【漫画】マンホール【感想】

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夕暮れの商店街で、全裸の男が怪死を遂げた。検死の結果、体から新種の寄生虫が発見される。ベテラン刑事・溝口とその部下・井上は事件を追う内、ひとつのマンホールへとたどり着く。暗闇の中、そこには謎の“施設”の存在が…!? 加速する恐怖、戦慄のバイオ・ホラー!!

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DATA

  • タイトル:マンホール
  • 作者:筒井哲也
  • 刊行年:2015年
  • 巻数:全2巻(新装版)
  • 出版社:集英社
  • レーベル:ヤングジャンプコミックス

概要

本作は寄生虫を扱った事件をテーマにしたバイオホラー作品で、2004年から2006年に掛けてヤングガンガンで連載されました。後に新装版としてヤングジャンプコミックスとして刊行されています。
バイオホラーといってもパニック物では無く社会派的色合いが強い作品と言えます。

商店街での変死事件

神奈川県にあるという架空の街、笹原市の商店街に全裸の男性が現れます。
全裸のスキンヘッドにふらふらと歩いている様子と明らかに異様な風体に、周囲の人々は男性を避け、遠巻きに様子を覗います。
しかしその正面からすれ違う様に大学生の若者が歩いてきます。若者は手元の携帯を注視していて音楽を聴いており、典型的な前方不注意と言えます。
男性は若者の前に立つと、「マ、マ」と呟いたかと思うとその場で吐血し、若者に血反吐を浴びせます。若者は口元にも血液を浴びていて、明らかに不味い事になる予感しかありません。本作は寄生虫がテーマですが、そうで無くとも血液はHIVなど病気の感染源となります。
そして驚いた若者に突き飛ばされた勢いで頭を道路に打ち付けて、そのまま事切れてしまった様子の男性。
若者は慌ててその場を立ち去るも、気が動転していたのか、携帯を落としてしまいます。

警察の捜査

そしてこの変死事件の捜査をする事になった捜査陣の中に主人公である女性刑事「井上 奈緒」とベテラン刑事の「溝口 健」がいました。
主人公はいかにも若者といった言葉遣いだったり、若干軽い感じで溝口について捜査を行います。
そんなコンビは死亡した男性の母親への聞き込みから、男性がギャンブル中毒で母親にも暴力を振るうどうしようも無い人物だった事が分かり、それから手に負えない両親がある施設に預けたと聞きます。
やがて男性を検死した結果寄生虫が検出され、フィラリアの一種と判明します。その寄生虫に寄生された人間は全ての欲求を奪われるそうですが、どうやら奪われるのは欲求だけでは無い様です。
男性が死亡した際に血反吐を浴びた大学生は警察署で主人公から事情聴取を受けた後、明らかに思考力が低下している様子でふらふらと車道へ飛び出し、車に撥ねられ死亡します。その遺体から寄生虫が飛び出している部分があり非常に不気味さを感じさせます。
ただ捜査陣の内、何かと生きピッタリの保健所職員のコンビや何かにつけて駄洒落を放つ笹原警察署長などは緊張感が強まる中、程よく和らげる存在と言えるかも知れません。
そして寄生虫は人為的な物との見方から警察と保健所が協力して解決を目指す事になりますが、亡くなった大学生の身辺から感染が広がり出す可能性があり、読者にスリルを感じさせます。
最初に死亡した男性の父親に他の捜査員が聞き込みする一方、主人公たちは男性が連れ込まれた施設を発見します。しかし男性の末路から察せられる様に施設など無く、マンホールに下に設置された実験室の様な場所でした。一応マンホールの下に隠されていましたが、主人公が発見から最初の調査を行うなどの活躍を見せます。溝口に何だかんだ言いくるめられてやむ無くマンホールの調査を行い犯人につながる情報が見つかります。それと同じ頃に最初に死亡した男性への聞き込みが行われていて、犯人の素性や寄生虫を用いて犯罪者をロボトミーしようとしているかの様な証言を得られます。
しかしその情報には矛盾する場面があるなど、不穏な雰囲気が漂います。またその途中、お分かり頂けただろうかと言いたげな場面があったりします。

広がる感染から終結

そうしている内に犯人により寄生虫を仕込まれた第2の人物がマンホールしたより現れます。その様子はまるで少女に襲いかかる変質者の様相を呈していて、本作でも屈指の見どころと言えるかも知れません。
その男性、田村は犯人に拘束された経緯を話そうとしませんでしたが、女児への猥褻という悪質な前科ありと判明します。変質者の様な現れ方でしたが、実際に変質者を通り越した性犯罪者だったと言う訳です。そしてその前科で脅迫されておびき寄せられた様で因果応報とも言えます。
やがて死亡した大学生の身辺から感染が広がり始めます。
近辺で感染している住民がいることが分かり、主人公コンビは保健所職員を差し置いて事態の収拾を行おうとしてからの流れは、流石に警察でやるべきだったのかと思わざるを得ません。
もっともそれが犯人への直接対決に繋がっていく訳ですが。
ただ大学生への事情徴収あたりまでは溝口に半人前扱いされていた主人公ですが、終盤単身行動していた事もあってか犯人と対決する辺りでは当初の軽さが無くなり、成長が伺えます。

まとめ

本作に登場する寄生虫はフィラリアの一種となっていますが、「新種」と作中で言われている様に症状としてはオリジナルの創作と言えるものになっています。ちなみに実際に人にフィラリアが感染した場合の症例としては象皮病などが知られています。
ただ昆虫を対象にしている寄生虫だとロイコクロリディウムやハリガネムシの様に宿主の行動に影響を与える寄生虫が知られていますので、それの対人間バージョンと言った所でしょうか。もっともあちらは繁殖などの目的がありますが、こちらはそういった物ではなさそうです。

また本作は長さの割には情報量が多い印象を受けました。バイオホラーとなるとそれなりの説得力を持たせるための情報が必要と言うことなのでしょう。未知の寄生虫なりウイルスなりにしろどのように人体に作用して発症するのか分からないと盛り上がらないと思いますし。

何れにせよいかにもなホラー描写というのはそれほどありませんが、バイオホラー物としては楽しめました。