名探偵VS世紀の大泥棒・怪盗紳士の殺人。名画泥棒・怪盗紳士を捕まえるため蒲生邸を訪れた一。必死の警備も虚しく、予告通り絵は盗まれてしまう。モチーフとなった人物までもが、次々と殺害されていく。
講談社コミックプラスより抜粋
目次
DATA
- タイトル:金田一少年の事件簿 File(13)
- 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
- 刊行年:2005年
- 出版社:講談社
- レーベル:講談社漫画文庫

概要
『怪盗紳士の殺人』は週刊少年マガジン1995年44号から1996年5号に掛けて連載されました。
怪盗紳士初登場のエピソードとなります。
世間を騒がせる怪盗
本作は主人公の「金田一 一」が通っている不動高校での一幕から始まります。はじめとクラスメートの会話で『怪盗紳士』という怪盗が世間を騒がせている事が語られます。
その後はじめはクラスメートの「和泉 さくら」が、時代を感じるギャルに絡まれているのを助けますが、その手段が手癖が悪いというレベルを超越した超絶技巧で笑う他ありません。
しかしその直後はじめに対して、今日限りで不動高校から転校すると告げ、転校していきます。
その1ヶ月後、はじめは「剣持 勇」警部に呼び出されて幼馴染の「七瀬 美雪」と共に赴いた所、画家「蒲生 剛三」の元に怪盗紳士からの予告状が届いたとの事で協力を依頼されます。
それによると、蒲生は国際的な賞を取って高い評価を得ている画家との事で、怪盗紳士の担当となっている剣持が蒲生邸のある青森へ行くので同行して欲しいとの事です。警視庁の刑事が青森へ?とも思いますが、現実的に考えれば合同捜査本部といった所でしょうか。予告状が送られた時点で事件発生と言えそうですし。
そうして剣持と共に青森へ向かうはじめと美雪ですが、その途中美雪と剣持から怪盗紳士は絵画に的を絞った怪盗で、絵画と一緒にそのモチーフを盗むと説明されます。ある1本の樹木を描いた絵画の場合は、その樹木を怪盗紳士のシンボルマーク風に刈り込んでいたのだそうです。
さくらとの再会と事件発生
そうして蒲生邸に到着したはじめたちですが、屋敷では最近受賞した絵画を内々でのお披露目パーティーが行われる所でした。はじめが庭の一角に目をやると焼け焦げた樹木が見えます。剣持が言うには先週も屋敷から樹木を描いた絵画が怪盗紳士に盗まれ、その際にモチーフとなった樹木が燃やされた模様です。
これまで樹木を描いた絵画を盗んだ際は刈り込む程度でイタズラと思えるやり口でしたが、今回は樹木を焼くという乱暴な印象を受けるやり方にはじめはもちろんのこと、剣持もギャップを感じている様で、これまでと違う様だとこぼしています。
それから国際的な絵画コンクールで受賞したという絵画『我が愛する娘の肖像』とそのモデルである蒲生の娘として紹介されたのが転校したさくらでした。さくらは蒲生の生き別れた娘だったと紹介され、蒲生邸に住んでいる様です。
その一方で他のパーティー参加者はいかにも欲望や妬みを持った曲者たちといった印象です。
はじめたちと美雪はさくらに蒲生邸やラベンダーに囲まれた別邸『ラベンダー荘』を案内されます。なんでも蒲生の絵画は別邸を含む屋敷内にあるものをモチーフにしたそうです。
そんな中、怪盗紳士によって我が愛する娘の肖像が盗まれるという事件が発生し、モチーフとなったさくらの髪が切られるという事態となります。
こうして怪盗紳士による事件の幕が上がるのでした。
果たしてはじめと怪盗紳士の戦いの結末は如何にといった所でしょうか。
ミステリーとして
そんな本エピソードですが、当ブログで時系列としては後でありながら怪盗紳士が何食わぬ顔して現れるアニメを紹介しているという事からも分かる様に、実際に殺人を行っているのは怪盗紳士を騙る偽物という事になります。
そしてその偽怪盗紳士の用いるトリックはほぼ心理的なものではありますが、後半のアリバイトリックははじめも運良く手掛かりを得て解決した風の巧妙な物となっています。
しかしながら犯人が巧妙過ぎたためかはじめも証拠を出せなかった辺り、ミステリーとしては少し弱いかと感じられました。
まとめ
怪盗紳士が初登場と言う事と悲劇的な幕切れとなる本エピソードは、事件そのものはやや印象が薄いという気が無くもありません。
しかしながらはじめが運良く得た薄弱とも言える手掛かりからアリバイ崩しまで漕ぎ着けなければ、事件を解決出来なかったと思うと、本エピソードの犯人も強敵の部類に入るのかも知れません。