【邦画】健太郎さん【感想】

2019年 35分

6.5 out of 10 stars (6.5 / 10)

とある町はずれの一軒家で暮らす4人の家族、斎藤家。そこには、血のつながりのない赤の他人、“健太郎さん”が住んでいる。彼を“慕う”というより“崇拝する”斎藤家と、容赦なく奇行を繰り返す健太郎さん。そんな歪に保たれた日常に亀裂が入ったある日、彼は突然“失踪”する。彼はいったい誰なのか。彼の目的は何なのか。一つの“真実”にたどり着いたその時、想像を絶する“絶望”が姿を現す。

Motion Gallery – 映画「健太郎さん」応援プロジェクトより抜粋
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概要

本作は社会の「闇」をテーマに制作されたノンストップのホラーサスペンス短編映画です。当時学生だった髙木駿輝氏が初めて監督を努めた作品だそうで、資金集めにはクラウドファンディング『Motion Gallery』も用いられています。

ある家族と一緒に住む人物

本作は主に、斎藤家が住まう一戸建て住宅内で話が進行します。斎藤家は夫妻に息子と娘が一人ずつと絵に描いた様な核家族ですが、その家には家族では無い男性、「健太郎」という人物が一緒に住んでいて斎藤家では健太郎さんと呼ばれています。
当記事でも作中に因んで健太郎さんと表記しますが、健太郎さんは髭を生やした中年男性といった所です。
冒頭、健太郎さんが斎藤家の面々と食卓を囲み、夕食として出されたパスタを犬食いの様な姿勢で物凄い勢いを持ってがっついて食べる様はインパクトがあります。
ただその冒頭を除くと、基本的には無口で静かに佇んでいる場面が多くを占めます。
そんな健太郎さんに対し、夫妻はややよそよそしい態度を見せ、足を少し引きずっている息子は嫌悪感らしき物を見せ、幼い娘は多少懐いている様に見えるなど家族内でも接し方は様々です。
しかしそもそもの問題として、健太郎さんは何者で何故斉藤家に住んでいるのか。序盤に於いてはそんな健太郎さんと斉藤家の関係が最も気になる点と言えます。

斉藤家と健太郎さんの関係

中盤、斉藤家の健太郎さんの関係がいくらか見えてきます。
どうやら、健太郎さんは斉藤夫妻が運転する乗用車に轢き逃げされた様です。その際、頭部を打ったのか頭から出血して倒れている様子は重体とも見えますが、僅かに意識がある様にも見えます。
その経緯を考えると、夫妻のよそよそしい態度や近所に知られたくない様子も納得いきますし、冒頭の食事シーンでの食べ方は事故の影響であったと判断出来ます。
しかし轢き逃げされたはずの健太郎さんが何故斉藤家に住んでいるのかという点に付いては、依然として謎なままです。
ただ夫妻や事情を知っている息子辺りからすれば、轢いた人物が家にいるのは居心地良いはずが無いでしょう。更に言えば赤の他人が居座っている状況であるとも言えますが、夫妻などは負い目がある為かよそよそしい態度を取るのみという事の様です。

斉藤家の行く末は暗い

いくつかの要因によって斉藤家の雰囲気は悪くなって行きますが、中盤を過ぎた頃のある朝、健太郎さんが姿を消します。その際に健太郎さんは家具をひっくり返して行きますが、誰もその事に気付かなかったんでしょうか。
何故いなくなったのかは気に留めず、安堵した様子の夫妻と息子。そして斉藤家は明るさを取り戻して行きます。こうして見ると健太郎さんがいる時は夜だったり暗めな場面が多めだった気がします。冒頭の印象が強かったからかも知れませんが。とは言え、この間は目に見えて明るい場面となっていますが、不穏な様子も見え隠れします。
しかしそうこうしている内に、いつの間にか健太郎さんが入り込んでいます。呆然とする斉藤妻に対して声を掛ける健太郎さん。健太郎さん喋れたのかと軽く衝撃を受けますが、その直後真相が明らかになる為、更なる大きな衝撃を受ける事になります。真相とはつまり斉藤家と健太郎さんの間に起こった事全てと言えます。それを見た視聴者の内、どの程度が斉藤夫妻を擁護出来るでしょうか。
ラストシーンは斉藤家の暗い前途を現しているように感じられました。

まとめ

本作は短いながらもしっかり作られた印象を受けます。健太郎さんは終盤まで無口で何を考えているか分からない為、非常に不気味な存在として描かれていますが、終盤にはイメージが変わります。
事故の詳細については伏線が欲しかったというのは尺を考えると酷かも知れませんが、健太郎さんが娘に対して視線を向けたりしていたのがそうだったと言えなくもない気がします。