【劇場アニメ】龍 -RYO-【感想】

2013年 25分

7 out of 10 stars (7 / 10)

慶応2年(1866年)尊皇攘夷、倒幕、佐幕さまざまな思想・主義に日本が揺れていた時代。
恩人である坂本龍馬と中岡慎太郎を護れなかった事を強く悔やむ少年・RYOは、
嵐の蝦夷・江差沖にて座礁した五稜郭政府旗艦・開陽の傾く甲板で土方歳三と対峙する。
憂国の想いが熱い志を持ち、幕末を駆け抜けた者たちを通して、
志の大切さと人や夢を信じる心の大切さを描く幕末剣客アニメーション。

GONZO公式サイトより抜粋
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概要

本作は2013年に「アニメミライ2013」の1作として公開された作品です。
主人公の少年を介して、歴史上の人物としては有名でもある坂本龍馬を掘り下げていく作品となっています。

歴史をベースとしたアニメ

本作は冒頭、主人公である少年が軍艦の甲板上で土方歳三と対峙する場面から始まります。
どうやらこの軍艦は幕府が所有していた開陽丸で、「明治元年」「蝦夷地江差」とテロップが入っている事から、戊辰戦争末期、箱館戦争時の北海道江差沖で座礁沈没する辺りの出来事としている模様です。
そんな状況の為か、2人以外見当たらない甲板上で荒れ狂う海を背景にして主人公は土方を非難した後、話は過去へ遡っていきます。
言うまでもなく時は幕末動乱の時代、主人公と幼馴染は薩英戦争で両親を失い、大久保利通の元で幼馴染らと共に剣術を教えられながら暮らしていました。そんな主人公たちは大久保の元ではそれぞれ色名で呼ばれていました。主人公は「白」幼馴染は「黒」といった風にです。
そんな中、大久保を訪れてきた坂本龍馬と出会いますが、龍馬は寺田屋事件で負傷し湯治を兼ねたハネムーンで薩摩を訪れてきていました。主人公はその龍馬と交流の後に龍馬の護衛役として引き取られます。
その際、白と呼ばれていた主人公は龍馬から「RYO」という名前を与えられます。龍馬や妻お龍と区別する為というのもあるのかも知れませんが、龍馬の一般的なイメージの一つである先進性を表していると思われます。それにしてもアルファベットの名前というのは現代の役所でも受理されないのでは無いでしょうか。ただアルファベットとは言え、自分の名前から一字を与える様な名前を付けている事から、単なる護衛役では無く養子という一面もあったのかも知れません。

幕末の京都にて

そうして主人公は京都で活動する龍馬に付き従います。
時には土方らが率いる新選組と小競り合いしたりする合間に拾った猫をかわいがったり、軍鶏を選んだりといった日常場面を挿みつつ進んで行きます。
しかし謎の暗躍を見せる黒など、不穏な場面も映るようになり、近江屋の場面に繋がって行きます。やはり歴史をベースにしている以上、近江屋の看板を見ただけで起きる出来事を察してしまいます。

まとめ

本作は幕末という歴史を扱っていますが、史実の出来事としては薩英戦争と近江屋事件が描かれる程度となっています。
これは本作が短編で史実をなぞるだけの尺が無いという事もありそうですが、主人公と龍馬の関係性や龍馬の人物像を掘り下げるのが優先した結果とも思えます。
しかし龍馬に関するエピソードは史実に沿っていますし、序盤の修練的な戦闘場面など短いながらも総じて見応えがあると感じられました。
ただ近江屋事件の犯人などについては一般的な考察とは少し異なっているという印象を受けましたが、それも歴史上の未解決事件を扱った作品の醍醐味と言えるかも知れません。