目次
DATE
- タイトル:World 4u
- 作者:江尻立真
- 刊行年:2015年
- 巻数:全1巻
- 出版社:集英社
- レーベル:ジャンプコミックス

概要
本作は2003年から2006年まで『週刊少年ジャンプ』で不定期連載された後、2008年から『ジャンプスクエア』、2014年からはWebコミック連載サイト及び漫画アプリ『ジャンプ+』にて不定期連載されました。
様々な都市伝説をベースにした連作短編集
本作は都市伝説を扱ったウェブサイト『World 4u』の管理人である高校生「田島 圭吾」が様々な都市伝説に纏わる話を紹介するという形式で進んでいきます。圭吾自身はあくまで物語の語り部的存在で、一部を除いて原則物語には関わらず、様々な人物たちが都市伝説や怪談的な存在に遭遇するオムニバス形式の連作短編集となっています。しかし複数のエピソードで登場するキャラクターがいるなど、世界観は共通とも思われます。
1巻感想
lore1 夢を知っていた男
女性が悪夢で見た男性に追いかけられて、逃げ切ったと思ったらある捨て台詞を吐かれるという、都市伝説的怪談を扱っています。
本エピソードでもある少女が悪夢を見た後、朧げに憶えていた男性に遭遇するという流れになっています。しかし本エピソードにおいては少女の記憶が断片的過ぎた為かオリジナルと比べて後味悪い結末となっています。
lore2 むじな坂
狢が人を化かすという江戸時代からの怪談を元にした話です。オリジナルとして紹介されているのは江戸紀伊国坂ですが、調べた所むじな坂と呼ばれる坂は全国にいくつかあるようで本エピソードで描かれているのもそんな坂の一つなにかも知れません。
この坂でもオリジナルに準拠したかの様に人を化かしに来ますが、相手が機転を利かして撃退されてしまうのは、時代に取り残された存在故かといった印象を受けます。
lore3 砂嵐
テレビ放送が地デジに移行してからというもの、テレビで砂嵐を見かける事は原則的に無くなりました。
そんな砂嵐ですが、普段付けているチャンネルが砂嵐になるのは放送終了後の深夜という事もあってか古くから怪談があり、ネットの時代になってもNNN臨時放送の様な都市伝説が存在しました。
本エピソードはそんな砂嵐に纏わる怪談や都市伝説を組み合わせた様な作りになっています。
また個人的には1巻で最も後味悪いエピソードと感じています。
lore4 ニャンボトル
最近は見掛けなくなった様に感じられる、猫よけのペットボトルですが、効果が無いと言われれば廃れるのは当然と言えるでしょう。
実際に作中でも気休め程度とされています。
そんなペットボトルと猫は人の見えないものが見えているという都市伝説を合わせたのが本エピソードとなっています。学校内で猫を隠して飼っていた小学生3人組に起こった出来事と異変。上記以外の怪談も混じっていそうですが、なかなか意外な結末となっています。
lore5 駄菓子屋之怪
本エピソードは初めて圭吾が登場する物となっています。メインとしてのテーマは寄生虫の様ですが、駄菓子屋が舞台に設定されたのは虫下しチョコを用いるためでしょうか。
そしてそんなテーマとは関係無いながらも駄菓子屋を巡る話としては意外性を感じる結末となっています。店番をしていた老婆は店の今後を案じていたのでしょうか。
lore6 異聞雪女
妖怪として知られる雪女。
本エピソードは雪女に纏わるエピソードを組み合わせた上で現代風にした展開となっています。
主人公が語った雪女の話は果たして真実なのかという点などが気になる幕切れと言えます。
lore7 足売りババア
足売りばあさんと呼ばれる都市伝説を扱っている本エピソード。この怪異は遭遇したら足をもがれる、足を付けられる、他人に擦り付けるとロクでもない選択肢しかなく、凶悪と言えます。
そんな怪異にサッカー好きな2人の少年が関わる事になるのですが、何故か良い話風に終わっているのが印象的でした。
