【劇場アニメ】迷宮物語【感想】

1989年 50分

6 out of 10 stars (6 / 10)
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概要

本作は眉村卓氏の同名小説を原作としています。
しかし小説が長編小説なのをオムニバス形式にするなど、大分変更されていて、単純に原作とは言い切れない部分もあるようです。
『ラビリンス・ラビリントス』はアニオリでりんたろう氏、『走る男』は川尻善昭氏、『工事中止命令』は大友克洋氏がそれぞれ監督を務めています。
1987年に東京国際ファンタスティック映画祭で上映された後VHSでリリースされ、1989年に劇場公開されています。

各話感想

ラビリンス・ラビリントス

本作の導入部という印象が強い本エピソードですが、分割されてエンディングも兼ねています。
謎の世界に迷い込んだ少女と猫を描いています。ちなみに視聴時は少年とばかり思っていました。
本エピソードは明確なストーリーらしき物は見受けられず、風邪引いた時に見る夢の様な映像や、今でいう3Dダンジョン風の映像があったりと前衛的な作品を作ろうとしたのかとも感じられます。
また迷い込んだ少女と猫がサーカス小屋に誘われてTVを見る場面で次のエピソードに続く事から、他エピソードはTVで見た映像と言うことなのでしょう。

走る男

カーレースのチャンピオン「ザック・ヒュー」を描いたらしいエピソードです。
ディストピア的な印象を受ける未来を舞台にしていると思われますが、前エピソードから打って変わって、機械と角張ったキャラクターたちに変わるため若干戸惑ったりもします。
話はカーレースの様子と、それを見守るスタッフや記者などが描かれますが、そのレース予想だにしない結末を迎えてしまいます。
レースシーンと平行する様に、記者がザック・ヒューを目撃する場面が描かれていますが、時系列も含めてどういった関係で描かれているのか把握出来ませんでした。

工事中止命令

南米にあると思われるジャングル奥地で進んでいた、都市開発と思われる工事を中止させる為に現地へ送られた社員「杉岡 勉」を描いたエピソードです。
現地政府と共同で行っていたという444号と呼ばれている工事ですが、クーデターで樹立した新政府は工事を中止する意向の為、企業側は先んじて資材を引き揚げたい模様です。
この工事は完全にロボットで自動化され、人間は責任者である現場監督1人だった様です。いくら自動化されているとはいえ、ジャングル奥地に1人というのは精神的に堪えそうではあります。ましてやネットは通っていないであろうジャングル奥地ですし。
しかし企業本社が現場監督に工事中止の命令を伝えた直後、現場監督が失踪してしまった為に杉岡が送られた様です。
杉岡は地元案内人によって工事現場に置いてけぼりにされてしまいます。そんな彼の前に現れたのは現場を統括しているロボットでした。
杉岡はロボットに工事中止命令を伝えるもののロボットは従う様子を見せません。前任者の失踪や事務所のホワイトボードに残されたメッセージ、杉岡に出される食事も食べ物の体を成さなくなっていくなど不穏な雰囲気が濃厚になって行きます。
ロボットが初期命令を修正出来ないなど、如何にもロボットといった融通の利かなさで、杉岡からの命令を拒絶しているといえます。しかも初期命令を完遂する為なら実力行使も行う様です。
果たして杉岡と444号工事の命運は如何にといった所でしょうか。

まとめ

本作はオムニバス物のアニメですが、エピソード毎に作風、作画が全く異なり、それぞれのエピソードも尖った作品という印象を受けました。
各話の雰囲気はともかく、ストーリー面ではホラー要素があるSFといった風に感じられます。
また各話とも作画には力が入っている様に感じられ、『走る男』はストーリーが分かり難くても作画やそこからの雰囲気で視聴出来ますし、『工事中止命令』は監督が大友克洋で『AKIRA』に通じる物かと感じられます。