目次
DATE
- タイトル:タコピーの原罪
- 作者:タイザン5
- 刊行年:2022年
- 巻数:全2巻
- 出版社:集英社
- レーベル:ジャンプコミックス

地球にハッピーを広めるため降り立ったハッピー星人タコピーは、笑わない少女しずかちゃんと出会う。どうやらその背景には学校のお友達とおうちの事情が関係しているようで…。無垢なタコピーが知るざらついた現実とは!?
少年ジャンプ+より抜粋
概要
本作は集英社のWebコミック連載サイト及び漫画アプリ『少年ジャンプ+』にて2021年12月から2022年3月に掛けて連載されました。
作者であるタイザン5氏の初連載作品となっています。
ハッピー星からやって来たハッピー星人
本作の主人公はハッピー星からやって来たハッピー星人です。彼はハッピー道具を使って宇宙にハッピーを広めるという、宇宙規模で展開する布教活動の一環かどうか分からない様な目的で地球に降り立ちますが、空腹でいた所を小学4年の女子「久世 しずか」にパンを与えられます。
そしてお互いに自己紹介するもハッピー星人の名前は地球人には聞き取りや発音が難しい為かそのタコの様な姿からか「タコピー」と名付けられます。
そうしてしずかと交流を行うタコピーですが、しずかは日々ボロボロになって現れているように見え、いかにも不穏な雰囲気が漂っています。
そして出会って6日目、タコピーを自宅まで連れてきたしずかはペットの犬「チャッピー」を紹介します。学校で酷いイジメにあっている事は容易に想像でき、更に母子家庭で母親から放置されている有様とペットが心の支えであろう事は、表情からも良く分かる様になっています。
しかし翌日、しずかはチャッピーの首輪だけを持ってタコピーの前に現れます。チャッピーに何かあった事は間違い無く、心の支えを失ったしずかは、その後自宅で首を吊ってしまいます。タコピーは異星人ゆえか自殺の理由が分からないながらも、しずかを助ける為に、一度写真撮影に使用したハッピー道具『ハッピーカメラ』の特殊機能を発動します。それは撮った写真を読み込ませる事で撮影した瞬間に戻るという物です。
これで出会った翌日まで戻ったタコピーは、しずかが自殺した原因を探る為に学校までついて行く事にします。我々から見れば原因になりそうな要素はいくつもある訳ですが、異星人であるタコピーには把握出来ないのかも知れません。
果たしてタコピーはしずかを助ける事が出来るのかといった印象で締めくくられている第1話となっています。
毒親と憎悪の狂宴
そうして学校での様子が描かれますが、クラスメートの「雲母坂 まりな」がイジメの首謀者である事がすぐに分かります。イジメはあからさま過ぎて教師や学校は見て見ぬ振りを決め込んでいるとしか思えない様な有様となっています。
そしてしずかとまりなの様子を見たタコピーは2人が単に喧嘩している物と考えてしまい、一度はしずかに化けて何とかしようとするもののまりなが向ける悪意や憎悪に何も出来ず暴行を受ける結果となってしまいます。この件はハッピーなハッピー星人は悪意だとかいった概念が無く、耐性が無かったものと思われます。
またその一方でしずかの事を気にかけてイジメを何とかしようとしているクラスメートの男子「東 直樹」が登場と主要キャラクターが出揃った所で、3人とも家庭に問題があり、特に久世家と雲母坂家は崩壊状態と言える様な有様という事が明らかになります。
そして雲母坂家崩壊の原因がしずかの母という事でまりなの憎悪がしずかに向けられている模様です。
これはまりなへいくらかの同情は禁じ得ないものの、彼女のしずかに対する仕打ちがエゲツない事もあり、しずかに憎悪を向けるのは八つ当たりに他ならないのでは無いかと思ってしまいます。
そしてまりなのエゲツなさは増して行き、しずかがチャッピーを散歩している所にちょっかい出しに現れて噛まれに行くという手段に出ます。これはタコピーが101回以上やり直しても止まられなかった事からまりなが余程強い意思を持って噛まれに行っているのでしょう。その意思を自らの両親に向けられなかったのかと思いますが。
またチャッピーは保健所送りになってしまいますが、母親が東京にいる父親が引き取ったと嘘を言っています。一応娘に気を使っているのでしょうか。
急展開
その後例によってまりながしずかに対し暴力を振るっているのですが、タコピーが勇気を出した結果、まりなは死亡し凶器となってしまった頼みのハッピーカメラは破損します。
その後現れた東が状況を見て殺人だから自首するべきと諭すも、捕まってはチャッピーを引き取りに行けないと考えたしずかが拒絶したため隠蔽することになります。まりなに関してはタコピーが当面化ける事になりますが、人格変わり過ぎて疑念を抱かれそうではあります。
そしてまりながいなくなったしずかは東京にチャッピーを引き取りに行くという目的の下、東やタコピーを冷酷に利用している節が見て取れます。これはこれまでの環境やしずかにとってチャッピーと東、タコピーの間には越えられない壁があるのだろうと思わざるを得ません。それから事件の発覚、しずかの暴走を経てタコピーは地球に降り立つのは2回目で、この時代の地球にやって来た目的を思い出しますが、それはタコピーが実行するのは困難と思われますし、まりなが亡くなっている以上タコピーにとっても詰んでいると言うしかない状態でした。
そこで最終手段というべき方法を取るタコピー。それにより時間は戻されますが、これまでなら単に戻ってもしずかが自殺してしまうのでは無いかと思われましたが、思わぬ展開から結末へと至る事になります。
まとめ
話題作という印象だった本作。
某国民的アニメの猫型ロボットのひみつ道具を思わせるハッピー道具とハッピーという言葉からかけ離れた様な陰鬱な展開が印象的と言えます。中盤を過ぎる辺りまで陰鬱な展開が続きますが、タコピーに導かれたかの様な結末は個人的には爽やかな雰囲気で良いのでは無いかと思います。
終盤に思い出されるタコピーが最初に地球へ来たときの描写について、最初は必要かどうか疑問でしたが、目的が逆転するどんでん返し的養素とタコピーにとっても詰んだ状況を表現する上で必要だったのかも知れません。
またしずかとまりなの話と比べると目立ちませんが、東兄弟の話も良かったと思います。