【漫画】山羊座の友人【感想】

7 out of 10 stars (7 / 10)

男子高校生・松田ユウヤの家のベランダには、落ち葉に交じって不思議な物が風に乗って流れ着く。漂流物の中にはオーパーツや生きた子犬、存在しない暦のアルバムなど、異世界から迷い込んだようなものまであった。9月25日木曜の朝、松田はベランダで「10月2日」付の新聞の切れ端を見つける。
松田のクラスメイト・本庄ノゾミは不思議なベランダに興味を持ち、松田とよく漂流物のことを話していた。松田の学年には金城アキラという凶悪な不良がいて、若槻ナオトという他の男子生徒に対し凄惨ないじめを行っていた。金城には女性への暴行を仄めかすような噂もあり、他の生徒たちは金城を恐れ、誰も若槻を助けようとはしなかった。
夜、松田は買い物から帰る途中に若槻から声をかけられる。軽い会話の後、若槻は松田に対して金城を殺したことを仄めかし、2人は別れようとする。しかし、松田は若槻の命を救うことを決心し、行動を共にする。朝に松田が見つけた「10月2日」付の新聞には、9月25日に松田の暮らす市で同じ年の少年が殺されること、10月2日までに殺された少年の同級生が殺人容疑を認め自殺することが書かれていた。

wikipediaより抜粋
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DATA

  • タイトル:山羊座の友人
  • 作者:乙一/ミヨカワ 将
  • 刊行年:2015年
  • 巻数:全1巻
  • 出版社:集英社
  • レーベル:ジャンプコミック

概要

本作は乙一氏の短編小説を漫画化した物です。

非現実的なベランダ

主人公である高校生『松田ユウヤ』の自室ベランダは変わった特徴があります。
それは風に巻き上げられた様々な物が引っかかるという物で、枯れ葉や様々な印刷物はもちろん、洗濯物どころか子犬がいた事もあったのだとか。一見普通かも知れなくても、「見たこともない文字で書かれたノート亅や「賞味期限が200年前のスナック菓子の袋」などと不可解な物もあり、まさに「異世界から迷い込んだような」物体と言えますが、本作は特に異世界要素はありません。
そんなベランダなので掃除が大変そうですが、本人は慣れているのか、それほど気にしている風では無く変わった物が無いか探すのを日課にしている様です。
ユウヤはその事を隣席の『本庄ノゾミ』にはある経緯から話していました。
そんなある日ユウヤは変わった物を見つけます。それは新聞の切れ端でしたが日付が来月になっていて、市内で起った殺人事件の容疑者が自殺したという物でした。

事件

ある晩ユウヤは買い物から帰り道、クラスメイトと『岩槻ナオト』と会います。
しかしその手には血に塗れ毛髪が付着したバットを持っていて、さも人を撲殺してきたといった様相でした。
ナオトは『金城アキラ』からイジメを受けていましたが、そのアキラを殺してきた所だと言います。
ユウヤはナオトが新聞記事にあった事件の犯人と考え、イジメを見て見ぬ振りしていた後ろめたさもあってか一旦匿い、その後一緒に逃走します。
それは新聞記事の日付を過ぎれば、自首しても自殺しないのではと考えた為でした。

逃走劇

本作の中盤は少年2人の逃走劇と言う事になりますが、ナオトは指名手配されている訳では無いので、息を殺して身を潜めといった物ではありません。
電車で東京に向かい、山手線沿線などを見物したりしています。
その移動中にはアキラから受けた仕打ちの事やノゾミの人間関係などといった会話が交わされます。
会話にはやはり事件に関する事もあり、事件当日の事を話したり、ナオトが自首を仄めかしたりします。何とか新聞記事の日付が過ぎるまで粘って欲しいユウヤは、ナオトを説得したりしますが、同時にある疑念も抱きはじめていました。
ユウヤは夫が警察関係者である姉を通じて、事件や捜査に関する情報を得ます。この辺りはややご都合主義的な気がしなくもありませんが、主人公であるユウヤが一介の高校生である以上許容範囲と言えるかも知れません。

被害者

本作における被害者、アキラもなかなか存在感があります。
いわゆる不良でナオトに対していじめという範疇を超えた仕打ちを行っていた訳ですが、過去に複数人の人物を死に追いやっていた事が分かり、なんでこんな危険人物が大手を振って学生なんて出来ていたのかと疑問に感じたりしてしまいます。
ナオトが逃走中に話した猫の話なども含めて、その暴虐ぶりで作中にて存在感を放っていると言えます。

まとめ

本作はユウヤの自室ベランダに端を発し、その後殺人事件から逃走劇という流れになっています。
その逃走劇も罪から逃れるという物では無く、ユウヤからすればベランダで見つけた新聞記事の様にならないようにという、いわば時間稼ぎという事になります。
時間稼ぎに目を向けさせてから終盤の展開ですが、細かい所で伏線が張られていて流石と思わせてくれます。
そしてその終盤を経て至る事件の結末はユウヤに取って非常に苦い物であると思われます。

また作中では時々山羊という言葉が出てきますが、これは話の核心に関わる物では無く雰囲気作りという印象を受けました。