【漫画】切子・殺【感想】

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DATA

  • タイトル:切子・殺
  • 作者:本田真吾
  • 刊行年:2018年
  • 巻数:全1巻
  • 出版社:日本文芸社
  • レーベル:ニチブンコミックス
4.5 out of 10 stars (4.5 / 10)

東京で就職し、憧れの新生活を始めた佐倉美波。
だがその会社はクリーンなイメージとは裏腹のブラック企業だった…。
戸惑いつつも奮闘する美波、だが突如一人の社員が惨殺体となって発見され、全ての事態が狂い出す。
これが“切子”による宴の始まりだった…!

Amazonより抜粋

概要

本作は『切子』の続編で、日本文芸社の『週刊漫画ゴラク』に連載されていた作品です。

気になる冒頭と新たな主人公

冒頭、都市部のあるオフィスで切子らしき人影が虐殺を行っている様子が描かれます。
山中にいた切子が都会へ出てきたのか、どういった経緯でオフィスで虐殺を行ったのか気になる所と言えます。

それから場面は変わり、『エガオコーポレーション』という胡散臭い企業の新入社員「山崎 冬馬」と「佐倉 美波」が出会う場面となります。この2人が本作の主人公と言うことになります。それに加えて1人の警備員もいかにも意味ありげな様子で描かれています。

そして美波は配属された班で入社初日にしてパワハラとセクハラの被害を受ける事になります。並の神経なら初日からこんな目にあってはやってられないと考えそうな所ですので、上司たちはやはり気の弱そうな相手を選んでいるという事でしょう。何とも姑息な事ではあります。
しかし間もなく惨劇の幕が上がる事になります。

都内のオフィスに巻き起こる惨劇

美波にセクハラしていた上司が何者かによって閉じ込められた上で切子に惨殺された頃、社内では外部との連絡が一切取れなくなるという異常が起こっていました。携帯、固定電話、ネット全てが不通となります。切子の怨念は電波を遮断するとでも言うのでしょうか。
やがて上司の惨殺体が発見された為、同僚の1人が非常階段から脱出して通報してくると言って出て行きますが、当然彼が戻ってくる事はありませんでした。
そしてこの異常な状況下にも関わらず、美波に無茶な量の業務を与えようとしたパワハラ上司。彼女が多くの社員が見ている前で惨殺された事によって社内はパニックとなり、切子はその破壊力を猛然と振るってきます。パニックに陥り逃げようとする社員たちを瞬時に数人屠る切子。それを見た冬馬は美波の手を引いて逃走を図ります。
果たして冬馬と美波は切子から逃れる事が出来るでしょうか。

勢いで押し通すスラッシャーホラー

本作は前作とは異なる方向性になっている様に感じられます。前作は山中に閉じ込められた少人数のメンバーを1人ずつ屠って行きました。
しかし本作は多人数が勤めるオフィス内という事もあってか、姿を現した切子は社員たちを景気よく屠って行きます。
しかしそれでも派手に血飛沫上げてる様には見えず描写があっさりしている為、前作に続きグロ描写は控えめと言える様な事もあってか、勢いよく肉片バラ撒く事でスラッシャーホラーと言える程度に体裁を保っている様にも見えます。
また前作でも怪物という他ない破壊力を持っていた切子ですが、本作では分散して小人サイズになったり幻覚らしき物を見せたりと、最早意味不明な程の能力で殺戮のバリエーションは増えていると言えるかも知れません。

黒幕

冬馬は前作で最後まで生存した人物の血縁者だそうで、その為切子に関してある程度情報を持っていた様です。そして冬馬からその生存者のその後が語られた後、エガオコーポレーション以前に起きた複数の事件も切子の所業と推測します
しかし何故切子が都内に現れ、特定のオフィスで殺戮を行う様になったのかという疑問が当然出てきます。冬馬は切子に襲われたオフィスや施設から共通点を指摘し、切子に粛清を依頼するサイトの存在から黒幕がいると考え、やがて冬馬たちは黒幕と対峙する事になります。

まとめ

総評としては、どうしてこうなったというのが正直な感想です。
勢いよく殺戮して行く切子ですが、その分恐怖感よりも慌ただしさが勝る様に感じられます。そのうえあっさりした描写も相まって単純な恐怖感という意味では前作より控えめと言えます。
更に前作では怨念によって動いていた切子が、本作では黒幕の意によって動く『JOJO』のスタンドを思わせる存在になってしまっているのも残念感があります。
黒幕の言動でスケールアップしている様に見せようとしていますが、ホラーとしてはグレードダウンしてしまった感は拭えません。
ただホラーが苦手な方でも読めそうなのが、長所と言えるかも知れません。