目次
DATA
- タイトル:金田一少年の事件簿 File(6)
- 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
- 刊行年:2004年
- 出版社:講談社
- レーベル:講談社漫画文庫

忍び寄る殺人鬼の影・悲恋湖伝説殺人事件。
講談社コミックプラスより抜粋
モニターの代役を頼まれ、悲恋湖を訪れた一。しかしメンバーの1人が、無惨な姿で惨殺されてしまう。
奇しくも前夜、凶悪な殺人犯脱走のニュースが流れていた…。
概要
『悲恋湖伝説殺人事件』は週刊少年マガジン1993年45号から1994年5号に掛けて連載されました。
長野のキャンプリゾートを訪れる
本エピソードは「金田一 一」の幼なじみ「七瀬 美雪」がいとこである「橘川 茂」から長野県にある悲恋湖のキャンプリゾート村のチケットを受け取る場面から始まります。茂はリゾートのモニターとして招待されたものの、当日は都合が悪いため代わりに行って欲しいとの事です。
また招待されたのはあくまで茂であるため、代役の男性を立てて欲しいという条件が付いてきます。
そうすると別人が行くと言うのは認められていないという事になりそうです。条件を聞いた美雪はチケットを突き返そうとするも、聞き耳立てていたらしいはじめが代役を買って出ます。単純に茂の代役というだけならはじめ1人でも問題無いと思われますが、結局美雪も同行します。ただ美雪は茂の人となりから何か裏があるのではと勘ぐっている様子です。
そして団体用のバスでキャンプリゾートに向かう途中、はじめ達は不動高校の上級生で、美雪と噂になった事があるらしい「遠野 英治」と会うのでした。
キャンプリゾートを襲う惨劇
キャンプリゾートでははじめに接近しようとする関西弁の女子高生「河西 さゆり」の存在に、美雪と遠野が親しげになっている場面があり、これまでとはやや勝手が違うといった場面が見受けられます。
そして初日の夕食会となりますが、さゆりが酔っている様な描写があり、今では未成年の飲酒などといった様な描写は難しいのではと思ってしまいます。
そんな楽しげな会食のさなか、付近の刑務所から大量殺人犯の死刑囚が逃走したというラジオニュースが入ってきます。
当然これは惨劇の前振りで、外で朝食を摂ろうとしていた所で、ツアー参加者の1人が顔を潰された惨殺死体となって発見されます。
そういった事態が発生した所で、フリーライター「いつき 陽介」が脱獄したという殺人鬼『ジェイソン』に付いて説明します。由来は間違い無く13日の金曜日なスプラッタホラー映画であるその殺人鬼は由来の通りマスクを付けて自らが住んでいる村の住民を13人殺害したと言います。そして被害者の遺体は皆顔が潰されていたと言います。
これにより和やかだったツアーの雰囲気は一変します。犯人はご丁寧に電話線の切断した上にキャンプリゾート村唯一の出入り口である吊り橋を焼き落とします。ただ今回は川を避けて森を抜ければ脱出は可能な様で完全にクローズドサークル化した訳では無い様です。
しかし2日目夜に参加者の1人がこんな所にいられるかと典型的な死亡フラグ立てて森からの脱出を図った結果、ジェイソンに屠られてしまいます。
そして遺体発見現場の状況からはじめはこの事件が死刑囚ジェイソンによるものかという点に、疑問を感じている様に見えます。
果たしてはじめはジェイソンの正体を突き止める事が出来るでしょうか。
悲恋湖に消ゆ
その後もはじめに抱きつくさゆりを見た美雪が衝撃を受けた様子で、遠野と一緒に森に入るもハグレて罠に掛かって負傷するとなかなかの急展開となります。
この罠について最後まで説明はありませんでしたが、犯人が仕掛けた物だったんでしょうか。
その後も犠牲者は増えますが、はじめは参加者に聞き込みを行う事でヒントを得、ジェイソンの正体を突き止めます。
そうして言い逃れの出来ない状況へ追い込んでからの解決編となりますが、本エピソードでは暗闇で観衆の正体を徐々に明らかにしてから最期に犯人を明らかにするという、少し凝った作りになっています。
そして明らかになる動機は復讐と言えば復讐かも知れませんが、犯行そのものはほぼ八つ当たりでは無いかと思われる乱暴な物で、犯人は狂気に囚われていたのではと思える程です。
しかしこの状況に置かれても復讐を諦めていない犯人ですが、悪あがきの末悲恋湖上でボートの爆発に巻き込まれて消息不明となります。恐らくこの事件は被疑者死亡という扱いになったものと思われます。
ミステリーとして
本エピソードはミステリーとして見るとミッシングリンクがメインになっていると言えます。
ミッシングリンクとして参加者には2点の共通項があり、はじめはそれに気付いた事によりジェイソンの正体に至ることになります。
それから犯人を言い逃れ不可能な状況に追い込むのは見事と言えます。
まとめ
前回が金田一家からの切っ掛けで始まったのに対し、今回は七瀬家が切っ掛けとなっています。
従来のはじめと美雪に加え、ゲストキャラの遠野やさゆりといったキャラが絡む事ではじめと美雪がお互いに嫉妬するといった様な場面があったりします。
そして犯人であるジェイソンは不測の事態に対して対応する冷静さと強烈な復讐心のあまり八つ当たりで何人も殺害する狂気の様な面を併せ持った人物と言えます。
また本エピソードはシリーズ準レギュラーとなるいつきの初登場となっています。ストーリー中ではかなり身勝手感出して印象は良くありませんが、事件解決後はしおらしくなっているなど今後の布石と取れる面も見て取れます。