DATA
- タイトル:惑星をつぐ者
- 作者: 戸田尚伸
- 刊行年:2018年
- 巻数:全1巻
- 出版社:ビーグリー
- レーベル:まんがフリーク

とある銀河系の中では、さまざまな異星人達が存亡を賭け宇宙に進出している。その中で人類は滅亡しつつあった――。多くの人類が奴隷として異星人に従う中、全宇宙で犯罪を重ね指名手配になったバラダット・ナイブスという一人の男が灼熱の星ダウロスにやってきて……。
Amazonより抜粋
概要
本作は1995年、週刊少年ジャンプで41号~49号とごく短期間連載された作品です。
作者戸田尚伸氏の初連載作品で、宇宙での追跡劇を描いたSF作品です。
近年、版元を変更して電子書籍化されています。
異なる宇宙の物語
現実世界とは異なる宇宙が物語の舞台だそうです。この宇宙に地球は無かった様ですが、人類は存在している模様です。
しかし他の種族と比べて弱い人類は奴隷として売買されるか厳しい自然環境下で細々と生きる事を余儀なくされるという、宇宙規模で弱肉強食が展開されている世界観である事が説明されます。
かつて人類の母星があったが滅ぼされたとかいった事もありそうですが、作中では特に述べられません。
そんな世界観の中、灼熱の惑星ダロウスで奴隷として働かされている青年「マット」は行き倒れて男性「バラダット・ナイブス」を助ける場面から物語は始まり、序盤はマットの視点で進んで行きます。まずはマットから惑星ダロウスの過酷さが述べられます。この惑星に運ばれてきた人類は、主であるバルカル族に水も厳しく管理された厳しい環境で酷使されます。そしてただ奴隷として買うだけでは無く、増やす事にも気付いたバルカル族は丈夫な男には妻を娶らせる事もしている様です。そしてマットにも「ユカ」という妻がいますが、彼女は暑さから来る病に伏せていました。
この辺りは過酷な環境で非人間的な扱いされていたり、繁殖目的で妻を娶らせたりといった点はあるものの、夫妻に狭くとも個別の住まいがあるため、まだマシに見えてしまいます。
やがてマットはバイカル族から、ナイブスが自ら住んでいた惑星マリスの人類を1人でを皆殺しにしたため、宇宙規模の賞金首である事を知らされます。
一体どうすれば1人で惑星1つの住人を絶滅させられるのか、相手が1人である以上、武力で対抗出来なくても逃げ隠れなどしなかったのかなどといった事が、この時点では何の情報もない為気になる所と言えます。
捕らえようとするも軽くあしらわれてしまいます。
マットはダロウスを捕らえる事に失敗した上、彼がかねてより希望を抱いていた、肉体改造を果たした人類が解放しに来るという願いは、その肉体改造が失敗したため望めない事であると告げられます。
失意のマットはその晩、水を貰いに行くと家を出るも翌朝には水泥棒として捕まり処刑される所をナイブスに助けられます。灼熱の惑星でも生身で活動出来る強靭な肉体を持つナイブスは精神力で自在に操れる武器『自在剣(スパイラル・ナイフ)』を以て現場のバイカル族を切り刻んだ後、輸送船を強奪して惑星を脱出していったと語られます。
ちなみにここまでの下りが第一話で、圧倒的な濃度と言えます。
宇宙での追跡劇
その後もナイブスが訪れた惑星住人の視点で話が描かれます。氷の惑星に住む名も無きベザー族は、ナイブスと彼を追うクレイム族の賞金稼ぎ「アンブロウ」とが繰り広げる死闘に立ち会います。
このベザー族はシロクマをモチーフにしていると思われ、無骨な外見のバイカル族と比べていくらか愛嬌を感じる外見となって、臆病な性格や肉球のついた手足がそういった雰囲気を助長させます。しかし人類を攫って捕食している辺り、人類からは敵なのだろうと言う気もします。
自らの血液を武器にするというクレイム族であるアンブロウはナイブスを追いながら、ナイブスが起こした惑星マリスの虐殺についてべザー族に説明します。それによって生存者が1名いた為に判明した事も分かります。
やがてナイブスとアンブロウは決着を着ける時が来ます。手練同士の闘いですが、手の内を隠していたナイブスが勝ち残ります。しかしその直前、アンブロウは血液を介してナイブスの記憶である虐殺の一旦を垣間見ます。それは一方的な虐殺とはほど遠い光景でした。そもそも1人対数億人なので、ある意味当然と言えます。そして事件の黒幕によって虐殺事件に仕立て上げられたと思われ、追われる側であったナイブスもこの黒幕を追う立場であった事が分かります。
その後アンブロウの親友であったというグール族の戦士「メロウス」やその盟友である人類の宇宙海賊「スピッドロウ」らに捕まりますが辛くも脱出して、最後の舞台へと話は進みます。
追跡劇の末
そして最後の舞台となるのは砂漠の惑星『エイジア』でナイブスは「ダロフィー」という少年と出会います。
流罪にされた人類と鋼虫と呼ばれる巨大な昆虫以外に生物が存在していないような過酷な惑星で、ナイブスは自分が追っていた黒幕と再会します。
ある目的を持って動く黒幕とそれを止めようとするナイブス、ある秘密を持っているダロフィー、それらに加えてメロウスやスピッドロウらもそれぞれの思惑を持って動き、最終局面に向かっていきます。
そしてナイブスと黒幕の因縁に終止符が打たれます。
まとめ
本作は過酷な惑星の様子やそこで苦しむ人類の姿などが描かれています。
作中では散々弱い種族と言われる人類ですが、終盤ではその過酷な環境に対応出来るようなある進化の萌芽らしきものが見えています。
新たな母星となりえる惑星もあり、人類の行く末に希望を持たせる結末に余韻を感じさせます。