【漫画】監禁探偵【感想】

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DATA

  • タイトル:監禁探偵
  • 作者:我孫子武丸(作)/西崎泰正(画)
  • 刊行年:2011年
  • 巻数:全2巻
  • 出版社:実業之日本社
  • レーベル:マンサンコミックス
7 out of 10 stars (7 / 10)

下着を盗もうと女性の部屋に忍び込んだ主人公・山根亮太は、そこで女性の他殺体を発見してしまう。
しかし、彼には警察に行くことができない事情があった…自室に少女を監禁していたのだ。
なぜかその少女と、事件の謎に迫る亮太。はたして犯人は!?

Amazonより抜粋

概要

本作はサウンドノベル『かまいたちの夜』シリーズの脚本などで知られている推理作家の我孫子武丸氏が原作を手掛けたコミックです。2013年には実写映画化もされ、2019年には原作者である我孫子氏がノベライズしています。

安楽椅子探偵ならぬ監禁探偵(1巻)

本作1巻はコンビニでバイトして過ごしている「山根亮太」の視点で進行します。 ある日の未明に亮太はコンビニ常連客である「里見玲奈」のマンションに下着泥棒してから侵入しますが、室内で見たのは玲奈の他殺体でした。 当然ながら亮太は慌てて自宅マンションに逃げ込みますが、そこにいたのは亮太によって監禁されていた少女「アカネ」でした。 下着泥棒、不法侵入、拉致監禁、さらには盗撮とどれだけ犯罪しているのかと思ってしまう亮太ですが、玲奈殺害は行っていないとアカネに訴えます。傍から見れば説得力皆無な光景ですが、アカネは亮太の言い分を何故か信用しアドバイスしたりします。 事情を知ったアカネは監禁されての退屈凌ぎとばかりに玲奈殺害事件の推理を始めます。 とは言えアカネは監禁されていて、情報源となるのは監禁している亮太のみである為、真相に到達するには容易ではありません。 推理しては亮太に裏取りさせ、その結果新たな情報があればそれを基に推理を組み直すという手順を繰り返します。 この進行はミステリーとしては山田正紀氏の風水火那子シリーズを彷彿とさせ、アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』に連なる作品であると感じさせます。

明らかになっていく人間関係

事件が発覚し捜査が行われるにつれ、亮太も刑事の訪問を受けたりします。 亮太からすれば警察と迂闊に接触してしまうと、アカネの監禁がバレて逮捕されてしまう危険性があるという面があります。もっとも読者視点では亮太が監禁で逮捕されても自業自得という感想になってしまいそうですが。 そして事件の犯人が明らかになるまでに亮太周辺の人間関係が明らかになって行きます。 亮太の過保護過ぎる母親などは呆れてしまいましたが。 そしてこれらの歪んだ人間関係は事件の真相にも影響しているのでした。

監禁探偵から入院探偵へ(2巻)

1巻と2巻の時系列関係などは不明ですが、2巻にてアカネは轢き逃げに遭った被害者として病院に入院しています。 何故か犯罪被害に遭いやすい娘の様ですが、これも巻き込まれ型探偵と言えば良いのでしょうか。しかもアカネは轢かれた際の影響か、記憶喪失してしまっていました。 さらにある晩、ナースステーションで新人看護師「桐島いつき」の情事を目撃したかと思いきや、翌朝いつきが落下死体となって発見されます。 PC上に打ち込まれた遺書がありましたが、これは容易に偽装出来るため、自殺とも他殺とも取れる状況です。 そんな中アカネは探偵としての本能故か、入院患者である少年「拓人」や研修医「宮本伸一」など親しくなった人物を通じて情報を集め、真相に迫ろうとするのでした。

『幽霊病院』に潜むもの

この病院は幽霊病院であると拓人はアカネに言います。 そしていつきの死以外にもいくつもの騒動が起きます。 例えばアカネも被害にあった連続ひき逃げ事件。他には幽霊騒ぎも起きます。 それらと並行して、アカネは推理を重ねていきますが、この辺りは1巻と比べると上記を始めとする様々な要素が絡み合っているため、推理を重ねると言う点では1巻と比べて薄味な印象を受けます。そのうえ中には解決の仕方が雑に感じられる要素もあったりします。 その為1巻と比べると、推理が二転三転といった印象は受けにくい様に感じられました。

ヒロイン

ヒロインで探偵役でもあるアカネは本作を語る上で外すことは出来ません。 タイトルからして探偵が主題ですので、探偵役である彼女こそ本作のテーマであるといえなくも有りません。 普段はツインテールにロリータファッションという、目を惹きやすそうな服装をしていることが多いようですが、1巻では監禁されて半分以上は下着姿で過ごし、2巻ではほぼ入院着となっています。 そんな犯罪被害に遭いやすい彼女ですが、聞いた情報を元に直感で組み立てていき、最終的には事件を解決させています。 2巻で轢き逃げにあった際、警察が調べたにも関わらずフルネーム等本名や身元などは判明しませんでした。 そんな正体不明な彼女は気の向くままに動いているのではと思ってしまいます。

まとめ

本作は1巻と2巻で異なる事件の話となっていて、どちらも作品としては楽しめます。 ただミステリとして見た場合は1巻の方が二転三転する推理やそれに伴って明らかになる人間関係の変化などといった点を楽しめました。 2巻は探偵役が轢き逃げに遭う所から始まるというサスペンス風味な展開が特徴でしょうか。 どちらもやや違った味わいとなっていると感じられました。