【漫画】仮面病棟【感想】

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DATE

  • タイトル:仮面病棟
  • 作者:知念実希人(作)/NICOMICHIHIRO(画)
  • 刊行年:2020年
  • 巻数:全3巻
  • 出版社:実業之日本社
  • レーベル:リュエルコミックス
6 out of 10 stars (6 / 10)

療養型病院にピエロの仮面をかぶった強盗犯が籠城し、自らが撃った女の治療を要求した。
先輩医師の代理で当直を務めていた外科医・速水秀悟は事件に巻き込まれることに。
彼は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知る――。

LINEマンガより抜粋

概要

本作は医師でもある作家知念実希人氏による医療ミステリーで、『病棟シリーズ』と呼ばれシリーズ累計110万部突破している作品群の第一作をコミカライズしたものなっています。漫画としてはLINEマンガにて2019年から2020年に連載されています。
原作小説は2014年に刊行され2020年に実写映画化され、オーディオブックも刊行されています。

強盗犯が侵入した病院

本作は主人公である外科医「速水 秀悟」が療養型病院である田所病院で当直勤務を開始する場面から始まります。秀悟は元々この日当直に入る予定では無かったそうですが、本来当直予定だった医師の都合が悪くなり、代わりに入ったのだそうです。院内に入った秀悟の感想などを見ると、どうやら彼はこの田所病院に常勤している訳では無く、常勤先と別にパートタイム当直医として務めていると思われます。
そして看護師「東野 良子」と「佐々木 香」に挨拶しつつ当直室に入った秀悟はテレビのニュースにて近場でコンビニ強盗があった事を知ります。
それから宿直室でのんびりしていた秀悟がうたた寝しだした頃、ガラスが割れるような音で目が覚めます。それから間もなく良子からの呼び出しで病室が無い1Fへ向かった秀悟はピエロの仮面を被り、銃を持った男が院内へ侵入しているのを見るのでした。いかにも銀行強盗犯は近場の病院へ逃げ込んだといったシチュエーションです。そして強盗犯は自分が撃ったという若い女性「川崎 愛美」を連れてきていて、彼女が死亡すると罪が重くなるといった様な理由で治療を要求します。刑罰の事まで考えるとか、捕まる事が前提になっている気がしますが、それなら何故強盗したのかと思ってしまいます。

最初の違和感

秀悟は強盗犯の要求に従い、愛美の治療を行う事になります。もっとも要求されなくても目の前にいる重傷者を外科医として放って置けないのではという気もしますが。
ただかつて精神病院だったという療養型病院である田所病院に十分な治療を行えるだけの設備があるかどうかという点を秀悟は懸念していました。
しかし手術室に入った秀悟が見たのは、彼の懸念を問題にしない程の立派な設備でした。お世辞にも大病院とは言えない外観で、直前に秀悟が寂れた療養型病院と思っていた病院に不釣り合いな立派な設備。戸惑った様子の秀悟は勿論、読者にも分かりやすい違和感として見せてきます。
しかし強盗犯は愛美の治療が終わった後も病院に居座ろうとしたため、香が反発します。更にそれまで姿を見せていなかった院長「田所 三郎」が背後か凶器を持って殴り掛かるもあっさり気付かれ威嚇射撃が足を掠めるという有様です。
そういった一悶着の後、強盗犯は病院唯一の出入り口に向かう階段に設置されていた鉄格子を閉鎖し、職員を脱走して通報する事を防ぎます。その上で朝までには病院を去るが、その前に捕まりそうになったら院内にいる人間を皆殺しにした上で自殺すると宣言するというまでが序盤の流れとなっています。
もっともこの様なシチュエーションで朝には退去すると言われてもあまり信じられず、生きた心地がしなさそうではあります。
展開そのものはなかなか衝撃的かつ緊張感があると言えるでしょう。

強盗犯の狙い

そういった経緯でクローズドサークルと病院内で、秀悟は愛美と親密な雰囲気となって行きます。
その一方でスマホは没収されたものの、秀悟が固定電話からの通報を試みようとするも、コードが切断されていたり、入院患者に謎の手術痕が見つけるも院長に遠ざけられたりといった違和感のある出来事が起きます。
いかにも院長たちは裏で何か行っていると言わんばかりであり、強盗犯がこの病院に来たのも単に逃亡先で偶々といった訳で無く、院長たちの行いに関連した別の目的があるのでは無いかととも思われます。
当然秀悟もその様に感じて動き出すも、突如現れた強盗犯が愛美を連れ去ったり、ある人物が他殺体となって発見されたりとそれどころではないと言った事態になり、ストーリーは終盤へ移ります。
そして終盤、秀悟は病院の裏に隠された顔を暴き、強盗犯の本当の目的も白日の下に晒します。
ただこれら、特に前者については予め読者にも分かるようになっています。
そして解決したかに見えましたが破局に至ります。

まとめ

本作は病院での立て籠もりを舞台としたミステリーとなっています。
舞台となる病院の暗部を描く事が中心となっていると言えます。しかしミステリーとして何を求めるのが主眼か考えた場合、動機探しであるホワイダニットに該当するのでは無いかと思いました。強盗犯たちが何故病院の暗部に手を着けようとしたのかといった点があります。
また主要な登場人物が皆報われない印象を受ける物哀しい結末であると感じました。