【2022年アニメ】サマータイムレンダ【感想】

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DATA

  • タイトル:サマータイムレンダ
  • 放送クール:2022年春、夏
  • 話数:25話
  • 制作:オー・エル・エム
  • 監督:渡辺 歩
  • 脚本:瀬古浩司

幼馴染・小舟潮の訃報を聞き、和歌山市『日都ヶ島』へ2年ぶりに帰郷した網代慎平。
葬儀に参列した慎平は、親友の菱形窓から「潮には他殺の可能性がある」と打ち明けられる。
さらには潮の妹・澪までも潮は殺されたと訴える。
日都ヶ島には、自分と同じ姿の「影」を見たものは死ぬという伝承があった。
生前、澪は潮の「影」を見たという――。

公式サイトより抜粋
9 out of 10 stars (9 / 10)

概要

本作は集英社のWebコミック連載サイト及び漫画アプリ『少年ジャンプ+』にて2017年から2021年に掛けて連載された田中靖規氏による漫画のアニメ化作品です。
2022年の春、夏アニメとして放映されましたが、WEBではDisney+の独占配信でしたが、同年11月に独占配信解除されています。
また2023年にはコンシューマ用ゲームもリリースされています。

故郷の島で遭遇した怪異

本作は主人公である少年「網代 慎平」が帰省する場面から始まります。慎平は東京に住んでいましたが、幼馴染である「小舟 潮」の訃報を聞き、葬儀の為に和歌山県和歌山市の離島『日都ヶ城』へ帰って来たのでした。
その帰省の船上でうたた寝した際、潮から妹の澪を守って欲しいと頼まれる夢を見た慎平は予感めいた物を感じながら故郷の島に足を降り立つのでした。
そして慎平は親友で医者の息子「菱形 窓」から潮に他殺の疑いがある事や、潮の妹「小舟 澪」から潮が亡くなる前に、潮の『影』を見たと聞かされます。影というのは島に伝わる言い伝えで、自分と同じ姿をしていて見たものは間もなく亡くなるというドッペルゲンガー的な存在の様です。そして影を見て亡くなる事を島では『影の病』と呼んでいたそうです。
それらと同時に潮は亡くなる際に少女「小早川 しおり」を救出したそうですが、その一家が消息不明になるなど不穏な雰囲気が出て来ます。
そこで慎平は潮の死と影の病が関係しているのか調査する為、伝承に詳しいであろう神社の宮司に話を聞きに行こうとした所、突如現れた澪の姿をした存在に2人とも殺害されてしまうというのが1話の展開となっています。これから調査して謎を明かして行く展開になるのかと思った矢先に殺害されてしまうというのはインパクトのある出だしと言えます。

ループで島に巣食う怪異と戦う

2話では1話と同じく、慎平が船上で目を覚ます場面から始まります。そして前話と同じ様な流れになります。視聴者はそれを見て、何らかの理由でループしたのだろうと察しますが、当然ながら当の慎平は事態が呑み込めません。
ただ帰宅した晩に小早川家調べようとするという前回と違う行動を取ったため、澪の姿をした存在が駐在所の警官「凸村 哲」を殺害する場面を目撃します。
さらにそのコピーを作り出し、オリジナルの遺体を一瞬で消滅させる事で別の存在がオリジナルに成り代わる事を知りますが、その直後に見つかり殺害されてしまいます。
そして大きな転機となる3周目は下船した場面から始まり、ループの起点がズレている事が分かります。
その後慎平はこの周回で自分がループしている事を意識して動き出し、小早川家を調査したり凸村が殺害される事を回避させたりするも影については掴めず、影澪の姿を動画撮影して澪に見せる事で注意を呼びかけたり、窓に影について相談し協力を依頼します。
そして帰省して2日後、島の祭りがあり夜に慎平は潮の影と遭遇します。澪や凸村らの影と違って自らが影であるという自覚が無い影潮ですが、既に葬儀まで済ませている潮が堂々と闊歩しているのは言うまでもなく不味いため、ひとまず姿を隠させて祭り会場で窓や澪と合流しようとするも澪と自らの影に襲撃されます。重傷を負うも影に詳しい女性「南方 ひづる」に助けられます。
そうして祭り会場に到着した慎平ですが、そこは影による惨劇の場と化していました。
そして対象の影を作成する『スキャン』で対象の人格、記憶をコピーする事から慎平の影を通じて、影を統率する存在「シデ」にループを知られてしまいます。
そこでシデは慎平をすぐには殺さないという手段を取るも、影潮がシデに飛び蹴りを浴びせて慎平の拘束が解かれた隙にループに成功させます。ループする直前に慎平が見たのは島の破滅と少女の姿をした影の源である存在「ハイネ」でした。
そうして慎平と影潮を中心にして、澪や窓とその妹で澪の親友である「菱形 朱鷺子」に凸村らも巻き込み、ひづるとその協力者であるマタギ「根津 銀次郎」らと協力しながら影と島の存亡を掛けた戦いの幕が上がるのでした。

