目次
DATA
- タイトル:劇場版 艦これ
- 公開年:2016年
- 時間:91分
- 制作:ディオメディア
- 監督:草川啓造
- 脚本:花田十輝、田中謙介
海を蹂躙する謎の敵 「深海棲艦」。
公式サイトより抜粋
在りし日の艦艇の魂を胸に抱き、 その脅威に唯一対抗できる 「艦娘」 たち。
艦娘たちの拠点「鎮守府」の存亡をかけ双方が激突した「MI作戦」では 「特型駆逐艦 「吹雪」の活躍もあり艦娘たちが勝利を収めたが、 その激戦以降、彼女たちの戦いはますます熾烈なものとなっていた。
MI作戦の成功を足がかりに、鎮守府の戦力は南方の海域に進出。 敵泊地の攻略を続け、 その戦域を少しずつ拡大していた。
その中で新たな前線基地に集結し、次の作戦に備える艦娘たち。 戦いを経て成長し、 そして新たな戦力も加わり続けて作戦に成功を収め 意気上がる彼女たちだったが、目標とする海域に重大な異変が発生していることが判明する。
そこで艦娘たちを待ち受けるものとは――。

概要
本作は2013年からDMMゲームズでサービスしているソーシャルゲーム『艦隊これくしょん』の劇場版アニメです。
大戦時の軍艦を擬人化した『艦娘』が沈んだ艦船の怨念である『深海棲艦』と戦う内容となっています。
本作に先立って2015年冬にTVアニメが放映されています。
そしてTV放送版に引き続き、駆逐艦「吹雪」「睦月」「夕立」を中心にして話が進行します。
艦これTVアニメの続編
本作は先述の通り、TVアニメ版の続編となっています。TVアニメ版は当時視聴していましたが、序盤の3話で駆逐艦「如月」を史実同様に轟沈させて一時的にシリアスな雰囲気にしたかと思えば長続きせず、その後もシリアスなのかコミカルなのかどっち付かずな雰囲気に終始している様に感じられました。
更に如月轟沈で艦娘が轟沈する世界観なのかと視聴者を戦々恐々とさせたものの、結局轟沈したのは如月だったため、彼女は視聴者にスリルを与えるために轟沈させられたとも捉える事が出来ます。
そういった事から全体的に微妙というのが視聴した当時の感想で、実際ネット上などでの評判も芳しくなかった様に感じられました。
そしてそれから制作された劇場版は如何にといった所でしょうか。
戦場は南へ
冒頭、第一次ソロモン海戦を再現した様な海戦が行われます。重巡洋艦「鳥海」ら第八艦隊などが深海棲艦の艦隊と交戦し、史実通り鳥海が探照灯で敵艦隊を照らして標的となって被弾するなどするも勝利を収めます。史実では重巡洋艦「加古」が帰投中に轟沈の憂き目にあっていますが、本作では無事帰還しています。
主人公吹雪は水雷戦隊の一員として軽巡洋艦「川内」らと一緒にある海域に差し掛かりますが、その時声が聞こえたかと思えば海面が赤く染まって行きます。この頃戦艦「金剛」らが敵の飛行場と思しき拠点を砲撃し損害を与えた頃でした。
如何にも敵の仕業であろうという禍々しい雰囲気の現象ですが、そんな中海中からかつて轟沈した如月が一糸まとわぬ姿で現れたのでした。
艦娘たちの泊地に迫る危機
そうして如月は艦娘たちの前線拠点であるショートランド泊地へ連れて行かれます。轟沈したはずなのに生還した訳ですから当然と言えますが、中でも姉妹艦である睦月の喜びは計り知れないと言えます。
しかし如月が生還した事についての詳細については、TV版に引き続き実質的な指揮官となっている秘書艦戦艦「長門」など一部の艦娘では『D事案』として機密事項とされている様です。
そして時折思う所がありそうな様子を見せる正規空母「加賀」など不穏な雰囲気も見えます。
