目次
DATE
- タイトル:君が肉になっても
- 作者:とこみち
- 刊行年:2020年
- 巻数:全1巻
- 出版社:集英社
- レーベル:ヤングジャンプコミックス
ある日、ひな子は路地裏にて、大きな肉のかたまりを目撃する。同じ日、真希は奇妙な夢を見る…。これは夢なのか、それとも現実か。そして事態は悪化していく…! グロテスクで切ない、女子高生の青春ホラー!
Amazonより抜粋

概要
本作はweb上で掲載されていた漫画の単行本化作品です。複数のweb媒体にて掲載されていますが、初出については不明です。
また単行本化に伴って本編の最終回に当たる『焼肉』と短編マンガ『写真』が書き下ろしとして追加されています。
眠ると肉塊の怪物になる少女
主人公である女子高生「須田 ひな子」はある晩、路地裏で謎の肉塊が生き物を食べている場面に遭遇します。その怪物の体についていたピアスに見覚えがあったひな子は翌日、登校してきたクラスメイトの「宮野 真希」にスマホで撮った写真を見せつつ尋ねた所、肉塊になって人を食べる夢を見たとの返答を得ます。
ガラスに映った自分の姿が肉塊の怪物となっている事を見た後、空腹を感じて衝動のまま付近で驚いていたサラリーマンを襲って食べる夢を見たと言います。
無事登校した事からも、単なる悪夢と感じるのは当然と言えますが、ひな子もその現場を見たとなると話は違ってきます。
そしてその夜、偶然の産物かひな子の前に再び肉塊が現れます。今回は相対している事もあって肉塊がひな子を認識した事から、肉塊が真希だとひな子は確信します。
真希は空腹と衝動に耐えようとするも耐えかねていると思われ、ひな子に対して逃げる様言いますが、ひな子は聞く耳持ちません。
やがて耐えられなくなりひな子を食べようとするも直前で口を閉じ、ひな子を放り投げます。
さらに猫が通り掛かった事で真希の衝動はそちらに向かい、ひな子は助かりますが、猫が犠牲になってしまいました。
翌日学校で会った2人は、この事について寝たら肉塊になるという事と生き物を生きたまま食べる事で元に戻ると推測します。
しかしそうなると真希は眠る事が難しくなってしまうと思われるのでした。
親密になっていく2人
ひな子は明るく人付き合いが良いといういわゆる陽キャで、真希は口数が少ないいわゆる陰キャです。
お互い同士で正反対だと感じている2人はこの事で親しくなっていきますが、これは真希が肉塊の怪物になるという事を知っているのはひな子だけという秘密の共有もあるのかも知れません。
そんな2人はまず2人して寝ない様にします。寝たら肉塊になるなら寝なければ良いというのは言う程容易でないのは言うまでもありません。
ただ日中なら寝ても問題無い事が判明します。肉塊は日光が苦手とかでしょうか。
しかしそれが分かったその日、油断があったのか校内で肉塊となってしまい、2人の日常は崩壊してしまいます。
真希は警察に出頭しようとしますが、ひな子はそれを止めて人里離れた場所へ移動するのでした。
自分の目的を押し通す主人公と終末へ向かう世界
ひな子という主人公は他人を思いやる気持ちが希薄に感じられます。
真希の事を思いやっているのは彼女に対して好意を持っているためで、目の前で猫やクラスメイトが食われようが、その瞬間はショックを受けたとしても直後には気持ちが切り替わっているという超人的な切り替えの早さと言えます。
さらに学校で真希が元の姿に戻ったのを認めた際の第一声はなぜそれを聞くのかと思わずにはいられなく、真希がクラスメイトを食べてしまった事によるショックやら自責の念やらに対して考慮していないのでは無いかと思われ、サイコパス的傾向があるのでは無いかと思ってしまいます。
そんなひな子が真希が肉塊にならないように勤めていたのは一緒に日常生活を送るためで、それに失敗した彼女はとにかく一緒に過ごす方向へシフトしたものと思われます。
真希の出頭を引き止めたのもそのためと思われますし、人里離れた場所へ移って、当初は山の動物を捕らえられないかと試みるもそれが上手く行かないとなると、良心の呵責とかかなぐり捨てたかの様な手段に出ます。
これらは真希にとっても非情な仕打ちと言えなくありませんが、ひな子にとって一緒に過ごすという目的のためなら手段は問わない事を意味しているといって良いでしょう。
しかし肉塊になる人物が多発したらしく世界は終末に向かっていきます。
このままでは2人もジリ貧である事は明白ですが、ひな子はさほど気にした様子もなく終末の旅を楽しむのでした。
まとめ
本作はゆるい雰囲気のキャラクターからは予想し難い情け容赦ない展開と同じくらい情け容赦ない主人公が特徴と言えます。
一応グロ描写などはありますが、扱っているテーマの割には薄めと言えます。
ただ個人的には主人公ひな子の言動が全体的にやや受け入れがたく、作品全体への印象にも影響しています。もっともその真希に引かれている場面もあるくらいなので好き嫌い分かれる主人公として描かれているのかも知れません。
しかし日常が崩壊し終末に至るストーリーとしては駆け足感はありますが、見どころがある作品でもあると言えます。