【漫画】金田一少年の事件簿 File(8)首吊り学園殺人事件【感想】

  • タイトル:金田一少年の事件簿 File(8)
  • 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
  • 刊行年:2004年
  • 出版社:講談社
  • レーベル:講談社漫画文庫

子守唄は殺しの調べ・首吊り学園殺人事件 有名予備校・四の倉学園に入学した一は、学園で起こっている奇妙なイタズラの捜査を頼まれる。そこに流れる子守唄の調べが、一を連続殺人の舞台に誘っていく。

講談社コミックプラスより抜粋
7 out of 10 stars (7 / 10)
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概要

『首吊り学園殺人事件』は週刊少年マガジン1994年19号から1994年31号に掛けて連載されました。

自殺が相次ぐ予備校が舞台のエピソード

本エピソードは「金田一 一」が悲報島事件の時と同様に、母親と幼なじみ「七瀬 美雪」に唆されて予備校『四ノ倉学園』へ入学志願する場面から始まります。美雪は同じ様な手口に乗せられてしまうはじめの様子に呆れている様に見えますが、例によってはじめの母に頼まれてはじめに同行します。
学園に到着したはじめたちは以前から通っているという旧友「千家 貴司」と再開しますが、ほぼ同時に女生徒「森 宇多子」による首吊り自殺未遂が起こります。更にその直後千家から首吊りに慣れてしまっているという発言や、美雪が監獄の様だという感想をこぼすなど開始10ページかそこらで適度に不穏な雰囲気を醸し出している様に感じられます。
その後講師『浅野 遥子』と面接したはじめは千家から聞いたという推理力を見込まれて、入学を認める代わりによる学園内で起こっている悪質な悪戯の犯人に仕立て上げられそうなので真犯人を突き止めて欲しいと依頼されます。
そうしてはじめが学園の講義を受ける事になった傍で「地獄の子守唄」を名乗る犯人の悪戯は続き、やがて殺人事件へ至ります。
果たしてはじめは犯人を突き止める事が出来るでしょうか。

闇を抱えた予備校

この学園では少なくとも2年間で7人もの生徒が首を吊っていると千家は言います。その為学園は首吊り学園という不名誉なあだ名を持っている様です。そんな有様で学園の運営に支障無いのかとも思いますが、学園は予備校としての実績は十分であるため、入学志願者は後をたたない模様です。
そして前年に首を吊って亡くなったという生徒「深町 充」の死が千家や森に影を落としているのが見て取れます。序盤に首吊り死体となった生徒が出てくると千家は死亡した生徒は深町をイジメていたグループの1人であったと言い、森は深町の呪いであると言います。そして千家は深町に対するイジメを見てみぬふりした自分も同じ様な目に遭うのでは無いかと怖れている様子が見えます。更に学園の管理人は自殺した生徒は10年で20人以上に及ぶとし、戦後間もない頃に建物で起こった事件に由来する呪いであると言います。
それだけに留まらず学園のある一室に飾られた深町の絵に描かれた少女は髪が伸びていっているなど学園の闇やオカルト要素が投下されていくという展開となっています。

狡猾な犯人との対決

本エピソードの事件はいくつものオカルト要素に彩られていますが、言うまでもなく地獄の子守唄を名乗る犯人によって引き起こされたものです。そして当然ながら面接にて、はじめに調査依頼された悪質な悪戯も犯人による前振りであったと言えます。イジメグループメンバー最初の首吊り事件により、はじめに調査依頼した浅野が事情聴取のため「剣持 勇」警部らによって連行されてしまいます。真犯人の目論見通りかと調査を開始するはじめですが、なおも犯人による首吊り事件は続きます。
果たして犯人は何者なのか、対象からいって深町の死が発端である事は間違い無いように見えます。そうして調査を続けるはじめは狡猾な犯人の罠に掛かりかけるも、犯人を追い詰めて行きます。解決編では犯人に対して複数の物証を突きつけるなど追い詰め方も念を入れている様に感じられます。

まとめ

本エピソードの事件は一種の見立て殺人と言えます。首吊り学園と呼ばれるほど首吊り自殺者が多発する異様な予備校。そして実際に呪われているかの様な建物の来歴、その呪いとされる物の発端である事件に関わっていた子守唄。そしてもう一つ深町が描いたという裸婦像のタイトルも子守唄である事から犯行の重要な要素として子守唄が用いられたと思われます。
そしてその絵画に呪いと扱われていていたオカルト要素。その真相が本エピソードの締めくくりとして描かれる余韻が印象的と言えます。