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- タイトル:地獄星レミナ
- 作者:伊藤潤二
- 刊行年:2005年
- 巻数:全1巻
- 出版社:小学館
- レーベル:ビッグコミックススペシャル
(7 / 10)
我々の宇宙と別の宇宙をつなぐ「ワームホール」から出現した未知の惑星。その発見者である大黒博士は、一人娘・麗美奈の名にちなんで「レミナ星」と名付けた。この異次元惑星の発見は絶賛され、麗美奈も芸能界デビューを果たすなど、一躍時の人となる。だが、レミナ星が惑星を次々と消滅させ、地球消滅の危機が伝えられると、群衆の態度は一変し、ついには大黒親子の命が狙われる事態に…
Amazonより抜粋
概要
本作は『週刊ビッグコミックスピリッツ増刊 Casual』にて2004年から2005年に掛けて連載された作品です。
2021年7月、本作の英語版『Remina』が米国のアイズナー賞にて最優秀アジア作品賞とBest Writer / Artist部門をダブル受賞しました。後者は『伊藤潤二短編集 BEST OF BEST』と同時受賞となっています。
地球を滅ぼす星と少女
冒頭、地球が滅亡寸前である事が説明され、1人の少女「麗美奈」が暴徒化した群衆によって処されようとしていて、上空には不気味な星が迫っている様子が描かれた後、過去へ遡って行きます。
そもそもの始まりはこの前年、麗美奈の父親である大黒博士がワームホールから出現した星を発見し、命名権を得た事から娘の名前から『レミナ』と名付けた事に端を発します。
普通に見れば大黒博士の親バカ故に行ったのでしょうが、このレミナ星がとんでもない星だった訳です。
この件で注目を浴びた麗美奈は陰のある少女といった雰囲気ですが、スカウトされ芸能界入りし、元々知名度が高くなっていた事もあって、国民的人気を得ます。
しかしその一方でレミナ星は不穏な動きをしていて不規則に移動し、その度に周囲の星が消滅していってました。
そしてある契機からレミナ星は地球目指して移動し、太陽系の惑星をも次々と消し去って行きます。
当初はブラックホールの様に吸引しているのかと思っていましたが、太陽系にやって来て明らかになった実態は触手の様な物で星を絡め取って食べるという物理的かつ豪快な物でした。
このレミナ星ですが、後に目の様な物がある事も分かり、実は天体サイズの生物では無いかとも思えますが、この際どちらでも変わりなさそうです。
パニックと暴徒
この頃になるとレミナ星接近のニュースは世界中に伝わり、人類はパニックに陥ります。
人類側もレミナ星周辺に有人探査船を派遣しますが、墜落し帰ってくる事はありませんでした。もっともこの時点で探査船というのも遅きに失した感があり、接近される前に弾道ミサイルでも打ち込んでおくべきではあります。一応後でミサイルは使用されますが、明らかに手遅れといった状態でした。
地表ではパニックに陥った群衆たちが大黒博士と麗美奈親子がレミナ星を呼び寄せているというデマを信じ、親子は捕らえられてしまいます。この動きには麗美奈こそレミナ星の化身であり、麗美奈を亡き者にすればレミナ星も消えると出張し扇動する者がいました。普通なら信じられないデマですが、地球滅亡の危機でパニックに陥った群衆はそれを信じてしまいます。
そして大黒博士が群衆によって処され、麗美奈の番になった所で、複数の要因により地上は大混乱に陥ったため、麗美奈は命拾いします。
麗美奈と地球の運命は
仲間に助けられて一度は命拾いした麗美奈ですが、内輪揉めや裏切りを経た後、1人のホームレスを巻き込んで捕らえられてしまいます。
ホームレス共々処されそうになった所で、レミナ星が地球に対して物理的な干渉をしてきた為、地上は混乱の極地に達し麗美奈はホームレスに助けられ再度逃走します。
そこからの展開は非常に混沌とした物になりますが、基本的にはいつの間にか主人公ポジションに収まったホームレスが麗美奈を助けつつ逃走して行くという展開となります。しかしレミナ星の干渉によって地上では様々な災害などが起こったり、常識外の事態が発生します。
そもそも群衆から逃げ切っても地球が消滅しては無意味という事もあって話の着地点が読めません。
果たして麗美奈たちと地球の運命は如何にといった所です。
短編
本作には長編である表題作の他に、短編『億万ぼっち』が収録されています。
人が集まると謎の集団失踪をして、裸で縫い合わされた死体となってしまうという怪事件を扱っています。
謎だらけの不条理なホラーといった作品ですが、恐らく人が密閉空間で集まると何か起こっているのかと思いました。
またラストシーンも解釈が分かれそうですが、元々そっち側の人間だったのか、ショックで精神に異常をきたしたのではと思われます。
まとめ
まず結構インパクトある作品という印象を受けました。
SFパニックホラーと言えるかと思われますが、レミナ星地表の様子などは不気味さろ多少のグロさがあり、一線を画しているように感じられました。
中盤まではパニックホラー的要素が強いですが、中盤以降の追跡劇はドタバタした受けたのが印象的でした。