lore8 第3コースのトオルくん
学校のプールに纏わる怪談をストーリーにしたといった印象のエピソードです。本エピソードではトオルくんと呼ばれる怪異に競争して勝つと泳ぎが速くなるとされていますが、相手の正体を知るとそれはそうだと納得せざるを得ません。
そして結末についてもやむを得ないといった所でしょうか。
lore9 闇底からの声
lore4の小学生たちが再登場するエピソードです。
3人組のうち、女児がスマホを紛失してしまい、GPSなどを用いて探した所思わぬ場所で見つかるという展開です。
都市伝説というよりは都市的な怪談といった印象を受けます。
2巻感想
lore10 x
飛び降り自殺を扱ったエピソードです。
自殺者などが死んだことに気付かず繰り返すというにはオカルト物などではお約束ですが、飛び降りなど物理的な衝撃が強い方法は辛い物がありそうです。
飛び降りを考えていた少女にイジメを行っていた少女は因果応報といった末路を迎えた物と思われますが詳細は描かれませんので、想像するしか無いといった所でしょうか。
lore11 ビデオ屋通りの幽霊
lore2に登場した情報通の少女「葛城 明日香」が再登場し、通り魔によって殺害された女性の霊について調査するという展開になっています。
最初はオカルト的展開かと思わせてから思わぬ方向へ話が進みますが、最終的には落ち着くべき所に落ち着いたかといった印象です。
lore12 公園にて
公園のイラストを扱ったエピソードです。
最初は不思議な話という程度で終わりそうな物を大胆な展開にしています。
lore13 夢の少女 今度は落とさないでね sideA
副題通りの怪談を扱った本エピソードは前後編となっています。
自らを父と呼ぶ女児を崖から突き落とすという悪夢に苛まれている少年が主人公です。少年には二卵性双生児の妹がおり、その関係性が中心となって描かれています。
ラスト付近で悪夢の正体が分かって来ますが、これは本エピソードのもうひとつのテーマとなっているようです。
ただ副題の台詞は元になっている怪談と意味合いが異なっている様に感じられました。
lore14 捻れた部屋 今度は落とさないでね sideK
前エピソードと同じく副題の怪談を元にしていて、同じく前後編となっています。
ある男児が誕生日に自宅内である女児と遭遇するという展開です。
全体的には前エピソードと比べて元となった怪談に近い雰囲気かという印象でした。
lore15 むじな坂 ふたたび
lore2で描かれたむじな坂が再登場するエピソードです。
坂の下で明日香に声を掛けて来た、杖をついた男性。彼は明日香が引き止めようとするもむじな坂を登って行きます。
一方、むじな坂では前回明日香にしてやられたむじなが人間に対するリベンジを目論んでいました。
そしてむじなが男性を化かそうとするも…という展開がコミカルに描かれています。化かすかどうかとなると結果は見えている気もしますが、その結末は如何にといった所でしょうか。
lore16 護り石
主人公である女児は亡き祖母が生前に譲ってくれた護り石を大事に持っていました。弱い厄災は防いでくれ、直接防げないような強い厄災は音で知らせて回避させようとするという物です。
そんなある日身重な母と帰宅が一緒となりますが、護り石が頻繁に音を鳴らす事となります。何度も迫る危機に奮闘する主人公の姿は胸を打ちますが、その結末は衝撃的かつ後味悪いが良いとは言えない物になっています。
まとめ
先述した通り、本作は都市伝説や怪談をベースとしたエピソードが主になっています。
そういったストーリーや雰囲気重視で、さらに少年漫画としては可愛らしさを感じる絵柄もあってかグロやショッキングな描写は直接的に描かれていません。ですがストーリーの性質上救いのない結末が描かれる場合もありますので、その辺りは注意が必要かも知れません。
総じて言えば怪談、都市伝説的なホラーが好きな方は読んで損は無いと言えそうです。