【漫画】サユリ【感想】

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DATE

  • タイトル:サユリ
  • 作者:押切蓮介
  • 刊行年:2010年 – 2011年
  • 巻数:全2巻
  • 出版社:幻冬舎コミックス
  • レーベル:バーズコミックス
7.5 out of 10 stars (7.5 / 10)

この家に住んでた人って…どんな人だったの…? 夢の一戸建てマイホームへと引っ越した神木家。しかし、家族7人揃ってのありふれた幸せを満喫する間もなく次々と不幸で不気味な出来事がこの一家にふりかかる…。鬼才・押切蓮介の超絶ホラー、開幕――。

Amazonより抜粋

概要

本作は幻冬舎コミックスの月間マンガ誌『コミックバーズ』にて2010年3月号から2011年5月号まで連載されていたホラー漫画です。
マイホームを手に入れた平凡な家族を襲う理不尽な悲劇を描いています。

一戸建てに移った一家を襲う悲劇

本作は主人公「神木 則雄」とその家族である神木家が舞台となる一戸建て住宅へ引っ越してくる場面から始まります。神木家は三世代7人という昭和を思わせる家族構成で、則雄は三人姉弟の真ん中ですが長男にあたります。
また件の住宅は築40年と古く、恐らく予算の関係もあったのでしょうが、父が見晴らしの小高い丘という立地に拘ったという事が大きい様です。
しかし新しい住処に移って心機一転という所ですが、僅か数日で睡眠不足だった様子の父が心筋梗塞で亡くなってしまいます。
この事を皮切りに、なにか勘付いて様子の祖父が倒れ、姉は精神の均衡が崩れて行きます。
更に不幸は留まる所を知らず、則雄と同じ部屋で寝ていた弟が蒸発し、退院して帰宅した祖父も亡くなってしまいます。
それから霊が見えるという同級生の女生徒「住田 奈緒」が則雄を訪れてきます。彼女は一度則雄に対して女性の姿が見えると忠告の様な発言をしていましたが、則雄が数日登校しなかった為気になって訪ねた様です。近くの公園で奈緒と会った則雄はこの1ヶ月ほどで家族を襲った不幸の数々を嘆きます。確かにひと月程度でこれだけの不幸が起これば登校するのも難しいかも知れません。
それから奈緒は則雄に案内されて実際に神木家の家屋に入りますが、彼女は家に巣食う者の洗礼を受けて怯える事しか出来ませんでした。
更に追撃ちをかける様に間もなく姉が壮絶に失踪し、惨状に絶望したのか母が自殺します。
こうして引っ越してからひと月程度で神木家は則雄と祖母だけになるという壊滅状態に陥ってしまいます。そして絶望に打ちひしがれた様子の則雄を見てか、家に巣食う者の哄笑が木霊するのでした。

緩急ある展開

本作は前半と後半でやや雰囲気が異なります。前半は神木家を襲う理不尽としか言いようがない程の不幸が多少ショッキングな描写を交えつつ怒涛の様な展開で描かれていて一気に読ませてくれます。
そんな中でも家屋内の暗闇やテレビなどが不穏な雰囲気を持たせています。
そして後半は一方的にやられるがまま則雄たちが対抗する展開となります。

少女の怨霊 vs 老婆

後半に入ると、物語開始時点で認知症を患っていた祖母が目を覚まします。かつて厳しく矍鑠した様子から則雄たちに恐れられた風にも見える祖母ですが、2人だけになってしまった一家の状況を見てこのままで良いのかと則雄を奮い立たせようとします。
そして祖母は則雄に対し、怨霊に付け込まれ無いように心身を強く持つようにするために規則正しい生活を送らせます。
そうして行くうちに落ち着きを取り戻した則雄は家族の無念を晴らしたいと考える様になります。
そんなある日則雄たちは家に巣食う怨霊の正体を知りますが、それを元に調査を進めた祖母は則雄置いてけぼりで決着を付けに行くと言い放ち単身出掛けて行きます。1日で帰ってくると行っていましたが、則雄1人になったスキを見逃すはずもなく、怨霊がここぞとばかりに攻勢に出ます。
とにかく精神攻撃で則雄を弱らせようとする怨霊とそれに耐える則雄といった状況ですが、則雄が弱っていくのを察した奈緒が神木家に向かっていました。
果たして則雄たちは祖母の帰宅まで持ち堪える事が出来るのでしょうか。

まとめ

タイトルにもなっている少女の怨霊よりも則雄の祖母が存在感を放っている様に感じられる本作。怨霊は精神攻撃が中心で姿を現す事が少ないという事もあるのかも知れません。
また前半は恐怖一辺倒なのに対し、後半は対抗しながら解決を目指す展開ですが、全体的に短めなために話の造りが分かりやすくなっている印象です。
またストーリー展開は理不尽ではあるものの、きついホラー描写は多くない様に感じられ、ホラーに慣れていない方でも読みやすいかも知れません。
そんな本作ですが、家族というのもテーマとして描かれている様に感じられ、則雄は事ある事に怨霊に奪われた家族やこの家で一緒に過ごした短い日々を思い出したりします。
そして一方の怨霊もそれに餓えていた事が諸々の原因と言えます。
特にラスト付近の展開はそのテーマ的な部分が強く出ている様に感じられました。