【2021年夏アニメ】探偵はもう、死んでいる。【感想】

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DATA

  • タイトル:探偵はもう、死んでいる。
  • 放送クール:2021年夏
  • 話数:12話
  • 制作:ENGI
  • 監督:栗原学
  • 脚本:赤尾でこ、長嶋宏明、寺西南都
4.5 out of 10 stars (4.5 / 10)

「君、私の助手になってよ」
巻き込まれ体質の少年・君塚君彦は、
上空一万メートルを飛ぶ飛行機の中、
探偵を名乗る天使のように美しい少女・シエスタの助手となった。
二人は世界の敵と戦うため、
三年にもわたって世界中を飛び回り、
目も眩むような冒険劇を繰り広げ
-やがて死に別れた。
激動の日々から一年。
高校三年生になった君塚は
日常という名のぬるま湯にとっぷり浸かり、
ごく普通の学生生活を送っていた。
そんな君塚の元に一人の依頼人が現れる。
「あんたが名探偵?」
同級生の少女、夏凪渚との出会いをきっかけに、
過去と現在を繋ぐ壮大な物語が
再び始まろうとしていた- 。

公式サイトより

概要

本作は2019年からKADOKAWAより刊行されている二語氏による同名ライトノベルをアニメ化したものとなっています。

目を惹く冒頭

本作は主人公の「君塚 君彦」が旅客機に乗っている場面から始まります。ごく普通の中学校という君彦ですが、ひどい巻き込まれ体質であるといい、この時も何故かアタッシュケースを持たされて旅客機に乗せられたと言います。それはアタッシュケースの中身は何か危険な物品では無いかと思ってしまう所です。しかし機内には、お客様の中に、探偵の方はいらっしゃいませんかという流れていて、それに応えた探偵の少女「シエスタ」に巻き込まれる事になります。
操縦室で君彦たちを待っていたのはハイジャック犯で、しかも秘密組織『SPES』による改造人間だと言います。その後壁に穴が開か無いかとも気になるような戦闘を経て、ハイジャック犯を警察に引き渡します。
しかしタイトルに惹かれて視聴した場合、秘密組織とか怪人とかバトル物の様な世界観が気になる所と言えます。
その後何故かシエスタは君彦の住まいに転がり込んでいます。君彦は中学生ながら一人暮らししている様子です。そして君彦から学校に広がっているトイレの花子さんの噂が広がっている事は登校しない生徒がいる事を知ったシエスタは学園祭に訪れ、この件を解決します。
それから君彦はシエスタに探偵助手として誘われるというのが1話の主な流れと言えます。
この1話は1時間枠となっていて、非常に力が入っている事が伺えます。作画も綺麗ですし、構成でも前半バトルですが後半は推理物っぽくして、バトル物+推理物なのかと思わせる程度の説得力があります。もっとも作中で探偵が探偵っぽい働きしているのはほぼこの1話のみですが。

しかもこの後1話ラストで、君彦はシエスタと共に戦うも死に別れたと説明されます。まさにタイトル通りと言えますが、1話で散々ヒロインっぷりを見せ付けたシエスタがお亡くなりになったと言われても、視聴者としては素直に受け入れかねると言うのは正直な所では無いかと思われます。

探偵はいない

2話で新たなヒロイン「夏凪 渚」が現れ、君彦を名探偵と見込んで依頼してきます。1年前に心臓移植手術を受けたという彼女は、心臓のドナーを知りたいという物で、ある人物の協力で知った結果は、心臓のドナーがシエスタであるという、衝撃的な物でした。
この時点までは、どうせ死に別れたといってもどこかに潜んでいてシャーロック・ホームズよろしく復活するのだろうと思っていましたが、その線は潰えたと言えます。
続く3話で人気アイドル「斎川 唯」から家宝の宝石を守って欲しいとそれっぽい依頼を受けます。途中、犯人の狙いは宝石では無く、斎川自身では無いかと見られる描写もありますが、君彦はこれを解決し、SPESとの関連を看破します。もう君彦が探偵名乗って良いのでは無いかとも思いますが、君彦自身はあくまで名探偵の助手であるつもりの様です。もっともこの後作中で推理っぽい描写は存在しませんが。
ちなみにシエスタから特殊な心臓を受け継いだ夏凪が名探偵を名乗り、斎川は助手の助手を名乗ります。
さらにシエスタの弟子であったという少女「シャル」の存在が描かれ、もしやハーレムアニメ路線かと思えば、過去編に移ります。

