【劇場アニメ】パプリカ【感想】

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DATA

  • タイトル:パプリカ
  • 公開年:2006年
  • 時間:90分
  • 制作:マッドハウス
  • 監督:今敏
7 out of 10 stars (7 / 10)

夢に入り込んで患者の治療を行う装置“DCミニ”が盗まれ、精神医療総合研究所に勤める若きサイコ・セラピストの千葉敦子は、“DCミニ”開発者の時田とともに島所長の元へと集まる。しかし、所長の島が突然、意味不明な内容の演説をとうとうと語り出す。“DCミニ”を盗んだ者たちによる夢の侵略が現実のものとなり始め……。

概要

本作は筒井康隆氏が1993年に発表した同名長編SF小説を原作として制作され、2006年に劇場アニメとして公開されたSFサスペンス作品です。また制作した今敏監督は2010年に逝去していて本作が最後の作品となっております。
第63回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、第19回東京国際映画祭のanimecs TIFF 2006共同オープニング上映作品となっています。

「夢の共有」を巡るSFサスペンス

本作は刑事「粉川 利美」が見ている夢の中から始まります。いかにも夢といった雰囲気の現実的で無い展開が繰り広げられます。夢の最後辺りでは床面がうねって進みにくくなりますが、足がもつれたりして思う様に進めないのは夢ではありがちでは無いかと思われます。
そして粉川の夢に現れて助けた女性「パプリカ」。彼女は夢のカウンセリングをしているそうで、粉川が見た夢をPC上で再生などが出来たりする様です。一般的に夢は記憶の整理によって発生するとされていますが、そんな記憶の中でも精神的負担になる様な物があって夢という形で現れる場合は、こういったカウンセリングも有効なのかも知れません。
そんな彼女の正体は精神医療総合研究所に勤めるセラピスト「千葉 敦子」で、普段は真面目なクールビューティーといった雰囲気ですが、夢の中に入ると明るい少女の人格であるパプリカに変身する様です。敦子は上司である所長の依頼で、粉川のカウンセリングを行っていましたが、それを可能にするのが研究員「時田 浩作」によって開発された『DCミニ』と呼ばれる装置という訳です。

盗難事件から始まる混乱

そんな折DCミニが盗難され、更にDCミニは誰でも夢にアクセス可能な状態であった事が判明します。対策を講じる間もなく犯人の攻撃が始まり、所長が白昼夢を見せられて窓から飛び降りるも幸い軽傷で済みます。
敦子たちは所長が見せられていた謎なパレードの夢から、かつて時田と共に開発を行っていた「氷室 啓」が犯人と考え彼の住まいへ向かいます。しかし既にもぬけの殻だった上に敦子も攻撃を受けて危険だった所を同行していた「小山内 守雄」に助けられます。
この場面でDCミニで攻撃されると突然白昼夢に移行し、窓から飛び降りるなどといった行動に誘導される様子が視聴者にも分かるようになっており、この辺りはなかなかスリリングに感じられます。
その後も研究所内では飛び降りによる重傷者が発生した事から研究所のトップたる理事長「乾 精次郎」によってDCミニ開発中止が命じられる事になります。ただ乾は他人の夢に入り込むDCミニを快く思わない様子を見せていました。
果たして敦子たちはDCミニを悪用した事件を終わらせる事が出来るでしょうか。

パプリカに襲いかかる夢

やがてある人物の夢に入ったパプリカですが、事件の黒幕らが待ち伏せていて悪夢に襲われる事になります。
この辺りは勢いよく進んでいく様に感じられる一方で、悪夢から覚めたと思ったら覚めていなかったという悪夢があったりと夢を扱った作品ならではの展開が目を惹きます。
それから暴走する悪夢は溢れ出し他の人物が見ていた夢を侵食し、それがさらなる混沌のきっかけとなります。
最早夢も現も関係なく練り歩く謎パレード。
そしてそういった混沌とした空間で黒幕とパプリカの対決によって事件に決着を着ける事になります。

まとめ

本作は夢の共有が可能となった技術について描いています。いわゆる風邪を引いたときに見る夢の様な光景が展開されるのは、夢を扱った本作ならではと言えます。
本作で描かれる夢は自由な様に見えながら黒幕らの介入によってままならない場面も見受けられ、夢を他人と共有する事の難しさを感じさせます。
また特別出演の原作者と今は亡き監督が演じるバー店員も一つの見どころと言えそうです