しかしそんな折、敵の大規模な空母機動部隊が発見されます。それと同時期に赤い海面についていくつか判明しますが、その周辺ではあらゆる生命が死滅してしまうという事と、艦娘の艤装も腐食させてしまう事、またその中心は『鉄底海峡(アイアンボトムサウンド)』と判明しますが、先刻発見された空母機動部隊も鉄底海峡へ向かっている様です。
さらに数日と経たない内に泊地へ到達してしまう様です。
もしこの赤い海面を解消出来なければ、艦娘たちは現在の前線拠点を放棄しなくてはならなくなってしまうという事になります。
またそんな中長門は軽巡洋艦「夕張」から吹雪だけが赤い海面の影響を受けてなかった事を伝えられます。
これはいわゆる主人公補正と言えそうですが、こうして明らかにするからには何かしら理由があるのだろうという気がします。
それと平行して如月に関する話も進んで行きます。療養している如月に起こる異変。そしてその末路がどうなるか、吹雪や睦月たちは密かに知らされます。
そういった事を経ても睦月は如月の傍にいようとします。
しかしそんな中鉄底海峡突入作戦が開始する事が伝えられます。泊地にいる艦娘たちの総力を結集する作戦で、空母機動部隊で敵空母機動部隊を誘い出し、戦艦による主力部隊とそれを護衛する水雷戦隊による艦隊で鉄底海峡に突入するという物です。
この作戦で吹雪は睦月らともに戦隊「大和」の護衛として参加する事になります。
そうして作戦が始まりますが、突入部隊を待っていたのは苦難の道でした。
果たして作戦は成功するのか、吹雪や如月の運命や如何にといった所でしょうか。
作画、雰囲気、戦闘描写
作画に関しては劇場アニメという事もあって良く出来ている印象を受けました。
特に戦闘描写は頑張っている様に感じられ、最初の海戦からTV版と比べて躍動感が増している様に感じられました。水上スケートなのは変えようが無いのか相変わらずですが、腕や足の動きがついていて、棒立ちでは無いという事です。
もっともこれは移動中の事で、戦闘となれば砲撃などといった攻撃をしなくてはいけませんので、そうも言っていられませんが。
また本作では航空機によるドッグファイトの描写もあります。原作でもイラストで登場しユーザーから妖精さんと呼ばれているキャラクターがパイロットとして戦闘機で深海棲艦側の航空機と戦闘を繰り広げる描写はTV放送版には無かった描写と言えそうです。
そして終盤の戦闘は徐々に絶望的な雰囲気となって行きます。それは良いのですが、その過程で大和が取ったある行動は疑問が無くもありません。もっとも吹雪が作戦成否を握る鍵と考えていたとかであれば納得行きます。
また絶望的ななかで主人公たち駆逐艦の奮闘が目に付きますが、特に夕立は改二という事もあって目覚ましい活躍を見せます。
もうひとつ雰囲気という点ではシリアスとコミカルのどっち付かずだったTVアニメの反省を踏まえてかシリアスに全振りとなっています。もっともTVアニメと劇場版の尺の違いという事もありそうではあります。
まとめ
本作はTVアニメの評判が芳しくなかった後の劇場版として製作されています。
そんなTVアニメの大きなマイナス要因として如月の扱いがあると思っていますが、本作においてはその点は解消したといって良いでしょう。
おそらく本作における艦娘と深海棲艦の関係を描くための轟沈だったのでは無いかと推測されますが、もう少しやりようがあったのでは無いかと思ってしまいます。
本作はアニメ作品としての完成度はTVアニメと比べて大きく上回っていますが、艦これアニメに何を求めているかで評価が変わって来そうです。カレー回の様なコミカル、日常描写を求めている方には残念かも知れませんが、シリアスや戦闘描写を求めている方には納得出来る完成度と言えそうです。
余談ですが、この記事を書いている時点で放送中断中の『「艦これ」いつかあの海で』が本作にどの程度迫れるかという点も注目したい所です。