目次
DATA
- タイトル:金田一少年の事件簿 File(1)
- 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
- 刊行年:2004年
- 巻数:全1巻
- 出版社:講談社
- レーベル:講談社漫画文庫

名探偵・金田一耕助の血を引く金田一一(きんだいちはじめ)は、幼なじみの七瀬美雪(ななせみゆき)の頼みで演劇部の合宿に参加することになった。だが合宿先となる孤島のホテル「オペラ座館」では恐ろしい事件が一たちを待ちかまえていた――。演劇部の演目「オペラ座の怪人」になぞらえたように起こる凄惨な連続殺人。第1の殺人後、姿を消した謎の男「歌月」。そして部員たちの心に影を落とす、女子部員“月島冬子”の自殺……。一は、この惨劇の真相にたどりつくことができるか!?
Amazonより抜粋
概要
『オペラ座館殺人事件』は『金田一少年の事件簿』最初のエピソードです。
週刊少年マガジンにて1992年45号から50号に掛けて連載されました。
金田一少年最初のエピソード
本エピソードは『金田一少年の事件簿』が連載されて最初のエピソードです。
その為、主人公「金田一 一」と幼馴染みである「七瀬 美雪」の関係性やはじめの問題児っぷりが描かれます。
そういった後で、はじめは美雪が所属している演劇部の合宿に同行し、孤島にある劇場完備のホテル『オペラ座館』を訪れます。
ただこの演劇部は最近自殺した部員がいて、その影響で退部した部員がいたり、残った部員たちにも暗い影を落としたりと、何とも謂わくありげな様子である事が伺えます。
そんな状態なので演劇部では所々ギスギスしながらも合宿を行っていきますが、2日目の朝に女子部員が劇場の照明に押し潰されて死亡し、惨劇の幕が上がります。
演劇部を襲う惨劇
その事件直後、何故か休暇でオペラ座館に宿泊していた警視庁警部「剣持 勇」は登場します。剣持は当初事故として扱おうとしたものの、はじめにワイヤーの切断面を指摘されると、お前を試しただけという意味不明な言い訳をしてから捜査に乗り出します。
それから姿を消した顔面に包帯巻いた宿泊客の存在やタイミング良く悪天候になっていた上に犯人の手により船が流されるなどトントン拍子に話が進んで行きます。
そして3日目の朝、二人目の犠牲者が出た際に稽古していた演目である『オペラ座の怪人』に見立てているという話が出て来ます。
いわゆる見立て殺人という事ですが、その流れでオペラ座の怪人について大筋やオペラ座の怪人が『ファントム』と呼ばれている事が説明されます。ただ本エピソードにおける犯人の怪人名は『歌月』なのが少しややこしい所です。
そういった話を聞いたはじめは本格的に調査に乗り出します。その様子を見て演劇部顧問が美雪に、はじめは普段の成績は悪いものの、入試は過去最高点であった事とIQが180と非常に高かったと説明されます。いかにも能ある鷹は爪を隠す的な印象を受ける設定といった所です。ですがいかにも事情通といった様子で話すこの顧問教師が、どうしてその事を知っているのか気になる所です。
一方はじめは調査に乗り出したものの、なかなか思うようにいかず、そうしている間にさらなる犠牲者が出てしまいます。
怪人出現と解決
3日目の夜、美雪たちの前にファントムの衣装を着た怪人歌月が現れ、悲鳴を聞いたはじめと剣持が追跡する場面があります。
ただここで用いられた犯人が消えるトリックは20世紀初頭から伝わる古典的トリックの為、はじめのみならず読者にとっても大きなヒントになった物と思われます。
そして実際この事を手掛かりにはじめは深夜に調査を行い確信に至ります。
この時、決め台詞である「謎はすべて解けた」が使われ、この最初のエピソードから用いられていたと思うと感慨深いものがあります。
そうした後の翌朝、はじめは小細工した後に推理を披露します。ただ全体的に状況証拠というのが気になりました。決め手となった犯人消失トリックにしろ窓枠は手掛かりでしかなく、やはり状況証拠なので犯人は無理矢理言い逃れが可能だったかも知れません。
ただ犯人は観念してしまい、復讐であった事を告白します。
もっとも本シリーズは大抵復讐絡みなので特筆する事でも無いかと思いますが、しいて言うなら標的になった人物の1人が性格悪すぎたのが原因でしょうか。
まとめ
先述の通り本エピソードはシリーズ最初のエピソードです。
最初という事もあるのか、ミステリとしては古典的トリックを用いていたりと物足りなさを感じます。
もっとも文庫版まえがきによればこの時点では本格推理な漫画としては構想されていなかった様ですので仕方ないのかも知れません。
ただ復讐に燃える犯人や決め台詞の一つなどシリーズを通しての要素はおおよそ出来ていたと言えます。