災い招く死のカード、タロット山荘殺人事件速水玲香の相談にのるため、タロット山荘を訪れた一。吹雪でかすむ雪山で起こった、タロットカードに見立てられた連続殺人。一は玲香の父を犯人とするが……。
講談社コミックプラスより抜粋
- タイトル:金田一少年の事件簿 File(11)
- 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
- 刊行年:2004年
- 出版社:講談社
- レーベル:講談社漫画文庫

目次
概要
『タロット山荘殺人事件』は週刊少年マガジン1995年12号から1995年26号に掛けて連載されました。
アイドル速水玲香に呼ばれたはじめ
本エピソードは「金田一 一」の元に、『雪夜叉伝説殺人事件』で登場したアイドル「速水 玲香」から手紙が送られてくる場面から始まります。
どうやら玲香は青森県の山中でペンション『タロット山荘』を経営している父親「速水 雄一郎」の下に身を寄せていた様です。
そしてはじめは監視として同行してきた幼馴染「七瀬 美雪」と一緒にタロット山荘を訪れます。
するとそこには玲香を連れ戻すためにやって来た事務所社長とマネージャーや居場所を嗅ぎつけてやって来た芸能記者、さらに熱心な追っかけまで来ていました。
そんな彼らが見ている前で玲香がはじめに抱きついたため、やや混沌とした状況となります。
しかしそんな中、下山するロープウェイの最終便が発ってしまい、一同はタロット山荘に宿泊する事になります。
殺人事件と脅迫者
はじめたちやその他一同はタロット山荘に宿泊します。そこではシリーズ1作目『オペラ座館殺人事件』に登場した医師「結城 英作」が再登場したり、はじめと美雪、玲香による三角関係が描かれたりといった微笑ましい場面が描かれたかと思えば、思わぬ訪問者があったりといった場面があったりします。
しかしそんな平和な状況が続くはずも無く、記者の1人が良からぬ事を考えてある事をネタに雄一郎を脅迫するも、激昂した雄一郎に撲殺されてしまいます。この記者の言動も大概下衆だったので、ある意味当然の結果と言えそうです。
それから雄一郎は証拠隠滅を図るも、その途中である人物に目撃されていました。
その人物『陰の脅迫者』は撲殺死体を掘り起こしてからタロットに見立てて風車に貼り付けるという派手な所業を行い、存在をアピールした上で雄一郎を脅迫します。しかし見立てのためとはいえ、吹雪のなか成人男性の遺体を運んで風車に貼り付けるというのはかなりの労力を要しそうです。
そんな陰の脅迫者からの要求に従い、さらなる殺人を行う雄一郎ですが、当然ながらはじめが彼に疑惑を抱き始めていました。
この辺りは倒叙ミステリーの様な味わいもあります。しかし最終的には陰の脅迫者とはじめの対決となりますので、倒叙ミステリーな雰囲気があるのは中盤辺りまでと言えます。
雄一郎を疑うはじめ、はじめの疑惑を躱したい雄一郎という構図を見てか陰の脅迫者は次の手を打って来ます。
陰の脅迫者を追い詰める
本エピソードの犯人である陰の脅迫者はなかなかの強敵であると言えます。
雄一郎と自らが動く事ではじめを惑わし、自らは疑われる事なく目的を成し遂げようとします。
さらに目的を完遂した後もなお、調査を続けるはじめを葬り去ろうと手を下します。
しかしこれは自分でトドメを刺さないなど行いが不徹底だったのと、これまでのエピソードで鍛えられたはじめの生命力によってか失敗し、追い詰められるきっかけとなります。
そんな脅迫者を追い詰める推理は消去法という煩雑な印象を受ける手法を用いた上でアリバイ崩しをしています。どちらも単独では決定的な証拠にならない事もあってか、推理としては弱く感じられます。電話機を絡めた証拠の提示とか出来れば、もう少し追い詰めた感を出せたかも知れません。
まとめ
本エピソードは速水玲香再登場に加えて、本人も知らなかった重大な秘密が明らかになるという重要なエピソードであると言えます。
それに加えてはじめを取り巻く三角関係の構図が構築されたり、幼馴染である美雪が玲香との格の違いを見せるなど、エピソード面では見どころの多いエピソードであったと言えそうです。