
江戸川乱歩賞受賞のサイコ・ミステリーの傑作を、鬼才・外薗昌也が描き下ろし漫画化! 心を持たない連続殺人鬼=脳男とは、何者なのか!? ――連続爆弾事件の容疑者として逮捕された、謎の男・鈴木一郎(すずき・いちろう)。警視庁から、鈴木一郎の精神鑑定を依頼された精神科医・鷲谷真梨子(わしや・まりこ)は、彼こそが、心を持たない、脳だけの男、「脳男」であると知る。そして、脳男が、凶悪犯罪者を次々と殺し続けていることも! 神か? 悪魔か? 裁きの時が、近づく!
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DATA
- タイトル:脳男
- 作者:首藤瓜於/外薗昌也
- 刊行年:2013年
- 巻数:全1巻
- 出版社:講談社
- レーベル:講談社コミックス
概要
本作は第46回江戸川乱歩賞受賞作で2000年に刊行された同名小説の漫画化作品です。
2014年に原作小説が実写映画化され公開されていますが、それに先立って漫画化された物です。
冒頭
冒頭、警察の捜査陣が連続爆破犯である緑川の隠れ家に踏み込む所から始まります。
その中には緑川と彼の首を片腕で締め上げている謎の男がいました。
警察隊は犠牲を出しながらも2人に接近しますが、目の前で争っている2人の男性が共犯関係であるという謎の解釈をして、謎の男に気を取られた事から緑川を取り逃がすという失態を演じます。
謎の男が仮に共犯だとしても、警察が犯人と目していた緑川が主犯となる訳で、それをむざむざ取り逃がすのは如何な物でしょうか。
そこで1人残された謎の男を逮捕する警察。
この謎の男こそがタイトルにもなっている「脳男」で、人間離れしたスペックを持つ、本作の実質的な主人公と言えます。
脳男という呼び名は中盤に登場しますが、この文では脳男と呼称します。
またここまでの流れで何となく分かると思われますが、本作の警察は捜査指揮を取る茶屋をはじめとして基本アレです。
女医
舞台は病院に移り、本作の語り手である『鷲谷真梨子』が登場します。
精神科医である鷲谷は警察が調べても正体不明の人物である、脳男の精神鑑定を依頼されます。
しかし鷲谷は自ら犯罪心理学は専門外と言っており、依頼された理由の詳細は不明です。
ただ脳男の言動には自閉症の様な傾向が見えていた模様です。
そして脳男の精神鑑定を開始した鷲谷は、まず様々な質問を投げ掛けます。
一方の脳男はそれに対して淡々と答えますが、感情や解答以外の情報を一切出さないという様子は機械的な印象を受けます。
その後、鷲谷は脳男から通常と異なる反応を引き出そうと、ポリグラフに掛けた上で性的な質問をするという捨て身の手段に出ます。
ポリグラフの結果は動揺している様な反応を示していましたが、詳しく調べると「こういう質問されたらこういう反応しろ」とインプットされているとしか思えない結果となっていました。
ポリグラフは心拍数や発汗といった生体反応を調べますので、脳男は自分の身体をかなり制御出来るという事でしょうか。
またこれら一連の流れに並行して、緑川が暗躍している様子が見て取れます。
冒頭のシーンではただのモブ的な悪役と思われましたが、実はそうではなかった様です。
調査と脳男
鷲谷は同僚が見つけた論文を元に脳男の調査を開始し、「脳男」の名付け親である精神科医の藍澤を訪れます。「意思のない脳だけの男」ということだそうです。
藍澤のクリニックは他院の精神科などをたらい回しにされた子供が回されてきていたそうで脳男もそこに預けられたのだそうです。後に両親が事故で亡くなったため祖父が引き取って養育する際に、脳男のホームドクターになったとのだそうです。
そして藍澤は脳男を診ている内に、その人並外れた能力に気付いたそうです。
しかし息子夫婦を喪った祖父の復讐心により、肉体や格闘技術などを鍛える事になり、藍澤はそれに反対したため解雇された様です。
その後脳男のトレーナーだった人物を教え手貰い、話を聴きに行く鷲谷ですが、移動の関係からか茶屋も同行します。
移動中、脳男を共犯と疑っているのかたずねる鷲谷に警察だからと答える茶屋ですが、緑川を捕まえていればそこまで固執しなかったのではと思ってしまいます。
結局判断ミスで緑川を取り逃がしたので、共犯を捕まえたという一点が捜査陣の拠り所なのでしょう。
そして脳男のトレーナーだった人物は、トレーニングの成果として、一緒にヒマラヤ登頂した際に、脳男に命を救われた話をします。
トレーナーが身捨てるよう言っても、押し切って助けた脳男。藍澤に言われなければ食事さえせず餓死していたかも知れないという状態だった頃を省みると成長したと言えるのかも知れません。
しかしその後祖父と衝撃的な別離を経て消息不明となった様です。
終盤
終盤には、序盤以降色々暗躍していた緑川が牙を向きます。
緑川がコソコソしていた事に気付かなかった捜査陣は、ツケが回ってきたとばかりに犠牲になっていきます。
緑川は相手が悪かっただけで、犯罪者としての能力は高かったのだと思い知らされます。
そこで捜査陣や鷲谷たちは脳男に頼らざるを得ませんが、茶屋はこの期に及んで脳男を信用していない様子です。
鷲谷たちに協力する脳男ですが、何を考えているか全く分からないのがある意味スリリングであるという印象を受けます。
まとめ
原作小説は江戸川乱歩賞受賞作ですが、刊行当時ヒーロー小説として宣伝されていた為か食指が動かなかった覚えがあります。
そして今回漫画版を読んでみて、結構楽しめましたし作品自体漫画向きだったのでは無いかと感じました。
脳男というヒーローが活躍する場面は漫画だとかなり見栄えが良く、特に終盤の救出劇などは漫画だからこその躍動感や脳男の超人っぷりが発揮されたと言えます。
しかしその一方で、小説1冊を漫画単行本1冊分に落とし込んだ結果、多くの要素がカットされた物と思われます。
脳男が行っていたと思われる事件は殆ど触れられませんし、緑川も同様です。
また脳男と鷲谷の終盤での関係性についても最低限といった印象でしたので、その辺りが気になるなら原作を読んで欲しいという事なのでしょう。
他にも原作の刊行が2000年なので、ネットは今ほど普及していなかったと思われます。
しかし作中には論文がアップロードされていたりブログ炎上の話があったりしているので、アレンジしている部分もありそうです。
そういった事を踏まえると、ヒーローが活躍する話としては漫画版でも楽しめますが、話を深く読みたいなら原作を読むのも良いかも知れません。
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