【小説】ラッシュライフ【感想】

2005年 伊坂幸太郎 新潮文庫

7 out of 10 stars (7 / 10)

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。
父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。
幕間には歩くバラバラ死体登場――。
並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。
不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。
巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

新潮社公式サイトより抜粋
スポンサーリンク

概要

本作は伊坂幸太郎氏により2002年に新潮ミステリー倶楽部から刊行され、2005年に文庫化された物です。
2009年には実写映画化されています。

仙台を舞台にした人間模様

本作は仙台を舞台に様々な人間模様が入り乱れ、最終的にはどうなるか・・・といった物語となっています。

  1. 新幹線のなかで会話を交わす画家「志奈子」と富豪「戸田」
  2. 独特の美学を持つ空き巣の「黒沢」
  3. 失業して面接四十連敗の「豊田」
  4. 「高橋」という謎の男を信奉する青年「河原崎」
  5. 愛人とともにその妻を亡き者にしようとたくらむ「京子」

これらのパートが交互に語られます。しかし志奈子、戸田については要所での登場となっています。
そして2~5のパートでは、序盤にプラカードを持った白人女性と展望台が登場し、舞台が同じ場所であることを強調しているようです。展望台には騙し絵が飾られていて、いかにもこの物語を象徴しているかの様に感じられます。

黒澤はあるマンションの一室に忍び込みます。豊田は銃を手に入れ犬を拾います。河原崎は組織の上役から『神様』の解体を持ちかけられます。京子は愛人とともにその自宅へ向かうべく車を走らせます。
これらの話に割り込んでくるのはバラバラ殺人事件という物騒な事件です。バラバラの死体、宝くじ、予言者といった要素がこれらの話に影響し、それぞれの話もリンクしながら終局へ向かって行きます。
しかしストーリー全体としてはややインパクトに欠けた印象です。それと登場人物たちがあまりにも淡々としている様に感じたのは気のせいでしょうか。

しかし、全体としては技巧的ですし、登場人物もうまく書き分けられています。充分楽しめる作品と言えるでしょう。
ただ個人的には志奈子のその後が気になりましたが。

ネタバレあり感想

本作のストーリーについて、読み始めは同時進行かと思っていましたが、終盤に至ってどうやらずれているらしいことに分かって来ます。
しかし河原崎が黒澤より前、といったような断片的なことしか分かりません。作者も同時進行に見えるように書いていますのでなおさらです。個人的には文庫版P318の辺りが感心しました。こういった事から意図的にそういう風に書いている物と思われます。

順番としては、河原崎→黒澤→京子→豊田といった順番になっています。それぞれ一日ずれているというわけですが、これも叙述トリックの一種といっても良いかもしれません。やや複雑でインパクトに欠けますが。

河原崎は殺してしまった塚本の死体をマンションの一室から運び出すときに黒澤の手を借ります。

黒澤の同級生、佐々岡は妻の京子に離婚を持ちかけます。

京子は計画に失敗した後、捨て犬に当たろうとしたとき豊田に止められます。

こうしてみると、それぞれのパートの序盤に前のパートのラストが描かれているわけですが、意識して読まないと非常に気付きにくいかも知れません。ちなみに豊田は若者に追い掛けられているところを河原崎に助けられるわけですが。

まとめ

本作は作者である伊坂幸太郎氏の出世作という声もある一作です。
やや複雑なストーリーを読ませてスッキリさせる構成力は流石といった所ですが、作品が技巧的すぎてインパクトに欠ける印象もあります。
一読して気になる箇所があれば精読して見るのも良いでしょう。