目次
DATA
- タイトル:Vivy -Fluorite Eye’s Song-
- 放送クール:2021年春
- 話数:14話
- 制作:WIT STUDIO
- 監督:エザキシンペイ
- 脚本:長月達平、梅原英司、河口友美

「私の使命は、歌で、みんなを幸せにすること」
公式サイトより抜粋
史上初の自律人型AIとして生み出され、複合テーマパーク”ニーアランド”で活動するヴィヴィ。「歌でみんなを幸せにする」という使命を与えられたヴィヴィは、ステージで歌っている最中、マツモトと名乗るAIの接触を受ける。困惑するヴィヴィに、マツモトは「共に歴史を修正し、100年後に起こるAIと人間の戦争を止めてほしい」と協力を求め――。
概要
本作はAI、歌、歴史改変をテーマにしたSFのオリジナルアニメです。
『Re:ゼロから始める異世界生活』の原作者である長月達平氏と同作のアニメ脚本を担当した梅原英司氏が共同で原案、脚本を担当しています。
AIによって存亡の危機に立たされた人類
本作の冒頭はなかなかに衝撃的です。
遊園地らしき場所で接客対応などのスタッフAIや機械が客を屠っている様が描写されます。
そしてその遊園地のみならず街中も銃声が響き煙が上がるという、見るからに阿鼻叫喚な様相である事が分かります。何故この様な事態に陥ったのかという点が気になる所と言えます。
それから研究施設らしい建物内で、いかにも研究者といった姿の男性がAIたちの攻撃をかわしてある部屋に入りコンソールを操作します。その背後ではAIが扉を切断しており一刻の猶予もありません。
そしてコンソールに打ち込んだプログラムを実行するためのボタンを押そうとした所でAIが踏み込み発砲、男性は被弾するも最後の力でボタンを押します。
この男性の言葉から人類が破滅する歴史を変えようとしているらしい事は伺えます。
滅びの歴史を書き換える計画
時間は遡り、テーマパーク『ニーアランド』の小さなステージで歌を披露している主人公である歌姫AI「ディーヴァ」がいました。客はまばらでお世辞にも盛況とは言えない様子です。
しかしそんな彼女にもファンはおり、少女「霧島 モモカ」は熱心なファンでディーヴァを好きな物語のキャラクターから「ヴィヴィ」と呼んでいる様です。見た目が似ているとかでしょうか。
そしてモモカはディーヴァへ誕生日プレゼントとしてテディベアを渡して行きますが、モモカは去った後、テディベアが動き出して未来からやって来たAIの「マツモト」であると言います。冒頭に登場した男性「松本」博士に創られたAIというマツモトはディーヴァと一緒に歴史を書き換えるという使命を与えられたと言います。しかしテディベアが単なるぬいぐるみであればAIが入って難しそうな気がしますがどうなんでしょうか。
そして突然動き出したぬいぐるみが話す内容に怪訝そうな養子を見せるディーヴァ。
しかし結局ディーヴァはAIの人権推進派議員を反AI組織『トアク』による暗殺から救い、将来的な人類とAIの対立を緩和させるという任務に挑む事になります。
この事件以降も数年、十数年毎にやって来る『シンギュラリティ・ポイント』の度にマツモトが現れてはディーヴァを任務に駆り出して行きます。果たしてこの100年に及ぶ『シンギュラポイント計画』は成功するのでしょうか。
100年に及ぶ物語
ディーヴァは最初の『相川ヨウイチ襲撃事件』に皮切りに、『落陽事件』、『メタルフロート事件』、『オフィーリアの自殺』などと呼ばれる一連の事件、シンギュラリティ・ポイントに関わっていきます。
それぞれの間隔は数年から数十年と長いスパンとなっていますが、その中でディーヴァは様々な人物やAIたちと出会い、別れて行きます。落陽事件における宇宙ホテルにまつわる双子のAI、メタルフロートの作業AIや事件に関係するある博士とAIなどです。
序盤に起きる2件の事件でディーヴァとマツモトが介入した結果、人間とAIの対立は緩和された様に見えなくもありませんが、AI技術自体は元々の歴史より早く発展していている可能性があると指摘されるなど不穏な雰囲気も感じられます。
そして中盤に起こるメタルフロート事件発生年代のズレが顕著な例と言えるかも知れません。このメタルフロート事件は作中の転機となっているポイントで、ディーヴァは自ら「ヴィヴィ」と名乗り、AIの歴史を変えると決意新たに宣言するのですが、その結果悲劇的な幕切れとなってしまいます。
その次の話は一気に40年ほど経過しますが、前話までとは別人となったディーヴァに驚かされます。快活な性格で歌姫AIの頂点に君臨していて、小さなステージすらも埋められ無かった事を考えると立派になったものだとも思いますが、その影には深刻な内部事情がありました。
しかし程なく歌姫AIのイベントで起こるという最後のシンギュラリティ・ポイントであるオフィーリアの自殺を止めようと現れたマツモトと会った事で首突っ込んで行くことになります。そしてその陰で蠢く謎の人物。
このイベントでトリを飾るディーヴァ最後の歌唱は様々な演出もあってなかなか胸に迫るものとなっています。
そして運命の時へ
最後のシンギュラリティ・ポイントの後、ヴィヴィは引退しAI博物館で過ごす事になります。
その中で度々現れるマツモトと話す程度だったヴィヴィですが、作曲をしようとしていた所1人の少年と出会います。
そして曲が出来ないまま度々会いに来る少年は成長して結婚してという風に時間が進んでいく様子が描写されています。その後ある事を切っ掛けにして一気呵成に作曲したヴィヴィは長い眠りにつくのでした。
そして物語は佳境に入り、ヴィヴィはAIを操って人類を滅ぼそうとする者の正体を知ります。その正体は意外性といえばそれ程でも無いかも知れませんが、それだけに納得はしやすいかも知れません。
そしてヴィヴィとマツモトは協力者を得て最後の戦いに挑むのでした。
果たしてヴィヴィは人類を救う事が出来るでしょうか。
作画など
本作は作画という点だと個人的には申し分ない様に感じられました。動きの多いアクションや戦闘シーンでもヌルヌル動いてる印象です。歌姫AIが主人公という事もあり、歌や楽曲がストーリー中重要な部分に位置付けられているのも特徴で、OPとEDも作中で何度となく登場したりします。特にインストで流されるED曲を聞きながら、最後にはボーカル入りになるのかななどと漫然と考えていましたが、予想以上に重要な役割を持って登場するとは思いませんでした。
まとめ
放送時は何やら先入観があった事もあってか、うっかりスルーしてしまっていた本作ですが、実際に見てみると想像以上に壮大なSF作品でした。作品全体も文句なしの高水準と言え、ストーリーと楽曲が要所で上手く融合しているのが好印象でした。
またヴィヴィがその後どうなったのか語られていませんが、意味ありげなラストシーンも印象的でした。