探偵とはいったい

本作の中盤に当たる過去編では、シエスタと君彦の海外におけるSPESとの戦いが描かれます。イギリスでSPESの改造人間ケルベロスによる連続殺人事件を調査する事にしたシエスタですが、君彦を囮にして誘き寄せて罠に掛けます。ケルベロスは首が3つありそうな名前をしていますが、その姿は狼男でした。シエスタを避けて君彦を襲撃するもそれが罠だった上、シエスタと戦う羽目になり当然の様に劣勢だった為か離脱しようとした所を最高幹部であるという「ヘル」に処されてしまいます。
この辺りからほぼバトル物展開といった印象で、シエスタは元々マスケット銃による射撃とキック主体で戦っていたのが、突然ロボに乗ったりする上、SPESもモンスター型の生物兵器を出すなど混沌とした様相を呈してきます。しかもロボは早々に破壊されそれっきりで、ただ単に登場させたかっただけという風にしか見えません。
この様にシエスタは秘密組織と物理的に戦っているだけなので、最早探偵とは名ばかりとなっています。
その後ヘルを激闘の末に撃退した君彦とシエスタの前に現れた少女「アリシア」との日常と別れが描かれた後、SPESの本拠地へ乗り込む事となります。
そしてその本拠地最奥部まで進入した君彦とシャルは敵の正体を知りますが、それは意外と言うより斜め上を行く物でした。
そうした後、ラスボスと決戦とはせずに本拠地から脱出した君彦は色々あってシエスタの最期を見届ける事となりますが、序盤で死に別れる事が確定している上に流れがやや唐突に感じられる為、感情に響きにくいのではと思われました。これが死亡したという証拠が提示されておらず、視聴者視点で死亡が確定していないシュレーディンガーの猫状態であるならもう少し印象は違ったかも知れません。ただ夏凪がシエスタの心臓を受け継いでいるというのも、本作では当然ながら重要な伏線である為難しい所と言えそうです。

俺たちの戦いはこれからだ

終盤、ようやく現在の話が進み、君彦たち3人は豪華客船の旅を楽しむ場面となります。シャルとの再会やシエスタの遺産といった気になる事がありますが、過去編にも登場したSPESの人造人間によって夏凪が拉致されるという危機に陥ります。この人造人間は恐らく原作では中ボス相当と思われる物の、脚本の都合かアニメではラスボスポジになってしまいながらも本来の小物感を取り繕う事が出来ず、夏凪の身体を借りて一時的に復活したシエスタと君彦のイチャつきついでといった感じで雑に倒されてしまいます。
そうした後、夏凪からシエスタの伝言として、君彦たちにSPES打倒の任務が与えられ、まさに俺たちの戦いはこれからだといった雰囲気で本作は終了します。

まとめ

とりあえず最後まで視聴してしまいましたが、タイトルに騙されてしまった感は拭えません。序盤こそ推理っぽい要素や頭脳バトルっぽい要素がありますが、中盤にはそういった要素は消え失せアクションバトル物になってしまいます。
ただラノベ原作という事もあってか、色々伏線が張られていてストーリー自体はしっかりしている様に感じられます。しかし探偵や植物といった言葉の意味や強力なシエスタの心臓、3年間学校に通わず戦っていたにも関わらず何事も無かったかの様に進学している君彦などツッコミどころが多かったり、中盤を中心に雑な戦闘描写があったりやれやれ系とも取れる君彦など残念な要素が目立つ様に感じられました。
特に『探偵』という言葉の意味については再三問い質したい所であります。作中では戦闘ばかりであったりシエスタが依頼人の権利や財産を守るのが役目といった意味の事を言っていましたが守るのであれば探偵である必要性は無いのではと思わざるを得ませんでした。
今後2期があるかは不明ですが、仮にあったとしても個人的には見送ると思われます。