
かつて、炭鉱で栄えた「矢郷島」。現在では巨大な廃墟となった、この無人島を訪れたテレビ撮影班一行。撮影は和やかに進み、無事に帰れるはずだった――AD・佐倉の携帯に、謎の「ミイラ男」から「お前たちは全員殺される」という「予言」が送られてくるまでは――。
GoogleBooksより抜粋
真夏の無人島を舞台に繰り広げられる、異色ホラーミステリーのコミカライズ!
目次
DATA
- タイトル:時間島
- 作者:椙本 孝思/松枝 尚嗣
- 刊行年:2014年
- 巻数:全1巻
- 出版社:アルファポリス
- レーベル:アルファポリスコミックス
概要
本作は椙本 孝思氏の同名小説をコミカライズしたものです。
原作小説、漫画ともにアルファポリスで公開された後に出版された様です。
廃墟の島を訪れた撮影クルー
本作の舞台となるのは矢郷島という離島です。かつて金鉱で栄えたという島ですが、現在は軍艦島よろしく全島が廃墟化している模様です。
その矢郷島に廃墟探訪を扱うTV番組撮影班が訪れます。人数はスタッフ5人に出演者とマネージャーが4人で総勢9人と、1巻分と考えると結構な人数で、その分退場するペースも早いと予想出来ます。
その撮影スタッフADの「佐倉 準」は同じスタッフの1人に誘われて坑道を探索した際、会社から貸与された携帯を地底湖に落としてしまいます。これは弁償の可能性もありそうで、バイトで勤めている準は頭を抱えそうですが、これが全ての始まりでした。
実はこの地底湖は忘れな池と呼ばれていて、落ちた人や物は5年後の志摩にある海岸へ飛ばされてしまうのだとか。その為矢郷島は時間島とも呼ばれているとされます。5年後に飛ばされるというのは如何にもといった設定で分かりますが、志摩の海岸という辺りは何故という疑問が無くもありません。
その後落とした携帯を私物携帯で代用していた準の元に、落とした携帯からのメールが送られてきます。
メールには動画が添付されていて、その動画には顔を包帯で覆った人物が映っていました。
その人物によればこの後矢郷島付近で地震が起き、その地震をきっかけに撮影班は次々と殺害されて行くという衝撃的な物でした。包帯の人物だけは辛うじて生き残ったものの、この様な姿になってしまったとの事です。
そして包帯の人物は言います。惨劇を止める為に撮影班の中にいる犯人を見つけろと。
巻き起こる惨劇
動画を見た準は他のスタッフによるイタズラだろうと判断します。もっともいきなり信じるのも無理があると言え、判断そのものは常識的と思えます。
しかしその後廃墟内で撮影準備中、実際に地震が起こります。
一旦廃墟から抜け出した後、行方不明になった出演者を探した準たちが見たのは変わり果てた姿でした。
一見壮絶な死に様に見えますが、地震による床の崩落に巻き込まれた為の事故死とも見られる状況です。しかしある者はこの島は呪われているのではと言い、またある者は事故死に疑問を抱いている様子です。
しかし死者が出たにも関わらず撮影は続行されます。そんな中再び動画が送り付けられ、包帯の人物が地震を当てたのが5年後にいる何よりの証拠ともっともな出張をした上で、準に対し未来を変えろと力説してきます。
その後準は出演者の1人でアイドル「青葉 なお」と会ったため、会話していた所にスタッフの1人が海に転落したと見られ行方不明と伝えられます。この時点ではまだ事故とも事件とも取れる状況でしたが、別の事件が起こり険悪な雰囲気になった晩、殺人事件が起こりますが犯人は分かりません。その為皆が疑心暗鬼になりながらも島からの脱出を図ろうとするも、犠牲者は増えていきます。
果たして準は包帯の人物が言う様に凄惨な未来を変える事が出来るのでしょうか。
意外性
本作は基本的に主人公である準の視点で話が進んで行きます。あいがヒロインと言えますが、最初見た時は早い段階で退場しそうという印象を受けました。しかしその様な事は無く本作のヒロインという立ち位置に収まります。
この手の作品は主人公やヒロインと思われたキャラが序盤で退場する事もありますが、本作はそういった事は無い様に感じられます。もっとも最後まで生き残れるという保障はありませんが。
また序盤は比較的緩やかなペースで進みますが、折り返し付近で起こる殺人以降、一気に被害者が増えていきます。これはいよいよ殺人鬼が牙を向いたという事でしょうか。しかし個々の事件を見ると1人の人物による犯行なのかという疑念もあります。
そんな本作で気になる事項として包帯巻いた人物の正体についてでしょう。中盤で明らかになるこの人物の正体は意外性があると言えなくもないと言えそうです。
また最終盤では一連の事件についての真相が分かるようになっていますが、こちらもいくらか意外性がある様に感じられました。ただ計画通りに行くかは運任せ要素も強く雑な印象を受けます。
まとめ
本作は少しおどろおどろしい印象を受ける表紙とは少し異なり、忘れな池というSFっぽい要素があるサスペンスといった所でしょうか。
それは次々登場人物が退場して行くにも関わらず、ホラーやグロ描写が非常に少ないという事もあるかも知れません。退場場面なども含めて描写はあっさり気味なのでスラスラと読めてしまいますが、その反面表紙ほどのインパクトは感じ難いと言えるかも知れません。
また紹介文ではホラーミステリーとありますが、黒幕的な真相を論理的に当てるのは難しいのでは無いかと思われ、ミステリ要素は少なめと感じました。