【漫画】金田一少年の事件簿 File(10)金田一少年の殺人【感想】

見えざる敵の残虐な罠・金田一少年の殺人!新作出版権を賭けたゲームの開始直後、人気作家の橘五柳が何者かに殺害された。そして、その現場で目撃されたのは、凶器を片手に立ち尽くす、一の姿だった……!

講談社コミックプラスより抜粋
  • タイトル:金田一少年の事件簿 File(10)
  • 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
  • 刊行年:2004年
  • 出版社:講談社
  • レーベル:講談社漫画文庫
8 out of 10 stars (8 / 10)
スポンサーリンク

概要

『金田一少年の殺人』は週刊少年マガジン1994年47号から1995年11号に掛けて連載されました。
本編10回目のエピソードとなっています。

暗号解読から始まる事件

本エピソードは主人公「金田一 一」がフリーライター「いつき 陽介」からある依頼をされる場面から始まります。
それは人気ノンフィクション作家「橘 五柳」の誕生日パーティで次回作の出版権を賭けた暗号解読ゲームが行われるため、解読して欲しいというものでした。
どうやらいつきは付き合いのある出版社からの依頼ではじめを紹介した模様ですが、はじめを煽ったりする事で参加に同意させます。そしてはじめはゲームが行われるパーティへ参加するため、いつきと幼馴染「七瀬 美雪」を伴って長野県軽井沢を訪れます。
そしてパーティはゲームの効果あってか出版社はもちろんの事、マスコミ関係企業も参加と盛況な様子を見せています。
そういった中で暗号が公開されますが、はじめはひと目で分かった様子です。確かに公開された暗号自体は色々試している内に解法は分かりそうな物で、それほど難しく無い印象を受けます。
ただ暗号が示す場所に次回作のデータを、フロッピーディスクという時代を感じる媒体に入れて隠したそうですが、公開された暗号は隠し場所を直接示す物ではありませんでした。
またパーティ開始間もない頃に、はじめの助手を自称していて『異人館ホテル殺人事件』で犠牲になった「佐木 竜太」の弟である「佐木 竜二」が現れます。竜二は一見竜太と瓜二つですが、双子では無く年齢はひとつ下である様です。

殺人犯の濡れ衣を着せられる

はじめはパーティの最中、美雪が酔払った橘にセクハラされた事に腹を立ててイタズラで仕返しします。
しかしそのイタズラが橘の秘密を露見させるというやや過激な物だったために橘を激怒させ、いつきやはじめに依頼した出版社との絶縁を突きつけられます。
そのためいつきたちから謝罪する様言われたはじめは、パーティ後橘の書斎へ赴きます。
しかしそこではじめは事件に巻き込まれるのでした。
佐木と橘家使用の1人「花村 棗」によって事件が発覚した際、書斎には橘の撲殺死体と凶器を手にして立ち尽くしているはじめだけでした。
オマケに別荘別館にある書斎へは、はじめの足跡だけがついているという事を前もって佐木が強調しています。
そのため通報を受けてやって来た長野県警の「長島 滋」警部によって逮捕されてしまいます。もっともはじめが逮捕されるのは初めてでは無く、異人館ホテル殺人事件以来となります。
そんな状況と言えども主人公で探偵役のはじめが捕まっている訳にもいかず、護送中に早々と脱走します。
そうして真犯人を見付けるため動き出したはじめですが警察はもちろんの事、はじめを陥れようとする『見えざる敵』が追跡していました。

逃走と追跡

まず橘は暗号解読ゲーム開始に際して、新著はある犯罪を取材した物で、それにはパーティ参加者の1人が実名で登場していると述べていました。
その事を思い出したはじめは、新著が橘殺害の動機に深く関わっていると判断し、いつきたちと密かに連絡を取りながら新著のデータを入手すべく暗号に従って動く事にします。
しかし常に先回りしている見えざる敵によって行く先々で事件が起こり、その度に濡れ衣が増えていきます。
さらには2軒目からの事件は現場が東京に移った事もあってか、『剣持 勇』警部と『明智 健吾』警視も捜査側としてはじめ追跡に参加します。本来なら合同捜査本部が設置されるべきかも知れませんが、特にそういった描写はありません。
はじめも逃走しつつ暗号からの伝言ゲームを追っていくなかでいつきたち協力者から事件に関する情報を得て行きます。

見えざる敵を暴け

そういった後の終盤、追う者追われる者に関係者が導かれる様に一つの場所へ向かいます。
そこで紆余曲折を経て、はじめと明智警視が対峙した事を契機に事件は解決へ向かいます。
結構な犠牲者が出た本エピソードですが、もっとも肝要と言えるのは最初の橘殺害と言えます。
その事件現場ではじめが入った足跡しか無かったという一種の密室と言える状況だったためにはじめに嫌疑が掛かった訳で、ある意味密室トリックのもっとも有効的な使い方と言えるでしょう。
しかし本エピソードで用いられた密室トリックはフィジカルに依存した、なかなかにアクロバティックな物となっていて意外性も感じられる物となっています。

まとめ

10回目という最初の節目と言える本エピソードですが、節目である事を意識したかの様な内容となっています。
はじめが殺人犯の汚名を着せられて追われる身となる衝撃的な展開や街中など様々な場所で事件が起こるというのも、これまで無かった展開と言えます。
さらに佐木2号こと佐木弟や再登場したいつきの立ち位置が決まった点でも重要なエピソードと言えるのではないでしょうか。
ただ先述したフロッピーディスクもそうですが、登場頻度が多い上に事件解決に重要な役割を果たすポケベルなど道具立てに時代を感じたエピソードでもあります。
また緊張感ある追跡劇に対し、トリックを暴いた上に物証をしっかり提示するなどミステリとしてもしっかりしている印象を受けたエピソードでした。