【ミステリ】翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件【感想】

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DATA

  • 刊行年:1996年
  • 著者:麻耶 雄嵩
  • 出版社:講談社
  • レーベル:講談社文庫
8 out of 10 stars (8 / 10)

首なし死体、密室、蘇る死者、見立て殺人……。京都近郊に建つヨーロッパ中世の古城と見粉うばかりの館・蒼鴉城を「私」が訪れた時、惨劇はすでに始まっていた。2人の名探偵の火花散る対決の行方は。そして迎える壮絶な結末。島田荘司、綾辻行人、法月綸太郎、三氏の圧倒的賛辞を受けた著者のデビュー作。

Amazonより

概要

本作は当時弱冠21歳ながら島田荘司、綾辻行人、法月綸太郎から賛辞を受けてデビューした作者のデビュー作です.
全二部、十章から成っています。

惨劇の始まり

本作は京都近郊の山中に聳え立つ『蒼鴉城』と呼ばれる館が物語の舞台です。大企業創業家である今鏡家の面々が住むこの館に探偵「木更津悠也」と語り手である「香月実朝」が訪れた時、依頼者である伊都は首なし死体で発見され、警察が捜査を開始していました。
そこで今鏡グループ会長である畝傍の息子、菅彦の依頼などもあって木更津たちは京都府警の辻村らと共に捜査に当たるも更なる惨劇が起こるという、流れ自体は本格ミステリとしては割と無難な出だしと言えます。

探偵対決

本作における見どころの一つに、探偵の対決があります。
第1部ラストで木更津は館を去って山籠りする破目になります。本格ミステリで推理に失敗した探偵が山籠りというのはギャグで書いているのかとか、依頼を放棄しているのではとかそういった感想が出てきてしまいます。

そして第2部冒頭、惨劇が続く中探偵不在となった蒼鴉城を訪れたのが銘探偵を名乗るメルカトル鮎です。タキシード着てシルクハット被って黒マントを羽織るなどある意味分かり易い服装した彼は木更津に替わって捜査を行います。終盤にはそのメルカトルが推理を披露しますが、その中帰還した木更津が乱入し、ようやく両探偵が顔を合わせて事態は最終局面に向かって進んで行きます。

驚天動地の推理

この手の本格ミステリでは最終局面で二転三転する事も珍しくありません。本作もそういったタイプの作品です。しかしその中で木更津が披露する最初の事件である伊都、有馬殺しにおける密室トリックの推理は内容、絵面双方において圧倒的な衝撃を受け、本作屈指の見どころと言えます。
その後にはどんでん返しもありますが、その推理に比べればインパクトに劣る印象を受けるのは仕方なのない事かも知れません。

まとめ

本作は木更津悠也、メルカトル鮎、と二人の探偵が挑む。というのが大雑把な粗筋かとは思います。
しかし驚愕の密室トリック、推理困難な見立て、二人の探偵の対決の意外な結末、どんでん返しなどといった本格推理的な要素に加えて、語り手香月が蒼鴉城の住人である一人の女性を口説いていく経過もあったりと様々な要素が盛り込まれて飽きさせません。