目次
DATA
- タイトル:金田一少年の事件簿 File(7)
- 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
- 刊行年:2004年
- 出版社:講談社
- レーベル:講談社漫画文庫
聖夜を染める殺人劇・異人館ホテル殺人事件函館で行われる推理イベントに脅迫状が届いた。担当刑事・俵田の頼みで、一はイベントに同行。だがその推理劇の途中、一の目の前で本物の殺人が発生してしまう!
講談社コミックプラスより抜粋

概要
『異人館ホテル殺人事件』は週刊少年マガジン1994年6号から1994年17号に掛けて連載されました。
函館に呼び出される金田一
本エピソードは「金田一 一」が青森県警の相変わらず階級不明な「俵田 孝太郎」刑事によって函館に呼び出される場面から始まります。都内から北海道の函館とか気軽に行ける場所では無いという気もしますが、はじめは食べ放題の約束を取り付けて幼馴染の「七瀬 美雪」と一緒に函館を訪れます。ちなみに不動高校ミステリー研究会のメンバーである「佐木 竜太」も謎の行動力で付いてきており、助手を自称しています。
そして函館にあるという『異人館ホテル』に呼び出された要件というのが劇団『アフロディア』が函館で公演を行うのに際して、「赤髭のサンタクロース」を名乗る人物から殺害予告を受けたという事だそうです。
また青森県警の俵田刑事に呼び出される先がなぜ北海道なのかという点に付いても、劇団が予告状を受け取った時、青森で合宿していたため、青森県警が通報を受けた事で北海道警察との合同捜査になった事が分かります。
ただ道警側の責任者である「不破 鳴美」警視ははじめたちに対し冷淡と言える接し方をします。彼女は20代後半という若さで警視である事から警察庁のキャリアで道警に出向している事が推測出来ます。要は明智警視と同じ人種と言えるので、ファーストコンタクトも同様になるのであろうと思われます。また合同捜査を取り仕切っているのも彼女と推測されます。
そんな不破警視によってはじめは内装が真っ赤な客室にあてがわれてしまい、さらに佐木と同室になってしまいます。
その合間に劇団では赤髭のサンタクロースによるものと見られる妨害が複数起こっています。ホテルには警官が何人もいるはずなのに、控室が荒らされてしまうのはどうなんだろうと思ってしまいます。
推理劇の舞台から始まる惨劇
その後舞台稽古見学を経て、夜に推理劇の幕が上がりますが、その劇中に劇団長が毒殺されてしまいます。
ただ毒殺自体は観客に知らされず、あくまで劇の演出として流された模様です。もっとも映画ならともかく、舞台で血を吐くというのは迫真過ぎるのでは無いかと思われますが。
そうしてはじめも調査を開始します。俵田刑事がはじめを呼んだのは、事件を防ぐというよりは事が起こった時の備えだったのかも知れません。
そしてホテルのオーナーから赤髭のサンタクロースが、かつて赤い客室を貸切っていた宿泊客のあだ名である事を知ります。ただ彼自身は既に故人であるそうなので、犯人はそのあだ名を勝手に名乗っているという事になります。
さらに劇団について調べ、今回の劇に参加しているメンバーのほとんどに団長を殺す動機があるらしい事を知りますが。
しかし事態は悪化し他のメンバーが犯人によって殺害されてしまいます。その少し前にその団員が犯人を脅している様な描写がなされているため、口封じ目的の犯行と見ることも出来そうです。
狡猾な犯人の正体を暴く
2人目の犠牲者が出て程なく、はじめは犯人の罠に掛かり佐木を殺されたばかりか、その殺害容疑で逮捕されてしまいます。はじめは自称とは言え助手を犯人の手に掛けられてしまった事に打ちひしがれます。
しかしすぐに窮地を脱するべく動き出しますが、真犯人が名乗りを上げ自殺したとしてはじめは解放されます。
しかし自殺したとされる人物が犯人と思えないはじめは、毒殺事件の重要な手掛かりを掴んだために殺害されたという事そのものを突破口にして犯人に迫っていきます。それに関して小道具関係で美雪から大きなヒントがもたらされますが、これは元演劇部という設定があっての事でしょうか。
そして犯人の正体を掴んだはじめは推理を披露するのに先立って、中止になった推理劇解決編を関係者だけで行われ、結果犯人をあぶり出す事に成功します。ただこの際配役の穴埋めで美雪、不破警視、劇場のオーナーが代わりに入るのですが、他の2人が台本を見ながら演じているのに対し美雪は台本を見ずに演じているのはさすが元演劇部といった感想でした。
そうして行われる解決編でトリックが明らかになりますが、本作でいくつか用いられているトリックはいずれもシンプルな物ですが、密室トリックなどは見せ方が上手いという印象でした。
まとめ
俵田刑事、佐木が2度目の登場となった本エピソードですが、残念ながら佐木は退場となってしまいます。
しかしこの後同じ役割を持つ弟が登場し、シリーズの準レギュラーとして登場し続けた事を鑑みるとこの『佐木1号』の退場は早すぎたのでは無いかと思います。
また本エピソード最後の事件に関する動機や面会から始まるラストシーンなど非常に後味の悪さを感じさせるエピソードと言えます。