【スペシャルTVアニメ】金田一少年の事件簿 死神病院殺人事件【感想】

医療ミスで患者を死なせた医師が自殺し“死神病院”と噂されている聖正病院に食べ過ぎで入院することになったはじめ。そんな中、外科部長が何者かによって殺害される事件が起こる。調査に乗り出したはじめは深夜、黒マントの不気味な人影を目撃する。

U-NEXTより抜粋
5 out of 10 stars (5 / 10)
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DATA

  • タイトル:金田一少年の事件簿 死神病院殺人事件
  • 放送年:1997年
  • 時間:48分
  • 制作:東映アニメーション
  • 脚本:遠藤明範

概要

本作は『金田一少年の事件簿』シリーズの一つとして制作された同名ドラマCDをベースとしたスペシャルTVアニメです。放映日は1997年10月13日で第一期の『オペラ座館殺人事件』と『金田一少年の殺人』の間に放送されました。

『死神病院』で起きた事件

本作では舞台となる、聖正総合病院の外科部長が殺害された現場を「剣持 勇」警部ら捜査陣が現場検証を行っている場面から始まります。現場は遺体の上にブロンズ像が乗っていて、一見圧殺されたかの様に見えます。
それから主人公である「金田一 一」が餃子の大食いチャレンジに挑戦した結果という情けない理由ながら救急搬送されてきます。そして一の幼馴染みでヒロインの「七瀬 美雪」が付き添っていました。
そしてこれ幸いとばかりに一を捜査に駆り出す剣持。点滴した状態の一をスタンドと一緒に引張っていく様子はシュールな趣きを感じなくもありません。
それから事情聴取が行われ、看護師長、院長の次女である看護師、次女の婚約者である外科医、車椅子姿の院長長女、長女の婿である医局長といった濃厚な人間関係となっている病院関係者から話を聞きます。
ただその中で被害者が握っていた鈴を見せると一様に動揺した様子を見せるなど、事件の動機に心当たりがありそうな雰囲気を見せます。
その後酒に溺れた院長の痴態を見せ付けられたり、病院を死神病院と呼び鈴を付けた老婆が現れたり、いかにも事情通といった様子の入院患者と遭遇した後の晩、一と美雪の前に黒いローブをまとい仮面を付けた明らかな不審者が現れさらなる事件が起こるのでした。

雰囲気

有名推理マンガの一時間スペシャルアニメという位置付けである本作。その舞台設定や登場人物などはいかにも推理物といった雰囲気が出ています。
まず舞台である聖正総合病院の建物は木造の様で、建物内も屋根裏部屋があったりと所々にレトロな雰囲気があったりします。
そして聖正家を中心とした関係者の人間関係もいかにもといった雰囲気を感じます。更に聖正家には故人となった長男がおり、院長はその死が原因で酒に溺れ、次女は婚約者にその面影を見ている様なやり取りがあったりしています。
その一方、大西洋上に浮かぶ客船内で「明智 健悟」警視は雑誌記事の「醍醐 真紀」と知り合います。しかし船内に「怪盗紳士」からの予告状が届いていました。まさに明智警視と怪盗紳士の対決といった様相を呈してきます。そして聖正総合病院の事件と怪盗紳士の件がどの様な形で関係してくるのかといった感もあります。

尻すぼみ

そして病院内を調べる一。決定打に欠けるといった様子で行き詰まった感がある時、剣持が忘れていた携帯が鳴ります。
その電話は明智からで、彼は怪盗紳士の企みは阻止したものの捕らえるには至りませんでした。電話で明智は一に対しその報告と抽象的なアドバイスをして行きます。ちなみに2つの事件が関わるのはここだけです。
それを受けて、謎はすべて解けたと言い放ち関係者を集めて推理を披露し犯人を指摘する一。金田一少年の事件簿に限らず推理物のお約束とも言える場面です。
しかし本作に於いては一が違和感を感じたという視覚情報とそれに立脚した状況証拠しか無いという、有名推理シリーズに連なる作品でありながらトリック解明以外は雑推理という何とも残念な印象を受けます。これ犯人はどうとでも言い逃れ出来たのでは無いでしょうか。

まとめ

本作は推理物としては残念な印象を受ける作品と言えます。
しかし舞台である病院の雰囲気や関係者の人間関係といった舞台設定は決して悪くありません。
調べた所、原作ドラマCDと舞台設定や登場人物はおおよそ同じながら事件そのものは別物になっている様です。
思うに限られた尺にファンサービス的に明智警視と怪盗紳士の対決を無理矢理継ぎ足した結果、事件そのものは薄味になり推理は超絶薄味になったのかも知れません。
そもそもスペシャルアニメとは言え一時間枠であり、尺としては二時間ドラマの半分しかない為、大掛かりな事件を描くのは難しかったのかも知れません。