【2021年秋アニメ】最果てのパラディン【感想】

スポンサーリンク

DATA

  • タイトル:最果てのパラディン
  • 放送クール:2021年秋
  • 話数:12話
  • 制作:Children’s Playground Entertainment
  • 監督:信田ユウ
  • 脚本:髙橋龍也、梧桐翔大
7 out of 10 stars (7 / 10)

かつて滅びた死者の街――
人里離れたこの地に一人の生きた子供、ウィルがいた。
少年を育てるのは三人の不死者。
豪快な骸骨の剣士のブラッド。淑やかな神官ミイラのマリー。偏屈な魔法使いの幽霊のガス。
彼ら三人に教えを受け、愛を注がれ少年は育てられる。
そしていつしか少年は一つの疑念を抱く。
「……この『僕』って、何者なんだ?」
ウィルにより解き明かされる最果ての街に秘められた不死者たちの抱える謎。
善なる神々の愛と慈悲。
悪なる神々の偏執と狂気。
――その全てを知る時、少年は聖騎士への道を歩みだす。

公式サイトより抜粋

概要

本作は小説投稿サイト『小説家になろう』にて連載中で書籍化、コミカライズされた小説が原作となっています。

アンデッドに育てられた少年

本作の主人公「ウィル(ウィリアム)」は廃墟の町で3人のアンデッドに育てられている少年です。スケルトンの戦士「ブラッド」からは武術を、ミイラの神官「マリー」からは一般常識や礼儀作法、信仰などについてなど、ゴーストの魔術師「ガス」からは魔法を学んで育っていく様子が序盤は描かれています。一応異世界転生者であるウィルは転生者特有といえる理解力で知識などを吸収して行き、その成長力は育ての親であるアンデッド達の予測を上回っている様子が見て取れます。
そしてウィルは赤子の頃から、育ての親がアンデッドで周囲に生きた人間がいないという事を前世の知識で知っていましたが、その理由を特に尋ねる事はしませんでしたが、それは自分には前世の記憶がある事を黙っている事が影響していた様です。
そんな転生者であるウィルと、かつては一緒に旅した仲間らしいものの詳細は語らない育ての親である3人のアンデッドのみで序盤は進んで行きます。序盤は本当にこの4人だけで話が進行して行きますが、お互いに隠し事をしている描写にウィルに対し思う所があるらしいガス、そして世界に人類は残っているのかなど様々な描写や疑問点を持って物語は進行して行きます。
しかしウィルが15歳で成人するという日に話は大きく転換します。育ての親達をアンデッドにした不死を司る神「スタグネイト」が3人を下僕にしようとしてきます。これに対しウィルは3人と協力し、更に彼をこの世界に転生させた、魂と輪廻を司る女神「グレイスフィール」の加護を得るなどした事で、辛うじて撃退します。
この辺りはこれまで概ね平穏だった生活が終焉するという最初のヤマ場と言え、ブラッドからアンデッド化するまでの経緯を聞いたウィルはブラッドとマリーの昇天を見届けた後に旅立つ事になります。
ただ過去に世界を危機に陥れたという所謂魔王的存在である「ハイ・キング」は話を聞いたウィルがチートと言ったように、チート能力を持った転生者か何かが暴れ回ったという風に見えなくも無いと感じられました。

王道ファンタジーを感じさせる雰囲気と演出

本作はなろう原作らしく異世界転生や主人公が無双する描写といったなろうらしい要素を含んでいます。
しかしステータスオープンやスキルなどといった要素が無い事もあってか、なろうらしさは薄めで、なろう風味の王道ファンタジーといった雰囲気すら感じられます。
ただなろう作品は全体的に人気ジャンルでファンが多いという事もありますので、なろう作品らしさを求めると肩透かしを喰らうかも知れません。
その一方で雰囲気作りや演出は練られていると感じられました。
例えば本作の世界では言葉の組み合わせで呪文の詠唱となり魔法が発動するのですが、その詠唱はオリジナルのままで字幕を付けたりだとか、サブタイトルは毎回画面の片隅に表示されるのですが、それが毎回タイトル回収といった場面で表示され、それが回によってはCパートだったりするのもこだわりを感じました。

『最果てのパラディン』へ至る物語

旅立って人里を探していたウィルはハーフエルフの青年「メネル(メネルドール)」と遭遇します。紆余曲折を経て彼の住む集落が魔物に襲撃されたと聞かされたウィルはメネルを雇うという形で同行させた上に同行させ、魔物を殲滅します。
これを契機に2人は友誼を結び共に旅をする事になります。
この辺り、中盤から終盤まではウィルはなろうでいう所の無自覚系主人公という枠組みになっている様です。彼は200年経っても人類では伝説の英雄と語り継がれている3人に育てられ、英才教育を受けたと言えます。
その為精神力を除いたあらゆる面で人並み外れた実力を持っていますが、本人はそれをはぐらかします。傍から見れば圧倒的なのは明らかなのに、それをなかなか認めない辺りが無自覚系といった所でしょうか。
やがてウィル達は商人の「トニオ(アントニオ)」とハーフリングの吟遊詩人「ビィ(ロビィナ)」を助けて同行する事にし、大陸唯一の都市に到着して間もなく英雄的な功績を挙げます。ウィルはこれまで神官戦士として旅をしていましたが、この功績により領主より騎士に叙され、パラディンとされます。終盤に至ってようやくのタイトル回収といった印象を受けます。
ただその後、「レイストフ」ら冒険者たちを率いて魔物の討伐に赴いた際、自身と仲間の実力差を把握出来ていなかった等の理由から目的を達成出来ず痛み分けとなってしまいます。旅立ちからここまで挫折無くやって来たものの、実力差の誤認が仲間の負傷という形で現れてしまった為、ウィルは己を責めますが、他ならない仲間の何振り構わない説得により立ち直り、最終局面に至ります。
終盤の騎士叙任でタイトル回収した事から、最後は派手に討伐するのかと思っていましたが、最終盤で一筋縄では行かないという展開になったのはなかなかに印象的だったと言えます。

まとめ

本作はなろうこと『小説家になろう』原作アニメですが、いわゆるなろう系のテンプレからは逸脱し、王道なファンタジー作品という印象でした。なろう系を代表する異世界転生要素は薄いですが、幼少期の学習能力や生きる目的といった主人公の人格を成す部分で影響していると言えそうです。
時折作画が怪しい場面が見受けられましたが、演出や雰囲気へのこだわりは感じられました。
また放送時期は未定ながら2期の制作自体は発表されていますので、パラディンとなったウィルのさらなる活躍が見られる事が期待出来そうです。