【漫画】レネゲイド【感想】

5 out of 10 stars (5 / 10)

「不安の種」「後遺症ラジオ」の中山昌亮が描くネット社会に潜む恐怖!もしもある日突然、大金と共に殺人依頼が一方的に送りつけられたら、あなたは……!?
今やネット環境なしには成立しない現代社会で、そこに棲まう「匿名者」たちが悪意を剥き出す!! 現実に起こりうる[リアルタイム・サイコ・サスペンス]!!

Amazonより抜粋
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DATA

  • タイトル:レネゲイド
  • 作者:中山昌亮
  • 刊行年:2002年
  • 巻数:全1巻
  • 出版社:リイド社
  • レーベル:SPコミックス

概要

本作は2001年にコミックリイド爆にて連載されていましたが、同年に掲載誌の廃刊に伴い、単行本一冊にまとめる為に打ち切られた作品です。

一介の大学生にねじ込まれた殺害依頼

大学生である主人公「田嶋 利明」はネット上で殺し屋サイトを運営していました。
殺し屋といっても当然ながら現実で暗殺を行なう訳ではなく、復讐対象の画像を提供して貰い、それでコラージュを作ってネット上に流すというおふざけの様なサイトでした。
今は以前より肖像権という概念が浸透してくていますので、他人の写真を当人に無断でコラージュして公開するというのは問題が出てきそうではあります。
そんなサイトを運営していた田嶋の元に殺害依頼のメールが送られて来ます。
たまに本物の殺し屋サイトと勘違いした依頼が来るらしく、田嶋は今回も一笑に付して流そうとしていましたが、報酬が4千万円という法外な金額でした。
こんな金額を見せられると、イタズラだろうと考える所で、田嶋も同様だったと思われます。
しかし翌日、帰宅した田嶋が見たのは自宅内に前金と称して置かれた2千万円でした。しかし施錠された室内に何者かが侵入した形跡はありません。
とんでもない形で大金を贈られた田嶋は、考えつつも依頼対象である「御崎 志津」を確認する事にします。志津はファミレスでアルバイトしている女性で、彼女を見た田嶋の感想は大金投じてまで命を狙われる様には見えないという物でした。

正体不明の相手に狙われた男女

所でこの依頼には4月10日までと期日が設けられていました。この頃田嶋の周りで410という数字が、まるで圧力を掛けるかのようにあらゆる形で付き纏います。やがてコンビニの故障したレジから¥410という数字のレシートが出続けるといった物を見せられ、田嶋は精神的に追い詰められて行きます。しかし依頼主もこんな芸当が出来るのなら、ただの学生に殺害依頼など出す必要なさそうな気もするのですが。
しかし追い詰められた田嶋はヤケクソになって志津に襲いかかり失敗。当然殺人未遂で逮捕されます。しかし田嶋のサイトや現金といった依頼の証拠は消え失せ、謎の圧力もあった様で田嶋はすぐに釈放されます。殺害依頼する様な輩が警察にも通じているというのは危険という気もします。なお田嶋が帰宅したら現金は戻されていました。
その後志津は夜うっかり居眠りしている間に、室内一面に本人の写真が張り出されていました。まるでストーカー物のサイコホラーかとも思ってしまいます。しかし本当に田嶋へ殺害依頼した必要性について問い質したくもなりますが、愉快犯という可能性も出てきます。ちなみに映像や音声も録っていてビデオやラジカセでしているという徹底ぶりです。この件がきっかけで渋々手を組む事になった田嶋と志津ですが、学生とアルバイトの2人では到底太刀打ち出来ない相手である事は明白といえます。その為田嶋は大学の先輩でライターをしている「今井 司」、今井に紹介されたハッカー「京本 蛍」に協力を依頼し、正体不明の相手に挑むのでした。

尻すぼみ

序盤は相手の掴みどころが無く、不気味な印象を受けますが、田嶋たちが協力を得た中盤、相手は急に直接的な手段に出始めます。
元々圧倒的な謎の力を持っている相手です。謎の力というのはクラッキングなど情報収集能力や警察に圧力を掛けられる権力などといった力を兼ね備えた悪の組織みたいな物です。
そんな相手が少しその気になればたちまち追い詰められてしまいます。
それを考えると終盤明らかになる真相は残念な印象を受けました。幽霊が枯れ尾花だったとかより落差が大きくて、中盤までにあれは何だったのか、途中で相手の中身が変わったのかと思う程色々ツッコミたい気持ちが出てきます。

まとめ

本作はネットの匿名性を扱ったサスペンスとなっております。
掲示板やSNSにおける無責任なその他大勢が事件の背景にあります。テーマとしては悪くないのですが各々の事件に関する細部の説明が無く、大雑把な印象を受けます。
その為不気味な印象を受ける不気味な事案に比べると終盤は尻すぼみと感じました。
冒頭でも記載しましたが、本作は掲載誌の廃刊により打ち切りとなっています。その為当初の構想と異なる畳み方をせざるを得なかった可能性もあります。不幸な打ち切りがなければ異なる展開もあったのではと思わせる惜しい作品でした。