【PS2】Remember11 -the age of infinity-【感想】

2004年 KID

7 out of 10 stars (7 / 10)

ストーリー
雪山に飛行機が落ちた。
しかし、生存者は吹雪に閉ざされ下山できない。
男と女、交替する人格を操り、遭難者を救い出せ。

雪山編
2011年1月11日、スフィアに向かっていた冬川こころの乗った飛行機が朱倉岳に墜落。
この時、彼女は意識を失った。
その後、彼女が目を覚ました時にはなぜか朱倉岳からは遠いスフィアにいた。
彼女は混乱のさなかに再び意識を失い、目覚めた時には墜落現場近くの避難小屋に他の3人の生き残りと共にいたのだった。
そして彼女は、生き残った3人と共に隔絶された空間から脱出することを余儀なくされる。

スフィア編
舞台は、正式名称が“隔離と保護のための特定精神医療施設”という“スフィア”。
1月11日午後4時、優希堂悟はスフィアの時計台にいた。
しかし突然、彼は謎の影に追われ時計台から転落する。
そして、一部の記憶を失った上に、突如、朱倉岳の一角にある避難小屋で目を覚ますという奇妙な現象が発生する。

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概要と粗筋

本作は「infinity」シリーズ3作目に当たりますが前2作と事なりサスペンスADVを謳い、脱ギャルゲーを目指しています。その中身は如何な物だったでしょうか。
時は2011年1月11日、羽田発、稚内行きの小型旅客機「HAL18便」は乱気流の中雪深い山中「朱倉岳(あかくらがけ)」に墜落してしまいます。同機に乗っていた「冬川こころ」は奇跡的に生き延び、他の生存者とともに山小屋にたどり着く。
こころのほかに生き残ったのは登山家の「黄泉木聖司」、自称OLの「黛鈴」、機内でこころの隣にやってきた小学生の男子「楠田ゆに」の三名、彼らはこの山小屋で救助を待つことにするが、やがて『2011年7月4日』の新聞が見つかり、その記事には『男女三名の遺体が発見、唯一の生存者は楠田ゆにくん』と言った記事が書かれていました。未来の新聞記事、絶望的な内容、一同は動揺します。そして、飢えや寒さといったものがこころ達に近寄ってくるのでした。
一方、北海道は礼文島の西、日本海に浮かぶ「青鷺島(あおさぎしま)」にある施設「スフィア」、ここにある時計塔の頂上に一人の男の姿があります。男の名は「優希堂悟」やがて雷鳴が轟き、背後から何者かに襲われた悟は転落する。それを発見した「内海カーリー」によって助けられるが、悟は記憶を失っていた。その後も何者かに襲われる悟、この施設には他に、「涼蔭穂鳥」という少女が収容されており、なぜか楠田ゆにが滞在しています。
以上が粗筋となります。

死にゲー

上に挙げたキャラクターの内こころと悟が主人公で、前作同様二人の視点で事件の全容を調べるといった形をとっています。
一見関係のない二つの事件、しかも二箇所にいるゆに、とそういった謎が出てきますが。主人公のほうは方や冬山でのサバイバルで、方や謎の殺人鬼とのサバイバルでどちらも充分危機的状況なのに、さらに『人格交換』人格が入れ替わるという謎の現象に見舞われます。
そこで雪山での危機を乗り切ったかと思えば、殺人鬼と対峙するといった展開などになったりと主人公は常に命の危機に晒されています。
その結果ゲームとしては多くの死亡エンドをもたらしていて、少なくともギャルゲーの体裁を取っていた前作と異なり、何度も死にながら進んでいく死にゲーの様相も呈して来ます。
多くがナイフで刺されるか凍死ですが、中には黄泉木が静かに発狂する「山小屋組ジェノサイドエンド」などサスペンスどころかサイコホラーかと思ってしまう様な結末も存在します。

解かれない謎

話の方はと言えば最初は必ずこころ編からプレイして、そのラストで煙に巻かれてから悟編をクリアして、さらにわけが分からなくなる、というのが本作の概要です。
すべての謎は解けないのか? と聞かれるかもしれませんが、表向きに見る限り肝心な部分は未解決、ラストに爆弾を放り込まれます。悟編もクリアした後、当時ネットで調べてみたところ。『第三のシナリオがある』とか『完全版が出る』といった声が見受けられました。しかしどちらもない辺り、あれが製作者の構想どおりだったと解釈するほかありません。
当時プレイ後購入したビジュアルファンブックには、監督中澤氏の声で『多くの方に難解というか、説明不足を感じさせてしまったのは最大の反省点(以上抜粋)』とありますのでこれはこれで間違いないのでしょう。
とはいえ、未提示の情報があった事も確かなようで、それで真相を突き止めるのは非常に難しいと思われます。
ですが、ゲームとしてだめなのかといいますと、そんなことは全くありません。寒くて暗い冬山を感じるこころ視点、殺人鬼の正体を探る悟視点、ストーリーは常にサスペンスをはらんでいて、この辺りは前作の僅かな弱点を見事克服しています。
そういった事もあり終盤に至るまでの評価は前作に匹敵します。
 

ネタバレあり感想

この先はネタバレを含みます。
さて、色々述べてきた本作のシナリオですが、全く理解不能な代物でしょうか。
これに関しては自分から言えることは多くありません。分かっていることから述べていきましょう。
まず『第三の人格』に関してですが、これは『カーリーのお腹にいた胎児』と見て間違いないでしょう。
実際こころと悟は『母親の胎内にいるような感覚』を何度か体験しています。これはこれが第三地点だったと考えたほうが妥当です。また、TIPSでも子供の残酷性について述べた部分があり、これはその事実を示唆しているものでしょう。
本作ではBADエンドで明らかになる事実があり、『ユウキドウ計画』がその最たるものです。そのときに起こる出来事、『悟』の姿をした人物が悟を刺し、『榎本』の姿をした人物に対して「優希堂」と呼ぶ。このことから考えると、悟と榎本はもともと人格が入れ替わっていて、しかも記憶が『アイツ』のものになっていた。大体はこういうことなのでしょう、これによりラストの黛の台詞が理解できるわけです。
そのときに『榎本』から得た情報から考えると、『アイツ』とは『プレイヤー』と考えられます。オープニングでいう『三位一体 神でも悪魔でもないもの』三つの視点すべてを把握できる者、そういうことでしょう。そういった事を踏まえると、本作は『プレイヤーを標的に記憶の迷路にはめようとした』物だと思われ、そういった事からすれば、『プレイヤーが黒幕』の前作を超えようとしたのでしょう、恐るべきチャレンジ精神、残念なことに空回りしましたが。

まとめ

前作は名作でした、その続編となれば、プレッシャーは当然大きいでしょう。その結果このようなものになってしまったといえば、納得できないことはありません。
本作もラストや謎の未解明といった点を除けばは評価できます。ラストも『解釈』という形で解決できないことはありませんが、やはり前作のような感動にかけるのが惜しまれます。