激しくなる戦い

影を操っている黒幕が姿を現してからの4週目以降、本格的に影との戦いに突入します。
慎平は一緒にループしてくる影潮は当初影の自覚が無かったものの、ある切っ掛けで生前の潮と協力関係だった事を思い出し、影として覚醒します。当初からオリジナルと協力するとは元々影としてはイレギュラーな存在だったと言えます。
また影は他者と記憶を共有出来る事が出来るという特徴があり、それを使う事で当初の頃ループ直後に協力者を説得する手間を省いたりしています。
しかし影もループに対して対策の手を打ってきていて前の周回と同じ動きをするという事が無くなり、ループ自体がアドバンテージでは無くなります。
しかしその一方で影の側も、影は互いを探知出来る事から、影潮がいる間は慎平たち側の人物をスキャンしてなりすますという手段も取れなくなります。
そのため戦いはお互いに裏のかき合う様相を呈してきます。
その中で頭脳戦となると際立つのが自らを客観的に『俯瞰』して見る慎平の思考や影に詳しいひづるで、直接的な戦闘で頼りになるのが影潮とひづるに宿る亡き弟の人格「南方 竜之介」に猟銃を扱える根津辺りでしょうか。同じ銃器を扱える人物でも警官の凸村は何故かイマイチ頼りにならない印象です。
ただ影は本体で弱点でもある自らの影を釘などで3箇所撃たれるとその場に縫い付けられるため、釘打ち機を使う事で普通の影なら他のメンバーでも何とかなったりします。
本作2クール目のOPはバトル物な装いになっていて、作中の激戦を窺い知る事が出来ます。

ループについて

本作におけるループについての世界観は、高い次元から時間軸を観測出来る者によって観測されなければ、その時間軸は成立しないというものの様です。
そのため影たちが島を破滅させても、慎平が別の時間軸にループした瞬間消えてしまう模様です。ちなみにループした場合、起点以前は前の周回を引き継いでいます。
しかし慎平のループにも限界があり、ループの起点がハイペースで近付いて来るというのがそれに当たります。戦いの中短時間でループする場面もあり、後が無くなる事もあります。もしループから間を置かずに斃れてしまい、前回の起点より以前の地点にループしてしまうとループ先が無くなって完全終了となってしまいます。さらにその事は影側にも看破されているため、慎平は大きな弱点を晒しながら戦う事になります。
そのため時には苦渋を決断をしなければ行けない場面もあり、安易に使えない重みも感じられます。

作画など

作画は高いレベルで安定している印象でした。小舟姉妹に代表される女性キャラは魅力的に描かれていますし、シデや変身していない影は禍々しく描かれています。また島の風景なども印象に残ります。
戦闘シーンについて、派手な場面は多くありませんが、アクションはしっかり描かれていますし、緊迫感ある場面が多いのが特徴と言えます。

まとめ

放映当時気になっていた作品でしたが、当時はWebだと独占配信だったため、独占解除されてからの視聴となりました。
そして実際に視聴した所、SFサスペンスとしては期待通りでしたが、頭脳戦やバトルものとして見ても素晴らしく、総じて言えば期待を大きく上回る作品だったと言えます。
影と島の伝承、そして島で祭られている神『蛭子』の関係を踏まえての、慎平たちと影の戦いの終結。
そしてそこからの結末は感慨深い物があります。