【漫画】ミュージアム【感想】

5 out of 10 stars (5 / 10)
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DATA

  • タイトル:ミュージアム
  • 作者:巴亮介
  • 刊行年:2016年
  • 巻数:全2巻(新装版)
  • 出版社:講談社
  • レーベル:講談社コミックス

概要

本作は講談社の『週刊ヤングマガジン』にて2013年から2014年に掛けて連載されたサスペンス漫画です。
本記事は2016年刊行の『新装版 ミュージアム 完本』を基にしていますが、同年には実写映画化もされています。

連続猟奇殺人

刑事である主人公「沢村」はある事件現場に臨場します。先にいた後輩刑事の「西野」から話を聴きつつ現場を見る沢村。
その事件というのは若い女性が監禁され、飢えた犬に生きたまま食い殺されるという非常に残酷な物でした。
さらに引きこもり男性が何者かに拉致され、生きたまま体の部位や肉を削ぎ落とされるという凌遅刑じみた無残な方法で殺害されます。
この様な残酷な手口故に同一人物の犯行とみられましたが、ある共通点が判明した事から、本作は一般的な刑事物とは一線を隠した展開となります。

事件関係者

被害者2名の共通点とは『幼女樹脂詰め殺人事件』と呼ばれる事件の裁判で裁判員を務めたという事です。○○詰めという名称から凄惨で胸糞悪い事件を連想してしまいます。
この事件では被告が有罪判決を受けた後自殺したそうで、捜査員は被告の遺族による復讐と見て捜査を開始します。
しかし裁判員の情報が漏れて、その上殺害されてしまうというのは大変な事態で、現実に起これば裁判員制度が崩壊しかねません。

捜査本部では当然、その事件の裁判官や裁判員たちを保護する事になりますが、その対象には沢村の妻である「遥」もいました。
しかし遥は沢村に愛想を尽かして息子「将太」を連れて家出している最中でした。
その上沢村は関係者の身内という事で捜査から外されてしまいます。守るべき家族は傍におらず、保護する側にも回れないという事態に沢村は独自に友人を当たって家族を探します。
しかし僅かに遅く遥と将太は友人宅から拉致されてしまいます。ちなみにこの前に犯人が機転を効かせて捜査員をやり過ごしています。

またこの前後に、樹脂詰め殺人事件の裁判に携わった裁判官、裁判員が遥を除いて全員殺害された状態で発見されるという怒涛の展開がありますが、本作はまだ中盤です。

怪人カエル男

家族が犯人の手に落ちた事により、沢村は何振り構わぬ独自の追跡を行おうとしますが、その矢先に犯人である「カエル男」が現れ、自分が犯人である事と動機を語ります。
芸術家を気取る彼は被告の遺族でも何でも無く快楽殺人者でした。

カエル男は「新装版」に収蔵されている「未公開殺人」にて殺人に全く躊躇しない様子が伺えます。裁判員の情報を盗み取る過程で2人殺害していますし、少年期から殺人を犯している事が示唆されていて、生まれながらの殺人鬼なのでは無いかとも思われます。

彼は本編中の事件では殺害対象に何らかの罪状を付けて『〜の刑』といった一種の見立て殺人らしき形を取っています。
例えば本編冒頭に登場する、犬に食い殺された女性は『ドッグフードの刑』とされています。これは女性が犬アレルギー持ちな彼氏と同棲するため飼っていた犬を保健所に送った事から取った様です。
他の被害者も同様で、何らかの罪を見付けてそれになぞらえている訳ですが、引きこもり男性の出生時体重やら男性裁判官が浮気している事実や浮気相手の情報といった事まで探り当てています。これらは興信所を利用した可能性もありますが、足が付く可能性がリスクとしてありますので、自力で調査した可能性も充分考えられ、なかなかの執念と調査能力と言えます。

対決

中盤から終盤に掛けて、快楽殺人鬼カエル男から妻子を取り戻すため、沢村の何振り構わない追跡が描かれます。
違法な銃器を入手したり、民間人を脅したりする様は警察官としてあるまじき行為ですが、手段を選んでいられないといった印象も受けます。
そうやってカエル男に近付いて行く沢村ですが、カエル男も沢村を待ち構えていて沢村一家を危機に陥れます。

沢村がカエル男の自宅に来襲した事で主導権を握った様に見えます。しかしその後の様々な仕掛けは沢村を待ち受けていたのではと思わざるを得ません。

まとめ

本作はジャンルとしてはサスペンスですが、連続殺人事件そのものよりは主人公と犯人の闘いに主眼が置かれている印象を受けます。
その為冒頭部分で事件物と判断すると期待外れと思われるかも知れません。
ただそういった展開が悪い訳では無く、名作映画『セブン』もそういった展開だったと考えた所で、セブンとの共通点が多い事に思い至って検索しようとした所検索候補で『ミュージアム セブン』と出て来る程でした。
オマージュでもオリジナルに無い特徴や尖った部分があれば楽しめるのですが、そこまでの部分が無ければ『劣化セブン』『和製セブン』に過ぎず、展開もおおよそセブンに近いためスリルやサスペンスがさほど感じられないというのが残念な所です。
ただ追跡中の沢村はなかなかの悲壮感あって印象的でした。
あと余談ですが、後日談に出てきたフリーライターという名のマ○ゴミはイラッとしました。