【漫画】金田一少年の事件簿 File(14)墓場島殺人事件【感想】

亡霊相手のサバイバル!?墓場島殺人事件。日本軍が玉砕した墓場島。クラスメイトとアウトドアに訪れた一は、そこで出会った学生グループの爆死事件をきっかけに、殺戮の戦場に足を踏み入れることになる。

講談社コミックプラスより抜粋
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DATA

  • タイトル:金田一少年の事件簿 File(14)
  • 作者: 天樹征丸、金成陽三郎(作)/さとうふみや(画)
  • 刊行年:2005年
  • 巻数:全1巻
  • 出版社:講談社
  • レーベル:講談社漫画文庫
6.5 out of 10 stars (6.5 / 10)

概要

『墓場島殺人事件』は週刊少年マガジン1996年7号から1996年18号に掛けて連載されました。

無人島へ招かれる

本エピソードは「金田一 一」の幼馴染「七瀬 美雪」が友人の「平嶋 千絵」「森下 麗美」から離島で宿泊する旅行に誘われる場面から始まります。どうやら実家が離島で旅館を営んでいるという平嶋の帰省に便乗する形となる様です。
しかし森下から、各々男子1人を同伴する様にと条件を付けられたため、下心いっぱいのはじめが立候補していつもの流れとなりますが何故か「佐木 竜二」もついて来ます。
そうして平嶋の帰省についていったはじめたちですが、平嶋家は旅館というより民宿といった雰囲気です。さらに島自体も漁港中心で新鮮な海産物は食べられそうですが、海水浴場など無い様子でどう過ごした物かと途方に暮れていた所、地元の旅行会社と名乗る男性から無人島探検ツアーを紹介され、その話に乗って付近にあるという無人島『墓場島』へ向かう事にする一同。また墓場島は戦時中に多くの日本兵が玉砕し、『亡霊兵士』が現れると言われている様です。
そういった事もあってか地元民である平嶋は怯える様子を見せるものの同行する事にした様です。
ただこのツアー自体が仕組まれた物である事が分かる様になっています。

島で起こる惨劇

そして墓場島に到着した一行は大学生のサバゲーサークルと遭遇します。全国大会の強化合宿を行っているという彼らは計8人で2チームに別れて戦っている様です。
しかしその晩、はじめたちと接触しなかった方のチームが野営地に爆弾投げ込まれて殲滅されてしまいます。
その惨状は実際なら阿鼻叫喚というしか無いでしょうが、描写はあっさりしているためグロさは感じられません。
そして島から脱出を図るも、サークルメンバーがボートを係留していたロープは切断され、砂浜には旧軍でしようされていた軍靴の跡が残されていました。
果たして相手は亡霊兵士か生き残った日本兵か。そんな疑念が渦巻く中、4日後に迎えの船が来るまで、島でのサバイバルが始まるのでした。

墓場島でのサバイバル

本エピソードの舞台となる墓場島は、距離感を考えると伊豆諸島の北側を想定している様に思われますが、史実においてその辺りで米軍の総攻撃を受けた島という事は無いため、歴史的背景は硫黄島などを参考にした物と思われます。
そんな島内は高射砲や戦闘機の残骸、横穴式の防空壕などに数多くの白骨死体が残されています。その一方で島そのものを墓標として封印したという経緯から、亡霊兵士と呼ばれる怪談が伝えられている事が事件の布石と言えそうです。
はじめたちは初日こそ飛行場跡地にテントを張って過ごしましたが、事件発生以降は亡霊兵士を恐れてサバゲーサークルのメンバーと一緒に野営する事になりますが、2日目3日目とサークルメンバーが屠られて行きます。
しかし亡霊といいつつ足跡だったり凶器を残したり、そもそも最初の事件が爆殺だったりと物理的痕跡を多く残しているために、生き残り兵士説もまことしやかに囁かれます。
果たしてはじめは亡霊兵士の正体を突き止めきれるでしょうか。

ミステリーとして

本エピソードはミステリーとしては暗号解読が中心となっています。この暗号は解法についてのヒントも提示されている上に、犯人に直結しているため、犯人を突き止めるのは難しくはありません。
しかしそれだけでは説明しきれない謎があり、それは一見些細な情報のズレや違和感が切っ掛けとなった物ですが、事件の重要な手掛かりとなっています。
ただそれを解き明かすのは状況証拠の積み重ねであり、やや弱く感じられます。
また犯行は主にある仕掛けに頼ったものとなっていて、複雑なトリックは用いられていないという印象も受けます。

まとめ

南の島でサバイバルしながら謎を解くという展開が特徴的なエピソードとなっています。
もっともはじめ自身は雪山に放置されるなどこれ以上に過酷と思えるサバイバルを経験している様に思えますが。
また犯人に関しては仕掛けばかりが着目されていて、個々の犯行に関しては曖昧な描写となっている様に見えます。
しかし容疑者リストでは犠牲者は少なく感じますが、最初に爆殺された人物たちは除外されているため、実際にはかなり多くなってしまうという点は犯人が言い遺したメッセージなどが印象的なエピソードであったと言えます。