【漫画】もろびとこぞりて【感想】

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DATE

  • タイトル:もろびとこぞりて
  • 作者:ウチヤマユージ
  • 刊行年:2022年
  • 巻数:全1巻
  • 出版社:日本文芸社
  • レーベル:ニチブンコミックス

都内から千葉県に引っ越してきた大島一家。
一人娘の真琴は地元の中学に転校し、穏やかな生活を送っていた。
一家の秘密が知られるまではーー。
ある凶悪犯罪と、加害者家族の末路。
終わらない悪意の渦が一家を襲う時、人の暗部が暴かれる。
罪と罰、同調圧力、正義の押し付け…。
現代社会の病巣を、奇才ウチヤマユージが鋭く抉った、
衝撃のヒューマン・サスペンス堂々登場!!

日本文芸社webサイトより抜粋
6 out of 10 stars (6 / 10)

概要

本作は『週刊漫画ゴラク』にて2021年7月から10月にかけてウチヤマユージによって短期集中連載されました。
犯罪加害者家族をテーマにしたサスペンス作品となっています。

無差別通り魔事件から始まるストーリー

冒頭、「大島 佑希哉」なる人物が新宿駅周辺で無差別通り魔事件を起こす場面から始まります。佑希哉はナタを振り回して通行人に斬りかかるという強い殺意を伴っていそうな行動で、数人を襲います。
それから駅構内に侵入するも警官らに包囲された佑希哉ですが、ホームに進入してきた電車の前に飛び込んだのでした。この事件は被疑者死亡という形で終わってしまった模様です。
事件から2年後、世間では未だ佑希哉の模倣犯が出ている有様の様です。
そんな中、千葉県市原市でクリスチャンの家庭に育った中学生「海藤 亮介」のクラスに女生徒「大島 真琴」が転入してきます。東京都町田市から引っ越してきたという大島家は3人家族の様で、真琴は亮介と親しくなり母は酒屋でパートするなど新生活を送り始めた様に見えます。

流言による暗転

しかしそんなある夜、大島家の前や町の掲示板などに大島佑希哉の家族は出て行けという内容のビラが貼られます。普通に考えれば事実無根のビラですが、近所ではさも事実として扱われている様で、真琴はクラスメイトなどから恐喝され、母は酒屋の店主からセクハラされる様になり、これらの行為はエスカレートしていきます。
当然ながら現代日本において犯罪者の刑罰が家族に及ぶ事はありません。もちろん民事による賠償などが及ぶ場合事はありますが、直接的な刑罰は加えられません。
それにも関わらず、凶悪犯罪者の家族に対してなら何やっても良いという思考は連座という仕組みが生きていた江戸時代などの封建主義的思考と言えるかも知れません。
そういった思考の持ち主たちは、自らの行為が法的に認められている訳でもないのにも関わらず、大島家の人間に進んで危害を加えようとします。それは明らかに社会的制裁でもありませんし、ましてや私刑ですらありませんが、相手が凶悪事件加害者家族というだけで大義名分を得た気になる人種というのは少数ながら存在するのかも知れません。
そしてそんな状況でも亮介は真琴と対話しようと務めます。
果たして大島家の運命は如何にといった所でしょうか。またビラを貼ったのは何者でどういう目的なのかという事も気になる点と言えます。

大島家を中心としたサスペンス

本作は多くの伏線が張られたサスペンス作品と言えます。そのため踏み込んだ感想を書こうとするとネタバレになってしまいそうなのが難しい所です。
その中でも大島家の描写は家族同士の態度やフラッシュバックらしき描写など序盤から違和感があり、一見平凡な3人家族に見えるも何かしら裏を感じさせます。

まとめ

本作は今更言うまでもありませんが、犯罪者加害者家族をテーマにしています。
ただ冒頭からの印象と読後感は大分異なるのでは無いかと思われます。
ある意味因果応報と感じる展開ではありますが、個人的には復讐の物語とも感じられました。