れると腕の骨折をはじめ全身負傷していました。少年がいうには夢で負った怪我が現実になってしまっている模様です。
そして眠るのが怖いという少年に対し、気分を変えるようにアドバイスする少女。そしてその晩の夢での結末は途中で予想は出来るものの、後味の悪さが印象に残ります。
十周目:轍は闇に呑み込まれ
ある少女がバス停でバスを待っていた所、老人の一団がやって来ましたが…といった展開の話です。ストーリーそのものは怪談的な印象を受けますが、エピソード全体から生臭い雰囲気と結末から感じる悪意が印象に残ります。
十一周目:現象
その街では人の蒸発が多発しているそうです。親友同士である少女2人はどちらも父親が蒸発してしまうという、今後が色々思いやられる有様となってしまいます。
更に主人公の少女は目の前で親友が蒸発してしまいます。その後の結末は唐突に感じられなくもありませんが、「蒸発」という言葉からの連想なのかとも思われます。
十二周目:遺された調理法
ある男性はかつて住んでいたという街を商用で訪れ、ついでに見覚えのある食堂で昼食にします。しかし店内にいたのは見覚えのある男性店主では無く、妙齢の女性でした。
男性がいくらかの下心も含んで話を聞いた所、女性の義父に当たる先代の店主が亡くなった為、夫婦で跡を継いだそうですが、上手く行かなかった事もあってか、夫がある理由で精神を病んでしまった模様です。
しかし結末を考えると、夫は分かりやすく発狂しましたが、妻もまた静かに発狂していたのではと思わざるを得ません。
まとめ
本作は実に12もの短編が収められています。傾向としては衝撃的だったり恐怖感が強いという事は無く、不気味さや奇妙な印象を受けるという方向性が主のホラー作品と言えます。また霊的存在が登場する作品は少ないですが、登場する霊はどれも生者を引きずり込もうとする強い悪意を感じました。
個人的に気に入った短編は少女の奇行がループしている『ひとりかごめ』、夢での負傷が現実になる『夢うつつ』、霊的存在が跋扈する工場の『工場勤務』辺りとなります。