目次
DATA
- タイトル:金田一少年の事件簿 File(4)
- 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
- 刊行年:2004年
- 出版社:講談社
- レーベル:講談社漫画文庫

魔術的な密室殺人・学園七不思議殺人事件。不動高校に伝わる学園七不思議。七つ目の謎を解いた者には、災いが訪れるという。その謎を解明した桜樹るい子は無惨にも「放課後の魔術師」に殺されてしまう。
講談社コミックプラスより抜粋
概要
『学園七不思議殺人事件』は週刊少年マガジンにて1993年24号から33号に掛けて連載されました。
不動高校校長への脅迫状
本エピソードは旧校舎解体の建て替え行おうとしている不動高校校長に対し、『放課後の魔術師』と名乗る人物から脅迫状が届いている場面から始まります。5通目という事でイタズラで済ませて良いものかと悩みそうなレベルだと思われますが、校長はあくまで悪質なイタズラという認識の様です。もっとも創立祭を間近に控えていて、事を大きくしたいくないという思惑も見て取れます。
一方「金田一 一」はミステリー研究会(以下ミス研)会長「桜樹 るい子」の色仕掛けめいた勧誘に乗せられた事をきっかけに参加する流れとなり、幼なじみの「七瀬 美雪」も一緒に参加の流れとなります。このミス研はミステリー作家としてデビューしているというも常に上から目線の「真壁 誠」や常にビデオカメラを回している「佐木 竜太」などといったクセの強い面々が集まっています。
そんな面々が集った会議の席上で会長桜樹は創立祭に向け、校長に脅迫状を送りつけている放課後の魔術師が何者であるか突き止めようと提案し、それで決まったかの様な動きとなります。ちなみに放課後の魔術師は七不思議全てを知った者を殺すと言い伝えられている模様です。
旧校舎で起こった惨劇
その晩自宅で桜樹より渡された不動高校七不思議についてまとめたレポートを読んでいたはじめ。
その時地震が起きた事をきっかけにして、部室にいた桜樹はある事に気が付き、はじめを呼び出します。しかしはじめたちが到着するより先に秘密を知った桜樹は放課後の魔術師によって殺害されてしまいます。
夜の旧校舎にやって来たはじめやミス研の面々が見たものは仮面を被った人物が桜樹の死体を前に謎の儀式を行っている光景でした。しかしはじめと守衛が現場に踏み込んだ時は儀式の跡形すらありませんでした。
この一連の騒動に対して、結論が出ないまま解散した様に見える一同。犯人以外は桜樹が死んでいる事を確かめた訳では無いため、通報するのは躊躇われたのかも知れません。
もっとも翌朝には同じ場所に死体が吊り下げられていたため、「剣持 勇」警部率いる捜査陣がやって来る事になります。
そうして剣持と一緒に捜査を行うはじめ、旧校舎の過去、七不思議の謎、過去に行方不明となった女子生徒などといった要素も絡んできますが、はじめに対抗意識を燃やす真壁も独自に捜査を行い、さらには部室のワープロに桜樹が残したと思われる暗号も登場します。ただこの暗号は当時と比較するとひと目見て何となく解法が分かるという方は多いのではという気がします。
さらなる犠牲者と忍び寄る犯人
しかし捜査はなかなか進まず、ミス研のメンバーがまたもや犠牲になります。2人目も桜樹と同じく七不思議になぞらえた形で発見されますが微妙にズレがあり、はじめは違和感を抱きます。
その後も捜査を行うも絶望に打ちひしがれる様な事態に陥ります。これは校内だからという事があったのかも知れませんが、2人目の犠牲者が出ている以上、油断していたという他無いのではという気がします。その結果一時は捜査を断念しようと考えるも再起したはじめは犯人の見落としをきっかけにして捜査が進展し、やがて放課後の魔術師を追い詰めるべく最終局面に至るのでした。
まとめ
本エピソードはシリーズとして見ると、校内における演劇部という推理ものとしては扱い難くそうなポジションから、ミステリー研究会というより相応しいポジションを用意したと言えます。
そんな本エピソードは七不思議というどこの学校にでもありそうな題材としています。
しかし七不思議という題材から考えてもいくらか闇深いのではと思われる背景を備えています。
また本エピソードで印象的なのは犯人の動機そのものは保身のみというもので、闇深い背景を生み出した組織により難題を押し付けられた末端の末路といった感の悲哀を覚えてしまいますが、殺人に至ってしまった以上、その末路は因果応報と言えるでしょう。
ただ事件発生がこれまでのエピソードと比べて遅いという事もあってか事件そのものはやや薄味な印象もあります。しかしメインとなっている魔術のトリックは意外性などはともかくとしても、幻惑感が印象的と言えそうです。